2 高校入学
「おはよー!大輝!制服似合ってるじゃん!」
「そ、そうかな?なんか落ち着かないよ……」
「ホントだって!で?私は?似合ってる?」
「あ、うん!凄く似合ってるよ!」
そう、本当に似合ってる。
莉緒は中学の頃から可愛かったけど、高校生の制服姿を見ると、改めて莉緒を女の子として意識してしまう。
女の子としての可愛さと、女性としての魅力も出てきたんじゃないかな。
身体つきも随分女性らしくなってきたように思う。
モテるんだろうなあ、莉緒は。
でも、中学時代もみんな断ってたし、これからも僕と一緒に居てくれるだろう。
受験勉強も二人で頑張ったんだし。
「大輝は何か部活とか入るの?」
「いや、部活は入らないと思う」
「そうなんだ、私も部活はいいかな、って思ってるの。」
そうだね、そうしたらまた一緒に居られるね。
入学式も無事に終わり、莉緒と一緒に帰路に着く。
「クラスも一緒だったね!良かった!」
「そうだね、運が良かったんだよ」
「ホント!日頃の行いがよかったのかな?」
「ふふっ。あ、そういえば莉緒、クラスのみんなから随分話しかけられてたね?」
「え?あー、そうだね」
「もう友達出来たの?」
「友達っていうか、まだ知り合いだよねー」
「そっか、凄いね、莉緒は」
「大輝は?」
「僕はまだ緊張してたから、まだ誰とも話してないよ」
「そうなの?」
「うん、中学の頃は小学校から一緒の友達が沢山いたから、あんまり緊張しなかったんだけどね」
「そうだったねー、私は高校でもあんまり緊張はしないかなあ?」
「莉緒は昔から人見知りしないもんね」
「そうだっけ?気にした事ないや」
「……男からも結構話しかけられてた?」
「うーん、そうだね、でもどこ中?とか、名前聞かれただけだしねー」
「……ふーん、そっか」
「!あれ?気になる?私が誰とどんな話したかとか」
「き、気になるっていうか、なんというか……」
やばい!顔に出ちゃったか?
そりゃあ、莉緒が他の男と何話してたか、気になるに決まってるだろ?
それに何というか、莉緒には他の男と仲良くして欲しくないというか……。
莉緒だったら大丈夫だと思うけど……。
「ふーん?そっか、そっか」
「な、なに?」
「何でもなーい!ふふっ」
その後、莉緒はやはりクラスの人気者になった。
対照的に僕は、まだ友達が一人も出来ていなかった。
中学校の頃は気付かなかったが、僕は人見知りが激しかったみたいだ。
クラスには同じ中学の友達が一人もいない。
それは莉緒も同じはずなんだけど。
凄いな、莉緒は。
そんな莉緒とずっと一緒に居るのは、僕なんだ。
おかしな優越感に浸りながらも、どうにかしないと、くらいは考えていた。
肝心の莉緒ともクラスではあまり話せていない。
いつも莉緒の周りには、人が集まっているからだ。
あの状態では、僕は話しかけられない。
困ったな……。
「なあ莉緒!今日遊び行かねえ?」
一人の男子が莉緒に話しかける。
え?もう名前呼び?
馴れ馴れしくない?
「えー?今日?」
莉緒が答える。
え?名前呼び許してるの?
出会ってまだ二日目だよ?
「そうそう、こいつ等も莉緒と遊びに行きたいってさ!」
「放課後、どっか行こうぜ!友達になった記念にさ!」
「いいねいいね!行こうぜ、莉緒!」
え?男三人と莉緒がカラオケ?
いやいや、行くわけないでしょ?
莉緒は僕と
「オッケー!じゃあ私、何人か女の子に声かけとくよ!」
えっ?莉緒?
「おお!いいね!頼むわ!」
「任せといて!」
莉緒?僕と一緒に帰るんじゃないの?
ずっと今まで一緒だったじゃないか。
「ねえねえ、この三人と帰りにカラオケいくんだけど、どう?」
「えー?どうしよっかなー?」
「へえ、結構カッコいいじゃん、行こうよ!」
「そうそう!親睦を深めるってことで!」
「そっか、そうだよね。行こっか!」
楽しそうに放課後の事を話す莉緒。
そんな……。
この時僕はどんな表情だったか、自分ではわからない。
でも。
絶望に染まった表情だったんじゃないか、と思う。
少なくとも、笑顔では無かった。
だけど。
僕と目が合った莉緒は。
嬉しそうに笑ってた。