11 笑顔
僕と莉緒はいつも通り、学校へと向かう。
「あ、あの、大輝。昨日はごめんね?」
「ああ、いいよ」
「昨日はっていうか、今までっていうか……ホントにごめん」
「うん」
「けど、私、やっぱり大輝と一緒が良い!」
「……」
「だ、ダメ?」
「ダメっていうか、いいの?ホントにそれで」
「う、うん!」
「僕は莉緒の友達と仲良く出来そうにないけど……」
「いいの!」
「……そう」
「うん」
今日はあの男は来ないのか?
「昨日僕は休んじゃったけど、なにかあった?」
「え、うん。今まで一緒に遊んでた人達には全部言ったよ」
「全部?」
「うん、私と大輝は幼馴染で、私は大輝が好きだって事。あと、私に不意打ちでキスしてきた人も、他の人に責められてた」
「そうなんだ」
「うん、他の人たちは私に告白するからって、二人きりにしたみたい」
「うん」
「それで、友達関係を続けるかどうかは、私が決めていいって」
「そう」
「だから、私、大輝と一緒がいいの!」
「でも、僕も友達居るよ?」
「あ、大輝の友達だったら、私も友達になりたい!」
「え?あ、それは……小嶋さんに聞いてみないとね」
「うん!あ、あの私、もう大輝を困らせたり、悲しませたりしないから!ホントにごめんなさい!」
「うん、わかったよ」
「あ、ありがとう!ありがとね?大輝」
それから、僕と小嶋さんと莉緒で過ごすことが増えた。
僕は小説にハマり、莉緒も同じくハマった。
小嶋さんは僕と莉緒と三人で、小説の感想を言い合うのが楽しいと言っていた。
そして、僕はやっぱりその二人以外の友達は増えなかった。
それでも高校生活は楽しめたと思う。
恋愛も。
そして、現在。
高校を卒業して、大学も卒業し、社会人になって三年目。
今日は僕達の結婚式だ。
高校二年から付き合い始めて、社会人に慣れたタイミングでの結婚。
まだまだ将来に不安はあるが、二人でなら、やっていけると思うんだ。
僕たちはまだそんなに貯金も無いから、豪華な結婚式は挙げられないけど。
僕たちは友達も少ないから、招待した人数は多くはないけれど。
「僕、今、凄く幸せだよ」
「うん。大輝君、私も幸せです!」
僕は今、言葉の通り、幸せそうな表情をしているはずだ。
自分では見えないけど、それくらいはわかる。
少し離れた場所で。
僕の幸せそうな表情を見て、
僕の困った表情が好きだって言っていた、
僕の悲しい表情が好きだって言っていた、
僕の寂しそうな表情が好きだって言っていた、
莉緒が嬉しそうに笑ってた。
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