10 僕の気持ち
「え?!ほ、ホント?!」
「うん、だけどさ、離れてみて、莉緒と僕って合わないんじゃないかって思ったんだ」
「そ、そんな事ないよ!!ずっと一緒だったんだよ?!」
「だから、高校では入学してから今までみたいな距離でいいんじゃないかな?」
「い、嫌!私もう他の友達と仲良くしないから!大輝と一緒に居るから!ね?」
「ごめん、なんか最近は莉緒と一緒がつらく感じるんだよ」
「え?だ、だって高校入学してからまだ一週間だよ?」
「そうだね。だけど、莉緒と離れてだいぶ気持ちが変わっちゃったんだよ」
「そ、そんなのってないよ!だ、だって大輝も私の事好きだったんだよね?だったら大丈夫!中学の時みたいに、全部誘いなんか断るから!ね?」
「そうしたら、莉緒、友達居なくなっちゃうでしょ?」
「いいよ?別に構わない!」
「良くないでしょ……」
「だって……あ!そうだ!ねえ、大輝、私と付き合おうよ!そしたら彼氏優先するの当たり前でしょ?」
「……悪いけど、莉緒と付き合おうとは思わない」
「え、どうして?私の事好きだったんでしょ?」
「好きだった、過去形だよ。確かにあの男とキスしたって聞いた時はショックだったけど、今はそうでもないんだ」
「な、なんで?どうして?今朝の話じゃない!」
「そうなんだけどね、今は莉緒と付き合いたいと思わない。好きじゃないのかもしれない」
「そ、そんな……私の……私のせい?」
「どうかな。離れてみて気付いた、って感じかも」
「わ、私、どうしたらいいの?」
「どうしたら、って言われても……」
「イヤだ!私、大輝と離れたくない!」
「莉緒から距離取ったんじゃん……」
「そ、そうだけど、それは……」
「そういうことだから、莉緒、明日から迎えに来なくても」
「!い、嫌!!絶対毎日迎えに来るんだから!ずっとそうして来たんだから!」
「け、けど……」
「お願い!!私が悪かったから!許してよ……お願い……」
そう言って莉緒は泣き崩れてしまった。
どうしようもなかったので、朝の迎えだけは了承した。
莉緒は肩を落として帰って行った。
ずっと莉緒と一緒に居て、莉緒の事をわかっていたつもりだった。
今日聞いた話は、驚く事ばかりだった。
莉緒が僕の事を好きだったなんて。
僕が困ったり、悲しんだり、寂しそうだったりする表情を見るのが好きだ、とか。
わけがわからない。
そんな事されずに、莉緒と高校でも一緒だったなら、まだ僕は莉緒の事を好きでいたんだと思う。
距離が離れて気付いた。
莉緒が他の人を優先する様になって、好きの感情が薄れた。
たった一週間で。
その程度、だったのだろうか。
わからないけど、もう莉緒と付き合いたいとは思えなかった。
これからどうしようか。
僕は僕の友達と高校生活を楽しみたい。
莉緒は、どうするのだろうか。
こんな事を考えるようになるなんて、受験勉強を二人で頑張っていた頃は思いもしなかった。
その日の夜は中々寝付けなかった。
昼寝したからか、それとも考え事をしていたからだろうか。
翌朝。
「お、おはよ。大輝」
「おはよ、莉緒」
いつもの朝が始まった。




