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奇臆(きおく)  作者: 黒兎
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あなたと共に

ドアの奥の景色がぼんやりと見えてくる。私はIの左手を握った。ひんやりしていたけれど、これだけでIと離れないという安心感がうまれ、少し不安が和らいだ。

ドアの向こうには……


「これは……教室?」

「正解よ。これはさっき言った子の視点。」


小学生だろうか。子供特有の高い声が教室中に飽和している。

これがIの言っていた子の視点ならば、彼女は教室の壁に寄りかかって居るようだ。

付近には友人と思わしき女の子2人が居て、どうやら3人で話しているらしいことは分かった。


「どう?心配は不要でしょう?」


Iの言う通りだった。このドアはテレビのようにこちら側から一方的に景色を覗くだけであって、向こうからは干渉されないようだ。

そんなことを考えているうちに、2人いた女の子のうち1人がお手洗いに行ったようだ。残った女の子がこちらを向いて、耳に顔を近づけてきた。


「ねぇ、あの子ってウザくない?」


その音は確かに彼女の耳に届き、そしてIと私のいるこの空間に木霊した。私がその言葉に衝撃を受けているうちに、彼女に怒りの感情が芽生えたのを感じた。

どうやらこの空間では、その視点の人物の感情を感じ取ることができるらしい。

彼女が女の子に同調しなかったことに安心していると、彼女は突然叫んだ。


「〇〇の事をそんな風に言わないでよ!友達でしょ!!?」


そう言ってその場を早歩きで立ち去った。

正直、驚いた。

普段の彼女を知っている訳では無いが、この短い時間のうちに、彼女はもっと気弱で、人に流されて過ごしている人間だと思っていたからだ。

彼女の移動した先で、暫く立ち尽くしていた様だった。

数秒かけて、彼女の緊張と怒りが緩んでいくのを感じる。

ああ、やはり彼女も怖かったんだ。


落ち着いてきて、次の授業の準備をしようと彼女が動き出した瞬間、ホログラムのように見えていた景色が崩れ始めた。

この景色は一定時間しか見ることができないらしい。


完全に景色が見えなくなった頃には、私は半分Iに寄りかかるような形になっていた。


「まあ、U。眠そうね。まあ、無理もないか……。」


Iが何を言ったのか理解し切れぬままゆっくりと頷くと、

よく寝るわね、と言ってソファまで運んでくれた。

また、前と違いIは私が眠るまで傍に居てくれた。

それがただの気まぐれなのか、何か意味があるのかはもう分からなかった。

ただ安心感だけが私を包み込んでいた。

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