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第1話 キャラメイクは機械工作

 初めまして。

 初めましてですよ?^^*

 12月1日、朝9時という時間に俺は目を覚ました。

 今日は待ちに待ったIEO⋯⋯Insanity Evolution Onlineの正式サービス開始日だ。

 IEOは『常識を捨て去れ! 進化とは狂気の先にある!』というなんとも危ないキャッチコピーを掲げており、ベータテストでは総勢1000人が思い思いの趣味を反映した種族に変わっていた。現実なら、目撃者が狂気に陥るんじゃないかと思うような姿になったやつもいたな⋯⋯。


「元気にしてっかなぁ⋯⋯サバ缶さん」


 サバ缶とは鯖の水煮缶の事ではなく、目撃者が狂気に陥るんじゃないかと思うような姿になったプレイヤーの名前である。

 ちなみに、その姿とは"エラから触手を生やし、口から真っ黒い煙を吐き出しながら空を飛び、瞳とヒレを1677万色に光らせるマグロの頭をした天使"だ。サバ缶なのにマグロの頭だし、常に光を放つ瞳とヒレは暗い時にとても目立つ。なんなら日中でも目立つ。

 サバ缶さんのすごいところは、瞳とヒレが光を反射しているわけでなく、発光しているところだな。その場の光度が関係ないから、洞窟に入るとそこら中に光を撒き散らす。そのため非常に眩しい。照明道具がいらないから手は空くのだが、とても目に悪いので二度とあの人と洞窟を含めた暗所には入らないと誓った。


「あ、トースト焼けた」


 朝食は栄養を考えて、しらすマヨエッグトーストと野菜ジュース。食パンのふちに沿ってマヨネーズで土手を作り、その中に生卵を落とし入れ、しらすを散らして焼いただけだ。 手軽だが、しっかり焼かないと黄身が零れるので注意。

 個人的にはレトルトピザを正方形になるように折り、卵を落として焼いたピザガレットも好きなのだが、カロリーやコレステロールを考えると中々食べられない。

 朝食を終え、顔を洗ってジャージに着替える。寝巻きとタオルを洗濯機に放り込み、ランニングマシンで軽く走る。VRゲームは体を動かさないから、適度に運動をしないと健康を損なうのだ。

 5km程走った後、タオルで汗を拭き取り、服と共に洗濯機に入れて寝巻きなんかと一緒に洗濯開始。

 ボタン1つで脱水までやってくれるのって便利だよね。一人暮らしだと余計にそう感じる。

 洗濯機を回してる間にシャワーで汗を洗い流し、まだ回ってる洗濯機の中に身体を拭いたバスタオルもIN。

 そうこうしていると11時30分になった。お昼は⋯⋯もやしと豚肉の炒め物でいいか。塩コショウ、酒、醤油で雑に味付けした炒め物でパックご飯を食べ、洗い物を済ませる。

 洗濯機も脱水が終わったようで、脱水した洗濯物は乾燥機に放り込む。時計を確認すると、あと5分で正午⋯⋯IEOの正式サービス開始という時間だった。

 ヘッドギア型のハードを被り、ベッドで横になりながら正午を待つ。

 4、3、2、1。


「コネクト」


 グラデーションがかかるように視界が暗転し、グラデーションが逆再生するように真っ白な空間が視界に映る。


「ようこそ、IEOの世界へ。まずはプレイヤーネームを設定してください」

「"エクス"で頼む」

「申し訳ございません、既に使用されています」

「早いな⋯⋯じゃあ"エクスマキナ"は?」

「使用可能です。"エクスマキナ"でよろしいですか?」

「ああ」


 エクスマキナ⋯⋯懐かしい名前だ。

 ⋯⋯今となっては全く関係ないが。


「種族を決めてください」

『・ヒューマン

 ・エルフ

 ・ドワーフ

 ・ハーフリング

 ・獣人

 ・ランダム』


 ヒューマンは凡庸、エルフは魔法と弓、ドワーフは鍛冶、ハーフリングは調合や錬金、獣人は近接戦闘が得意。これはベータテストと同じ。多分。

 一応全部確認してみるか。


「それぞれの特徴を教えてくれ」

「はい。エクスマキナ様はベータテスト参加者ですので、こう説明させていただきます。ランダム以外はベータテストと同じです」

「そうか、ランダムの説明を頼む」

「ランダムは3回まで振り直しが可能で、この中には無い種族が出る可能性もあります。しかし、それが強いとは限らない上、使いやすいとも限りません」


 なるほど、つまり常識的な奴はランダムを選ばないってことだな?

 このゲームやる奴が常識的なわけねえんだよなぁ⋯⋯!


「ランダムだ」

「リザードマンです。リザードマンに決定しますか?」

「Noだ。振り直し1回目」

「ヴァンパイアです。ヴァンパイアに決定しますか?」

「No。2回目」

「狐獣人です。狐獣人に決定しますか?」

「No。ラスト」

「スクラップです。スクラップに決定しますか?」

「Yes! エクスマキナでスクラップ、最高だな!」


 舞台装置がスクラップとか、使い物にならなすぎてもはやシャレが効いてるレベルだ。


「ステータスと初期習得スキルの決定をします。まずはステータスの割り振りを決定してください」

『名前:エクスマキナ

 種族:スクラップ

 Lv:1

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 魔攻:1

 魔防:1

 器用:1

 SP:5


 スキル:集合体 改造進化』

「ゴミで草」


 SP(ステータスポイント)5って全てのステに1ずつ振ることも出来ねえじゃねえか!

 なんだろう、制作陣の頭のおかしさが垣間見える。(褒め言葉)

 ちなみに凡庸の代名詞ことヒューマンは全部10でSPは20ある。ハンデとかそういう次元じゃねえな。

 あと、ステ振りはスキップ出来る。


「ステ振りはスキップ。スキルの取得だ」

「かしこまりました。取得可能スキルを表示します。その中から3つ選んで取得が可能です」

『・鑑定

 ・歩法

 ・走法

 ・剣術

 ・槍術

 ・弓術

 ⋯⋯

 ・ランダム』

「3つ全部ランダム」

「かしこまりました。鑑定、HP自動回復、捕食に決定しました」


 捕食するスクラップとは?(哲学)


「アバターの容姿を決定します」


 そして表示されたのは、山積みになったバネや歯車の集合体だった。これはスクラップだ間違いない。

 移動方法は這って移動らしい。ちなみに速度はカタツムリと同レベル。レベルによってはカタツムリの方が速い。

 で、これの容姿をどう変更しろというのか。

 触ってみると、スクラップの順番を組み替えたりできるっぽい。⋯⋯俺に、そんな自由度を与えていいのかい?

 歯車と歯車を立体的に組み合わせ、バネやワイヤーで可動域を広げていく。そして完成したのは、何とか機構として成立するスクラップだった。


「これでよろしく」

「かしこまりました。」


『名前:エクスマキナ

 種族:スクラップ(メイドインデウスエクスマキナ)

 Lv:1

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:5

 魔攻:1

 魔防:1

 器用:1

 SP:5


 スキル:鑑定Lv1 HP自動回復Lv1 捕食 集合体 改造進化』


 なんか種族とステータス変わってるんですけど?

 しかも、デウスエクスマキナじゃないんですけど?


「最後に、開始地点を決定します」


 その声とともに、世界地図のようなものが表示される。


「廃工場の位置を表示して」

「かしこまりました」


 赤い点で廃工場の位置が表示された。

 場所は3つ。ベータテストの舞台にもなった王国の近く、海を挟んで王国の反対側にある大陸の森の中、海のど真ん中。

 機械に海風は天敵だからな、海のど真ん中を選ぶやつなんておるわけないやろ。


「海のど真ん中で」

「かしこまりました。初期地点は旧アトランティス深海廃工場です」


 海風は受けないからおk。

 いや、おkじゃねえよ馬鹿か? 名前的にエンドエリアじゃねえか、まともにプレイ出来ねえだろこれ⋯⋯。神か?


「転送を開始します。良き狂気を」

「ああ、キャラクター作成の補助ありがとな」

「どういたしまして」


 視界が真っ白に染まり、次の瞬間には初期地点と思われる場所に立って(?)いた。

 まずはスキルの性能チェックだ。鑑定はベータテストと同じで、レベルに応じた情報を得られる。HP自動回復も同様。捕食は⋯⋯わかんない。機械なのに捕食? ネジでも食うの?


「敵影無し、とりあえず試すだけ試すか。『捕食』」

『オリハルコンの歯車×1が追加されました』


 ⋯⋯オリハルコンをたかが歯車に使ってんの? すげーなアトランティス。

 何回か捕食を繰り返していると、オリハルコンの板やらバネやらが追加されていき、レベルでの追加限界に達した。


「オリハルコンとそうじゃないパーツの差が酷いな。あ、キャラクター画面からパーツ取り外したり出来るんだ。思考操作って便利だわ」


 操作するための手が無いからね。


『全身がオリハルコンになったため、オリハルコンスクラップに改造進化しました』


 ただし、スクラップは抜け出せない。


『名前:エクスマキナ

 種族:オリハルコンスクラップ

 Lv:1

 筋力:1

 耐久:30

 敏捷:5

 魔攻:1

 魔防:40

 器用:1

 SP:5


 スキル:鑑定Lv1 HP自動回復Lv1 捕食 集合体 改造進化』


 Lv1だとこれ以上取り込めないのに、どうやってレベルを上げろというのでしょうか⋯⋯?

 敵、居ないんだが⋯⋯?

 クトゥルフ神話って、異世界もの描きにくくてさ⋯⋯

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょうどVRMMO系機械主人公の作品を探した瞬間見つかったぜ 最高に面白そうこれからが楽しみです!
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