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ショートショート、コント

コント 「赤いくつ」

掲載日:2020/08/02

 ツッコミ役(以下ツ)が客を気にしながら困り顔でボケ役(以下ボ)を舞台上で待っている。二人とも漫才師の設定。

 そこへボケ役がもっと困り顔で出てくる。しかも、つま先立ちで急いでやってくる。(クラシックバレエのいわゆる足五番、足を交差したままのつま先立ち)履いている靴はなぜか赤い。


 ※ ボケ役は最初から最後までほぼつま先立ちかつ、片足をあげたりジャンプの動作があります。本作はアンデルセン童話の赤いくつから想起したものです。




ツ「おいっ、お前遅刻やぞ。それになんでそないにつま先立ちやねん」


ボ「よくぞ聞いてくれました」


ツ「ふん」


ボ「あのな、さっきまで川におってな」


ツ「なんでまたそないなところに」


ボ「水きり遊びや、オレ、うまいねんで」(水きりのジェスチャー)


ツ「ふん」


ボ「夢中で遊んでたら、くつを落としてな」


ツ「ふん?」


ボ「なんかアマビエみたいなのが出て来てな」


ツ「えっ」


ボ「金色のくつと、銀色のくつと、どっち落としたのかと聞いてきてな」


ツ「お前、遅刻の言い訳もっと上手にできんか、いくらなんでも冗談やろ」


ボ「オレもな、冗談やろ思た…ほんで、冗談で、アマビエに赤いくつやあ、と言うたらな」


ツ「言うたんか」


ボ「言うた。ほんで、気が付いたら赤いくつを履いて、かかとを下ろされへんようになってん、どないしよ」


(ツは、しゃがんで、ボの赤いくつを見る。ボは懸命に足を下ろそうとするがずっとつま先立ちのまま)

ボ「とりあえず、このまま走ってきてん」(つま先立ちのまま走る動作)


ツ「アマビエはどないなった」


ボ「どっか行ってもた。なんでもええから助けてくれ」


(ツはまだ半信半疑で両手でボのひじをつかみ下ろそうとするが、できない。くるっと二人でフォークダンスのような回転になる)


ツ「つまりお前はアマビエに嘘ついてからかったから、こないなってもたんやな」


ボ「なんでもええから助けてくれ」


(ツは今度は両手でボの肩を下に押すがつま先立ちのまま、ボの両手が広がる)


ツ「え、なんやお前この手は」


ボ「いや、自動的にこないなる」


(ツ、腕をあちこち抑えるたびに、ボの腕が優雅にしなる。そのうち、足も上がりだす。ツは眉を寄せ腕組みしながら、盆踊りのようなバレエを眺めている。踊っている間もボはツにすがりつくようなまなざしだ)


ツ「わかった。お前、バレエの赤いくつや。それや」


ボ「なんや、それ。オレ、バレエなんかしたことないで」(そういいつつ踊っている)


ツ「アンデルセン童話の赤いくつの話を知らんのか。はいてる限り永遠に踊るやつ、そら、今も足が動いてら」


ボ「ほんまや、でも、オレ踊ろうとしてないでぇ」(泣きそうになっている)


ツ「アマビエにうそついたからや、な、せやろ」


ボ「おう」


ツ「アマビエを探して謝るしかない。それか、このまま踊って暮らすか」


ボ「いややぁ」(同時に激しくジャンプする)「いややぁぁ~」


ツ「ほな、みなさんこういうわけで漫才中止ですわ」


ボ「いややああ」(そのまま激しく踊る)


ツ「お、結構うまいやん。そのままどっかのバレエ団行って雇ってもらえ」


ボ「おれ、漫才やりたいねん。お前も爪先立って踊ってくれやああ」


ツ「なんで話がこないなるねん」(といいつつ、ツもつま先立ちになる)


ボ「お、おれより、うまいやんけ」(お互いの肩をつかみあいながら、ぐるぐる回る、ほっと一気に二人同時のキメポーズをする)


ツ「しかし、このままではあかん。なんとかして元に戻してもらわな」


ボ(観客に向かって恥も外聞もなく絶叫)「お客様の中にアマビエはいてはりませんか、どっかに隠れてませんかあ、お隣の人の顔、よう見てください~アマビエではないですかあ」


ツ(気遣う)「お前…」


(二人とも大きく羽ばたく動作をしながら客席に向かう)


ボ(必死に叫ぶ)「うそついてすんませんでしたあ、ぼくのくつは黒くて、はげちょろで、底が抜けたくつですう。リサイクルショップで三百円で買いましたあ。赤いくつではありませんでしたあ、うそついて、ごめんなさいよおおおお」


ツはボの泣き叫ぶセリフを聞いているが、いきなりボが、かかとを下ろす。

ツ、ボ共に「あっ下りた、下りたやんか」

ツ「わけわからんけど、許してもらえたんやろ」

(抱き合って喜ぶ)


ボ「アマビエさまあ、おおきにい、ありがとおおお」


ツ「ま、よかったがな。それにしてもまあ」


ボ(赤いくつをぬぐ、しかしくつしたのままでまたつま先立ち)「あ、思い出した」


ツ「なんや」


ボ「ぼくのかかとな、両方ともネズミにかじられて今痛いねん」


ツ「川で?」


ボ「うん」


ツ「水きりとくつを落としたこととアマビエはどうなった」


ボ「わからん」


ツ「作り話か、夢オチか、お前、心配してたのに怒るで。赤いくつもどこで拾ったんや」


ボ「川で水きりしていてな、くつを流してしもてな、甘海老が川の上で跳ねていてな」


ツ「は? アマビエでなくて甘海老?」


ボ「ほいでな、甘海老がこない言うねん。あなたのくつは…」


ツ「もうええ、やめろ」


ボ(つま先立ちしながら退場)「ぼくのかかと、ネズミに」


ツ(怒りながら追いかける、退場)「やめろっちゅうねん」


●●● おしまい ●●●


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