リトとデートです!
庶民派デート
御機嫌よう、ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセです。今日はリトとお忍びデートです!平民の格好をしています。
ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセとして生まれて、初めて歩く市井の商店街です。王女として生まれてからは貴重な経験です。リトによると、この商店街の売り物は女性向けのものが多いとのことです。主婦が主な客層だかららしいです。
私は前世以来久々の商店街に、あれが見たいあれも見たいとわがままを言い、リトに付き合ってもらいました。ミミさんのためにハンカチ、ネストのために甘いお菓子、ヴィドのために錬金術用の鍋、リタさんのために髪留め、ビビさんのためにリボン、アル王太子殿下のためにビビさんとお揃いの色違いのリボン、ブルローネ先生のためにびっくり箱、フローリア様のためにプリザーブドフラワー、リトのために私とお揃いに見えるブレスレットを買いました。
リトは、困ったように笑います。
「ティーレ。せっかくのデートなのです。たまにはみんなのことは忘れて私達だけで楽しみましょう」
「だって、もうすぐ合宿でみんなに会えるし、喜んで欲しいし…」
「…ティーレらしいですね。ですが、このままだと私がヤキモチを妬いてしまいますよ」
ちょっとだけむすっとした表情をするリト。もう、可愛いのはどっちよ。
「リトにも買ったんだよ。ほら、みて!このブレスレット、私とお揃いに見えるよ!」
「…おや、本当ですね。さすがティーレです」
多少機嫌が直ったリトに、私が直接ブレスレットを着けてあげます。
「ほら、これでお揃い!だから許して?」
ね?と首をかしげるとリトは何故か真っ赤になり、頷いてくれます。
「リト、ありがとう!」
「…ティーレは狡いです」
「?何か言った?」
「いえ、なんでも。では、もうすぐお昼ですし、何か食べましょう」
「いいね!ちょうどお腹が空いてきたところだし!」
「そろそろ飲食店が見えてきますよ。本当にちょうどいいですね」
一歩踏み出すと、私達が行こうとしている方から美味しそうな良い香りがしてきます。目をやると、飲食店がいくつかあります。美味しそう!
「何にしましょうか。ティーレは何がいいですか?」
「うーん。どれも美味しそうで困っちゃうよ」
「では、私のおすすめでもかまいませんか?」
「うん、いいよ」
「ならば飲食店ではなく屋台にしましょう。こちらです」
リトが慣れた様子で手を引いてくれます。リトは前にもここに来たことがあるのかな?
リトに手を引かれたのは小さな屋台で、串に鶏肉が刺さっている物を売っています。…なんだっけこれ。前世で好きだったんですよね。…そう、焼き鳥!店主さんが笑顔で出迎えてくれます。
「いらっしゃいませ!麗しい乙女に美男子殿!ラブラブカップルには二本だけサービスしますよ!」
「じゃあ皮とももと塩ダレとネギまを二本ずつください」
「はい、まいどありがとうございます!」
「ティーレはこのようなものを食すのは初めてでしょう?焼き鳥というのです。食べやすいし、とても美味しいのですよ」
「…うん!ありがとう!」
ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセとして生まれてからは、確かに初めてです。嘘ではない。嘘、ではないです。
「はい、焼きたてですよ、お二方!温かいうちにお召し上がりくださいね!冷めても食べられないことはありませんが、あつあつが一番です!」
店主さんが渡してくれます。リトが言います。
「立ち食いと言って、この場でこのまま食べてもいいんですよ。大きな口でがぶっといくのがコツです」
「わかった!いただきます!」
「さすがティーレ。物覚えがはやいですね」
前世で散々食べてただけです。
「美味しいですか?」
「美味しい!」
やっぱり焼き鳥最高!
私が食べている間に会計を済ませてくれるリト。ありがとう。
「私はたまに市井の状況を見にお忍びでこういったところに来るのですが、この焼き鳥という食べ物はよく見かけるのです。市井では人気の料理のようですね」
「そうなんだ」
やっぱりこっちの世界でも人気なんだなぁ。
「ティーレ。ブブチャチャを知っていますか?」
ブブチャチャ?…え、知らない。なにそれ。
「わからないけど。…劇かなんか?」
「ふふ。食べ物ですよ」
え!?すごい愉快な名前なのに!?
「ココナッツミルクを使ったあたたかいスイーツです。さつまいもがおいしいのですよ。こちらです」
「あ、うん」
リトに手を引かれてブブチャチャを売っているお店に行く。わあ、美味しそう!
「すみません、二つください」
「はい、毎度ありがとうございます。あ、今日はお連れ様もご一緒なのですね。どうぞ」
「ええ、私の愛しい方です。お金はこれで」
「ありがとうございました!」
リトが会計を済ませてくれました。これがブブチャチャ…。
「いただきます」
…んー!ココナッツミルクが濃厚で美味しい!癖になりそう!
「美味しいね!リト!」
「そうでしょう?温かいから、冬にぴったりのスイーツなんです」
隣でリトも美味しそうに食べています。
「リト、ありがとう!これ、とっても美味しかった!」
「ご満足いただけたようでなによりです。…あとは、…お土産も買ってありますしね。そうだ、占いでもしていきましょうか」
「占い?」
「ええ、この辺りによく当たると噂の占い師が…あ、いましたね」
占いかぁ。ちょっと興味があるかも。
「すみません、占いいいですか?」
「ええ、かまいませんよ」
黒いローブをまとっていて、顔が見えない怪しい人。でも、何故だかそんなに怖くない。
「じゃあ、二人でお願いします」
「相性占いですね。では、始めます」
占い師の方が水晶に手を翳します。
「相性は九十五パーセント。なかなか良好なようですね」
「だって!リト!」
「嬉しいですね、ティーレ」
二人で笑い合います。
「…ティーレ、と言いましたね。お嬢さん、ちょっとだけサービスしますよ。タダで運勢を見て差し上げます」
「え?いいんですか?」
「ええ」
「ティーレ。せっかくですからお願いしてみてもいいのでは?」
「じゃあそうするね」
「では坊ちゃんは離れた場所でお待ちください」
リトは素直に離れる。占い師さんは、言葉を詰まらせる。なに?
「貴女は…幸運なのか不運なのかわかりませんね」
「え?」
「貴女。本物のジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセではないでしょう」
!
「本物のジェンティーレは貴女の魂の中に閉じ込められて眠っています」
それって…!
「ですが、周りにとってはその方が幸福なようですね。本物のジェンティーレに傷付けられる運命だった者達が救われています」
でも…。
「…本物の、ジェンティーレは?」
「このままいけば、眠りについたまま次の輪廻に乗るでしょう」
「…私から解放してあげる方法は?」
「貴女がその体から出て行くか、ジェンティーレの魂を摘出し、輪廻の輪に乗せるか。ですが、貴女の身の回りの者達にとっては貴女こそがジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセ。前者はおすすめしません」
「…。ジェンティーレの魂を摘出する方法は?」
「貴女にそれ相応の覚悟があれば」
「あります!」
「…ならば、ちょっと失礼」
占い師さんは私の胸に手を翳します。胸がぎゅっとなり、あまりの痛みに声が出そうになります。でも、ここで叫んだらリトが色々勘違いしそうです。我慢します。
「…。はい、終わりましたよ」
終わったら、なんだか体が軽くなりました。占い師さんの手には黒い塊。これが、ジェンティーレの魂?
「では、輪廻の輪に乗せます」
何処からともなく風が吹いて、黒い塊は空高くに押し上げられます。そして見えなくなりました。
「その体にある限り、闇の魔力は使えるので安心してください」
「ありがとうございます。…私は、この十数年間、ジェンティーレの人生を奪って、これからも奪い続けるんですね」
「ですが、それが貴女の大切な者達の心を救っているのです。どうか前を向いてください」
「ありがとうございます、占い師さん」
「…いえ。…貴女は、そうは感じなかったようですが」
「え?」
「貴女の前世で、一人だけ。貴女のことを想っていた者がいたのですよ」
「…!?」
「僕は、貴女の優しさが好きだった。今世では、どうか幸せに」
「それって…!」
「ティーレ。そろそろいいですか?行きましょう」
「リト…」
「占い師さん。相性占いの代金です。では、ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
「あ、あの…前田君!」
「!」
「私、前田君がそう言ってくれて嬉しい!ありがとう!前田君も、今世では幸せにね!」
「…ありがとう。空道さん」
「…、ティーレ?」
「なんでもないよ、行こ!」
「ええ」
こうして私にとって大切な一日が終わりました。心のつっかえが取れました。
色々と解決したかも?




