専属護衛騎士を選びます!
専属護衛騎士
ご機嫌よう。ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセです。今日は、私の専属護衛騎士を選ぶ日です!
ということで、さっそく騎士団の方々のご子息が私の宮のホールに集められたのですが。
「ティーレ。気に入った奴はいるか?」
「そんなこと言われても…うーん…」
決められません!どうしましょう!
「…まあ、何も今すぐ決める必要もないか」
パパが私の頭を撫でてくれます。
「お前達。ティーレの心が決まるまでしばらく好きに過ごしていいぞ」
「はい!」
ということで、一時休憩です。
せっかくの機会です。みんなの素の状態を見てから決めましょう。
ー…
みんなは、自由に過ごしていいと言われているのにほとんど剣の鍛錬を積んでいます。偉いなぁ。でも何人かホールを抜け出ています。…気になるし、ちょっと探してみようかな。
…しばらく探すと、二階へ繋がる階段の下で、こそこそしている五人を見つけました。いえ、五人が一人を囲んでいます。何やってるんだろう。
「騎士団長の息子だからって調子に乗ってるんじゃねーよ!」
「なんだ?そんなに俺が羨ましいか?天下の父上の息子だもんなぁ。そりゃあ羨ましいよな?」
「っ!てめぇ!」
「うざいんだよ、羽虫くん。俺は父上の息子だから優遇されるんじゃない。優秀だから優遇されるんだ」
「お前みたいな性格の悪い奴が王女殿下の護衛に選ばれるわけないだろ!」
「そんなの王女殿下次第だろ」
「言わせておけば!」
「…」
囲まれている男の子は胸ぐらを掴まれても平気な顔をしています。でも、さすがに助けないわけにはいきません!
「何をしているの!」
「…っ!王女殿下!」
「誇り高きアポカリッセの騎士の息子が集団で一人を詰るなんてみっともない!」
「…っ!」
みんな言い訳も出来ないようです。
「も、申し訳ありません!」
「このことはパパに報告します!」
「そんな!」
いじめっ子達は何か言っていますが聞きません。
「それから、貴方」
男の子に近づきます。
「はい」
男の子はやはり平気な様子で私に返事をします。
「貴方を私の専属護衛騎士に任命します」
「そんな!王女殿下!」
後ろでいじめっ子達がなにか言っていますが知りません。
「俺、オネスト・コントラットは、今日付でジェンティーレ王女殿下の専属護衛騎士となります。御身に生涯の忠誠を」
跪き、私の手を取りキスをするオネスト。…あれ、オネスト・コントラット?…それって、もしかして、攻略対象者じゃ?…ああ、やっぱりそうだ!騎士団長令息、オネスト・コントラット!幼いからわからなかった!
乙女ゲームでのオネスト・コントラットは才能があり、周りから期待される騎士団長令息であり、騎士見習い。主人公とは、毎日のように訓練場に見学に来ては差し入れをしてくれる可愛い女の子、ということで恋に落ちる。…もしかして私、オネストを専属護衛騎士に任命したことで主人公とのフラグを壊してしまった?いや、でも、主人公のフラグを壊すのは私が生き残るにはいいことだし…。結果オーライ?
「オネスト。これからよろしくね」
「はい。ジェンティーレ王女殿下」
「ティーレでいいよ」
私が笑顔でそういうと、何故かぽかんとして顔が赤くなるオネスト。なに?
「…では、ティーレ様」
???
未だに顔が赤い。
まあいいや。
「じゃあ、パパに報告しに行こう」
「はい」
こうして私は、専属護衛騎士を選びました。
「でも、ティーレ様。俺でよかったのですか?」
「どうして?」
「さっきの会話を聞いていらしたならわかると思いますが、俺は腕は自信がありますが、口が悪くて」
「あら。それなら、私がなにか間違いを犯しそうな時はずばっと言ってくれると嬉しいわ」
「…本当によろしいので?」
なに?本当は私の専属護衛騎士になるのが嫌とか?
「あら。もし嫌なら断ってもいいのよ?」
正直、主人公のフラグを壊すのは気が引けるし。
「いえ!ティーレ様の専属護衛騎士になるのは光栄です!」
ならなんでそんなに不安そうなの?
「ただ、俺…ティーレ様を傷つけないか心配で」
「え?」
「貴女は…俺が騎士団長の息子だから俺を選んだ訳じゃないんですよね?」
こくりと頷く。
「そんな貴女が、俺は好ましく思います。だからこそ、貴女を傷つけたくない」
「…っ!」
そんな直球に好ましく思うとか、恥ずかしい!
「それなら、私、傷ついた時はちゃんと言うわ。そしたら、それを直せばいいじゃない」
「…はい、頑張ります」
…その後パパに報告しに行くと、やはり騎士団長の息子を選んだかと満足そうなパパ。
「私のために、一緒に成長していってね。オネスト」
「頑張ります」
主人公のフラグ潰し