スラム街での炊き出し
スラム街
御機嫌よう、ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセです。今日はスラム街での炊き出しの日です。
「おはよう!みんな、今日はいい天気で良かったな」
ブルローネ先生がにこにこと挨拶をしてくれます。
「おはようございます、ブルローネ先生」
アル王太子殿下が重そうに厨房から貰ってきた余りの食材を背負ってブルローネ先生に挨拶します。
「ブルローネ先生も持ってくれません?」
ネストは手ぶらなブルローネ先生に不満たらたらです。
「まあまあ。君騎士科なんだから俺の分まで持ってくれよ」
ネストはアル王太子殿下よりもさらに多くの食材を持っています。
「お、重い…」
ヴィドは調理器具などの荷物で潰れそうです。
「皆さん、大丈夫ですか?」
私とミミさんとビビさんは軽い食材を持てる分だけ持っているので余裕です。
「もしよかったら、少し持ちましょうか?」
ミミさんがヴィドに声をかけます。
「い、いえ。ぼ、僕は腐っても男です。じょ、女性に重いものを持たせるなんて…っ!」
ヴィド、必死です。
「じゃあさっさと馬車に乗せちゃいましょう!」
私がヴィドを引っ張って馬車まで連れて行きます。荷馬車に粗方突っ込んで、私達も馬車に乗り出発です。
ー…
「…ここは本当にスラム街なのか?見たところ、かなり清潔そうに見えるが」
アル王太子殿下は首を傾げます。
「国王陛下の政策の一つで、スラム街の民には公衆浴場を無料で使える券を配布しているの。感染症対策ね。あと、こうした炊き出しも出来るだけ多く機会があるようにしているの。その代わり、街の掃除を定期的にやってもらっているのよ」
「ふむ、なるほど…感染症か。考えてもみなかった。たしかに、流行病はこういった場所から広まるのだろう。…。」
アル王太子殿下は何か難しい顔をしています。自国のことを考えていらっしゃるのでしょう。
「さあ、お前達!炊き出しの準備を進めるぜ!」
「は、はい!」
アル王太子殿下は現実に帰ってきました。すぐに調理器具の準備をします。
「今時男も料理ができなきゃしょうがないからな。久々に腕がなるぜ」
これは…ティターニアの郷土料理を食べられるチャンスなのでは…?思わず喉がごくりと鳴ります。
「ジェンティーレ王女殿下。心配しなくてもちゃんとみんなの分も作るぜ」
ウィンクしてくるブルローネ先生。さすがです!
「じゃあはりきって作りますよー!」
「おーおー、楽しみにな」
まずは食材を無属性魔法で洗って、切ります。炊き出し用なので大量に切ります。キリがないです。
「腕が…疲れる…」
「普段炊き出しをされている方はこんな思いをされているのですね…」
「おお!みてくれ!きれいに皮が剥けた!」
「アル王太子殿下最初から比べると大分成長しましたね」
「アルったら最初は身まで剥いてたもんね」
「ビビ…そういじめないでくれ…」
あんまりにもたくさん切ったり剥いたりするものなのでみんな上達しています。もちろん私も。
…。
やっと切り終わりましたー!
「じゃあこっちは鍋で煮て、こっちはフライパンで炒めるぞ。こっちはこの調味料につけておく」
ブルローネ先生の指示で動きます。忙しいです。
「煮るときに沸騰させないようにな。フライパンの方も焦がすなよ。さあ、そろそろ米を炊こう。米の炊き方はわかるか?」
「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、赤子泣いてもふた取るな…だっけ?」
「おお、ネスト様。よく知ってるな。ここ、パンが主流なのに」
「まあ、一応昔お袋に聞いたので」
「へえ、もしかしてお袋さんはティターニアがあった今のニンファの近くに住んでたのか?」
「いえ。ただ、ばあちゃんがニンファの出身だったらしいです」
「そうか!お婆さんは元気か?」
「人間は儚いものですよ、ブルローネ先生」
「…そうか。一度話をしてみたかったんだがな」
「じゃあ今度、一緒に墓参りでもします?」
「いいのか?」
「え?乗り気なんですか?いいですけど…」
「二人とも、今はお米ですー!」
二人を現実に引き戻す。
「ああ、ごめんごめん」
「悪い悪い。じゃあ米を炊こう!」
ブルローネ先生が教えてくれる。
「初めちょろちょろとは、米に水を吸収させるための時間だ。より甘みを引き出すために、弱火で米の中心まで水を吸わせてやる」
ふむふむ。
…。
「しっかりと水を吸わせてやったら、一気に強火にして沸騰させる。沸騰したら徐々に火力を落として粘りと甘みを加えていく」
一気に強火かぁ。無属性魔法の着火でいっちゃえ。
…。
「じゃあ焦がさない程度に追い炊きをしてくれ。その後蒸らす」
焦がさない程度…こ、こんな感じ?
「上手い上手い。じゃあ、あとは蒸らしていこう」
…。
「出来たー!」
料理が完成しました!これがティターニアの郷土料理!和食と洋食が混ざった感じです!美味しそうです。
「さあ、炊き出しだぞー!みんな集まって列に並んでくれー!慌てなくてもたくさんあるからなー!順番を守ってくれよー!」
ブルローネ先生がスラム街の民に音声魔法でお知らせします。
あっという間にみんなが集まって列に並びます。順番を飛ばしたりする人はいません。よかった。
私達はそれぞれ担当のお料理の配膳をします。器は紙の使い捨て出来るものを用意しました。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「まだ熱いので気をつけて食べてくださいね」
「お水はこちらですよ」
「器は使い終わったらこちらの袋に捨ててくださいね」
「本当にありがとう」
一人一人に丁寧に、とはいきませんが、なるべく手早く、しかし優しく、と気をつけて配膳します。みんなも喜んで受け取ってくれます。
粗方配膳し終わったら、私達もいよいよティターニアの郷土料理を食べられます。
「じゃあいただきます!」
「わあ、すごく美味しい!」
「このお漬物、さっき漬けたばかりだとは思えないくらいしっかり味があって美味しいね」
「ビビ、口にお米がついてるぞ」
「え、うそ!アル、取って!」
「わかった…ほら」
アル王太子殿下はビビさんの口元についたお米をひょいと取るとそのまま口に運んでしまいます。
「なっ…なっ…!」
「?どうした?ビビ」
「アルの馬鹿ー!」
ビビさんは目をうるうるさせて、頬を紅潮させて、ぷるぷると震えてそっぽを向きます。怒っているのでしょうけれど、可愛いだけです。
「また痴話喧嘩してるよ…」
「言ってやるな。ビビさんが可哀想だろう」
「もういっそあの二人付き合った方がいいんじゃないか?」
「ブルローネ先生、それ、生徒会のほぼ全員が思ってます」
「だよなぁ?」
いやぁ、それにしても美味しいご飯だなぁ。
「ブルローネ先生、故郷ではいつもこんなに美味しいご飯を食べていたんですか?」
「ああ、まあな」
「正直、アポカリッセの食事ってどうですか…?」
私的にはこっちの料理も美味しいんだけど…。
「はは。なんだよ可愛い心配して。心配しなくてもアポカリッセの食事も好きだよ。むしろきたばかりの頃はこっちの料理の方が好きだったくらいだしな。今はどっちも同じくらい好きだけど」
「よかったぁ」
「さあ、後片付けして帰るぞー」
そうして私達は、後片付けをして学園に帰ったのでした。
ぶっちゃけそんなにスラム化してない




