生徒会費の予算編成を行います!
乙女ゲームの主人公、不慣れながら頑張る
御機嫌よう、ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセです。放課後です。生徒会として初のお仕事を行います。
「では、生徒会執行部の会議を始める」
アル王太子殿下はさすが王太子、生徒会長として早くも威厳を感じます。
「今回の会議の議題はこれ、生徒会費の予算編成だ」
生徒会費の予算編成。これは、生徒会本部…つまり各委員会の予算編成でもあります。また、各学園行事などの予算編成でもあります。アル王太子殿下は言います。
「例年、事務費や備品費など、多くのお金を費やしている。だが学園から…つまり生徒達から預けられた大切な資金であることを忘れてはいけない。出すところでは出して、締めるところでは締めることが大切だ」
ビビさんが口を開きます。
「毎年、たくさん使うものにお金がかかっているのですよね?その辺のコスト削減を目指したいですね」
アル王太子殿下が目を見開く。こういう場で女性が発言するのを初めてみるのでしょう。
「…」
「王太子殿下?」
ミミさんが声をかけます。
「あ、いや、失礼した。そうだな。コスト削減として、安価なものを購入することも検討しよう。だが、安かろう悪かろうではいけない。その辺のさじ加減が難しいところだな」
ヴィドが恐る恐る手を挙げます。
「そ、それなら…ぼ、僕、ものを見極めるのは得意なつもりなので、安くて良い備品を調べてきます。だ、だから、じ、事務費や備品費などは大幅に削減してもらって大丈夫です…」
「そうか。それは有り難い。だが、本当にいいのか?備品一つとっても、学園の品位を保てるものを用意しなければならない。帳簿と残高が合わなければ、それは会計である君の責任になる。ポケットマネーからは出せないぞ?」
「は、はい。学園の品位を保てる、良いものの中から安いものを選んできます。だ、大丈夫です…」
「そうか。さすがパーヴィド殿。よろしく頼む。」
アル王太子殿下は満足そうに頷きます。
「次は各部活動と各委員会の予算編成だが…」
ビビさんがまた口を開きます。
「そこは基本的に例年通りという感じでいいんじゃないでしょうか?」
アル王太子殿下は今度は興味深そうに話を聞きます。
「というと?」
「資料をみる限りでは、各部活動や各委員会の予算は毎年大体全部同じだと思います」
「ほう。確かにな」
「一度生徒総会に例年通りに出してみて、各部活動、各委員会で申したいというようなことがあればそれを生徒会役員に言ってもらって、その時には今回備品費や事務費などのコスト削減をして余ったお金の中からヴィドさんに決め直してもらうという形でどうでしょうか?」
「いいんじゃないですか?」
「私もそれでいいと思います」
「ぼ、僕も賛成です」
「私もそれでいいかと思います」
「異議なしです」
「では、各部活動と各委員会の予算編成は例年通りに進めよう」
「じゃあ、今回の会議はこれで終わりですかね?」
「ああ。パーヴィド殿、決算書の作成、出金管理は頼んだ」
「ま、任せて下さい」
「オネスト殿。議事録の作成をよろしく頼む」
「はい、どーも」
こうして初の生徒会活動は無事に終わりました。
「ティーレ王女殿下、ミーテ嬢、ノービレ嬢」
アル王太子殿下が声をかけてくる。これはあのイベントですね。
「はい?」
「なんでしょう?」
「どうかしましたか?」
「どうやら、俺は貴女方の価値を見誤っていたらしい。どうか許してほしい」
そう言ってアル王太子殿下は頭を下げて謝罪します。ビビさんとアル王太子殿下のイベントです。
「えっ」
「そ、そんな…」
「いえいえ、顔を上げてください。でも、どうして急に?」
私はアル王太子殿下の言葉を促します。
「俺の国では、その…こういった場に女性が参加すること自体が珍しくてな」
「はい」
にこにことアル王太子殿下の言葉を待ちます。
「その上発言するなど…言語道断だった」
「うわぁ、すごい国ですね…嫁いだら大変そう…」
ビビさんの嫁いだら大変そうという言葉にアル王太子殿下は悲しそうに笑います。
「いや…うん。そう言われても仕方がないようだ」
ぽりぽりと頬を掻くアル王太子殿下。
「実際、こうして貴女方に生徒会に入って貰えなければ、私はこうして認識を改めることすら出来なかった」
「いい勉強になりましたね!」
ビビさんが言い放つ。
「ああ。本当に。女性がこうも自由に振る舞える国というのは、良いものだな。…プロフェツィーアもこうであれば、母様が泣き暮らすこともなかったのだろうな」
そう。アル王太子殿下のお母様はもう亡くなっている。プロフェツィーア国王の正妃となることを約束されて生まれてきたアル王太子殿下のお母様。しかしプロフェツィーア国王の興味は寵妃に向いており、一応王としての義務でアル王太子殿下を作り、また寵妃とは避妊していたけれども、それだけだった。だからといって男尊女卑の国では何をすることも出来ず、悲しみに暮れたままアル王太子殿下のお母様はこの世を去った。それを見てきたアル王太子殿下は、男尊女卑思考の影響もあり、女性とはなんと脆く弱い者だろうと思った。だから、大切に庇護しなければならないと考えた。それ故のあの態度だった。…実は優しい人なのだ。それこそ、世界の綺麗な部分を見つけるのが上手な、純粋なビビさんにはぴったりなくらいに。
「…あ」
ビビさんが思わずといった感じで声を漏らす。
「そっか、アル王太子殿下もお母様を亡くされているんですよね」
「…ああ。まさか君も?」
「ええ、そうなんです。私達、仲良くなれると思いませんか?」
「あれだけの非礼をした俺を許してくれるのならば」
アル王太子殿下のその言葉に、ビビさんはぷっと笑います。
「そんなの全然!いや、怒ってましたし、これからだってまた非礼をされたら怒りますけどね?」
「俺はもうそんな気は無いが…」
「いいえ。プロフェツィーアの男尊女卑はものすごいと聞きますもの。絶対アル王太子殿下はまたやらかします」
ビビさんに断言され、アル王太子殿下は自分が情け無くなったのか、黒真珠の目をそっと閉じて、長く後ろで結った黒髪をしょぼんと垂らした。
「でも、その時には私が教えて差し上げますから。だから大丈夫ですよ、アル王太子殿下」
「…アルでいい」
「え?」
「アルでいい」
「ですから、アル王太子殿下と…」
「王太子殿下は要らない。アルと呼んでくれ」
「え?いや、そんな!婚約者様に申し訳ないですから!それこそ非礼に当たりますから!」
「婚約者はいない。父から自分で決めろと言われている」
「でしたらどうぞ自分でお決めになった婚約者候補者様に言ってください!」
「だから、言ってる」
「え?」
「君が俺の婚約者候補だ」
目をぱちくりさせるビビさん。あの攻略の難しいアル王太子殿下をこんなにも簡単に、素早く落とすとはさすが主人公です。
「え、えっ…それって…」
「ノービレ嬢…いや、ビビ。君が好きだ」
「…っ!」
真っ赤に染まるビビさんの頬。アル王太子殿下は、攻略が難しい分、一度好感度がマックスまで上がるとどんな選択肢を選ぼうが好感度は下がらない。アル王太子殿下の好感度が一度マックスまで上がったが最後、アル王太子殿下ルートまっしぐらなのだ。頑張れビビさん。
「そ、そんな…急に言われても困ります…」
「そんな顔で言われてもな」
そう、今のビビさんは動揺からか目はうるうると潤み、頬は赤く染まっていて、小刻みに震えて、アル王太子殿下を上目遣いする主人公っぷりをみせているのです。これで拒否されていると思う男の人はいないと思います。
「まあいい。長期戦でいこうか。ビビが俺の思いを信じられないのなら、な」
震えるビビさんを抱きしめて、ビビさんの頬に手を添えるアル王太子殿下。
「でも、絶対に放さないし、諦めないから。覚悟してくれ」
「なっ…なっ…な、なんでそういうことを急に言い出すんですかぁ!!!」
「なっ…ビビ!?どうした!?また俺は何かやらかしたのか!?ビビ!?ビビ!教えてくれ!頼むから!ビビ!ビビ!」
アル王太子殿下の胸を腕で押し退けて、脱兎の如く逃げるビビさん。それを追いかけるアル王太子殿下。そして私達は…。
「ねぇ、あの痴話喧嘩も議事録に残しておく?」
「やめて差し上げろ…ビビさんが可哀想だろう」
「だってこんなに面白いネタそう無いよ?ねぇ、ティーレ様」
「んんっ!…ま、まあ、正直気持ちはわかるけど…」
「ティーレ」
「わかってるよ、リト。ダメ。ダメだからね、ネスト」
言いながらちょっと笑ってしまう。
「ふふっ。そういうティーレ様も楽しんでるじゃんか」
「そういうネストこそっ…」
ふ、ふふふと笑い合う。そのうちリトやミミさん、ヴィドにまで笑いが移ってしまいました。
「ふ、ふふ。ティーレ、ビビさんが可哀想だろう?」
「だ、だって…それを言うならリトだって…っ」
「ふ、ふふふ。皆様酷いですわ…っ」
「そ、そう言うミミさんだって…っ」
「あ、あはははは!」
結局最後にはみんなで大爆笑してしまいました。ようやく笑いが落ち着いた頃、ヴィドから真顔で質問されました。
「ティ、ティーレ様もああいう告白はお好きですか?」
「いや、熱烈過ぎるのもちょっと…」
「ティーレはこうして手を取り合って見つめ合う方が好みだよね」
リトに両手を両手で包まれます。
「ちょっとリト!」
「ビビさんとアル王太子殿下を笑ったお仕置き」
「それならリトもでしょ!」
なんとか逃げようとしますが、リトは離してくれません。仕方なくリトを見つめると、リトも私を見つめてきます。私が赤面して、なんとなく甘ったるい空気になってきた途端に、ネストが無理矢理私達を引き剥がします。
「じゃあ次俺の番な」
そう言ってネストは私の手を両手で包み、見つめてきます。婚約者の前だし、あれなんだけど、攻略対象者だけあってイケメンなネストにあんまり近くで見つめられると、なんか…。
「ティーレ。浮気は許さないよ?」
にこにこ笑顔のリト。だめだ。絶対ネスト相手に赤面しちゃダメだ。
リトのおかげ?で、赤面せずに済みネストの方が先に赤面して放されます。あれ?これってそういうルールの遊びなの?
「で、では、ティーレ様、ぼ、僕ともお願いします」
そう言って優しく私の手を包み込むヴィド。その横でにこにこと笑って私を見つめるリト。ダメだ絶対負けられない。ということで、上目遣いにプラスして潤んだ瞳で駄目押しします。すぐにヴィドは赤面して離してくれました。
「ティーレ様、私とも是非!」
何故か流れでミミさんともやることになりました。とはいえ女性同士なので決着も着かず、そのままお流れになり帰り支度を始めた頃にようやく二人が帰ってきました。
「おかえりなさい、アル王太子殿下、ビビさん」
「お、おかえりなさい」
「おかえりもいいけど、もう帰るよ?」
「うふふ、二人とも仲良くなった?」
「おかえり、二人とも」
「か、からかわないでください!」
「ビビ、すまなかった。悪かったから機嫌を直してくれ」
赤面しつつもそこまで怒ってなさそうなビビさんと、オロオロしてビビさんのご機嫌を伺つアル王太子殿下。ふふ。良いものが見れました!
その後、みんなに王族専用寮まで見送られました。
「では、ティーレ様。ご機嫌よう。…アルも」
「ビビもな。また明日学校で会えるのを楽しみにしている」
「も、もう!またそういうことを言う!」
「な、なんだ?俺はまた何かやらかしたのか!?」
「あっちの仲良しな二人は置いといて…ティーレ。また明日」
「うん。リト、また明日」
「ティーレ様。王族専用寮とはいえ、気をつけてね」
「ありがとう、ネスト。また明日ね」
「ティーレ様。そ、その、…ま、また、明日!」
「うん。ヴィドもまた明日」
「ティーレ様、明日も一緒に頑張りましょうね」
「うん、ミミさんもね!」
「もう、アルは離してください!ティーレ様、また明日!」
「うん、また明日!」
こうして賑やかな一日が終わりました。
結果、王太子ルートまっしぐら
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