悪役王女に転生してしまいました!
悪役王女なので悪役令嬢タグ入れてます
……思えば、つまらない人生でした。
私、空道伶奈は周りから愛されることはおろか、期待されることすらないダメな子供でした。父からはサンドバッグにされ、母からはヒステリーの対象になり、中学生になっても友達はおらず、孤独な毎日を過ごしていました。
でも、それもこれで終わりです。
私は父に思い切り頭を灰皿で殴られて、血がどくどくと溢れています。おそらく、この忌まわしい名前と共に、命を投げ打つことになるでしょう。
さようなら皆さん、御機嫌よう。私は、来世に期待します。
そうして、私の世界は終わりました。
……はずなんですが。
ここはどこでしょうか?
宗教画的な煌びやかな絵画の描かれた天井。隣にはなんか綺麗な女の人が寝ている。……寝ている? 息してない気がするんだけど。え? 大丈夫? なんか周りの人達も泣いてるし、やっぱり死んでる……?
私は気まずさと、なんでこんなことになっているのかわからないもやもやとで、とりあえず起き上がろうとして気付く。
……赤ちゃんになってるー!
来世? え? 来世なの? 確かに来世に期待しますとか思っていたけれども。え? 本当に転生しちゃうの? 記憶を持ったままとか有りなの?
そうして混乱したまま、隣の綺麗な女の人をよく見てみる。あれ、この人……私の大好きな乙女ゲームの公式ファンブックに載ってた、悪役王女のお母さんに似てない?
名前は確か……コルテーゼ・レジーナ・アポカリッセ。生まれながらに王妃となることが決められていた、真っ白い人。優しくて大らかで、政略結婚した王、クルデーレ・レ・アポカリッセに溺愛された。
しかし唯一の娘、ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセを産むのと引き換えに自分は死んでしまう。そして、ジェンティーレを見たクルデーレは……。
「魂が穢れている! なんだこの娘は! これがテーゼが残した子だと言うのか!」
魂の色が見えるクルデーレは、ジェンティーレの穢れた魂を見て自分の娘を拒絶する。
そしてジェンティーレは見事にその魂の色に相応しい、我儘で横暴で嫉妬深い、見た目だけは美しい少女に成長し、悪役王女として主人公の前に立ちはだかる。
そんなジェンティーレは、最終的に実は前王の隠し子の娘だったことが発覚した主人公と攻略対象者によって断罪され、身分を失い国外追放される。その後は描かれていないが、あの我儘王女ならきっと平民としては生きていけないだろう。
……もしかして。
まさか、私は。
また、愛されない子供として生まれてきてしまった?
さあっと血の気が引く。どうしよう。こんな私じゃきっと、クルデーレは魂の色を見て失望する。
どうしよう、どうしよう。
そうこうしている間に、クルデーレが部屋に入ってきた。
そして、コルテーゼを見て、労わるように頬を撫でた後、私を見て……。
「なんと美しい魂の色だ……さすがはコルテーゼと俺の娘」
え?
「だが、魂が少し疲れているようだな……前世で何かあったのか?」
ぎくり。
「……安心しろ。今世では、俺がお前を守るよ」
優しく頭を撫でられる。そして、優しく抱き上げられる。
「今世のお前は、ジェンティーレ・プリンチペッサ・アポカリッセ。アポカリッセ王国の姫。この俺クルデーレ・レ・アポカリッセと、王妃コルテーゼ・レジーナ・アポカリッセの娘。幸せにするよ、俺のティーレ。俺がお前のパパだ」
ティーレ。私の新しい名前。パパ。私の新しいお父さん。美しい魂の色。でも少し疲れてる。……よくわからないけれど、とりあえず、今世では愛してもらえる? 必要とされる?
「テーゼ。いい子を産んでくれてありがとう。ゆっくり休め。……愛してる」
よくわからないけれど、もしかしてもしかすると幸せになれるかもしれません。そのためにも、魂の色が穢れないように、シナリオ通りの人生にならないように頑張ろうと思います!
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