其の壱
(とある異世界の戦場で。ミレナ神国とクラルリ帝国の戦争にて現在窮地に立たされているミレナ神国軍第4師団の下へこれまで負け知らずの第9師団が到着した。)
「第4師団長ユイナ・ミラコノフへ連絡。第9師団到着しました。」
「第9師団長アレナ・ムラサバへ返答。了解。救援感謝する。」
数十秒後。天幕の作戦室にて
「第9師団長含め副団長入室します。」
「どうぞ。」
「失礼します。どうですか?ユイナどの。戦況は?」
「圧倒的に不利ですね。数で圧倒されているせいでどうしても押し込まれてしまいます。」
「つまり敵兵の一人一人は弱いと?」
「はい。こちらの兵一人で敵兵の3人は同時に戦えます。しかし数がこちらは50に対しあちらは1000。絶望的としか言いようがありません。」
「そうですか。仕方ない。俺も出るか。」
「アレナさん!本気ですか!?相手は1000もの兵隊ですよ?いくらあなた方が一騎当千のような力を持っているとしても危険すぎます!」
「何言っているんですかユイナどの。私一人で行きますよ。あなたたちの兵は全員下げてください。巻き込みたくありませんので。」
「・・・(3秒ほど沈黙)。わかりました。ですが死なないでくださいよ?あなたはまだ二十代前半なのですから。これからもこの国を支えてもらいたいのです。それに私もあなたの弟子の1人なのですから。」
「(一瞬寂しそうな顔をする)そうだな。それじゃあとりあえず俺のいつも言っていることは?」
「?(なぜいきなりこれを聞くのか理解できていない)わかりました。1、相手を恐れるな。恐れは己を弱くする。2、相手がいくら弱くとも決して慢心するな。油断は己を滅ぼす。3、決して仲間を無碍にするな。仲間を捨てればそれは下衆と同じだ。ですか?」
「(嬉しそうな顔をする)そうだ。そのことは決して忘れるんじゃないぞ。(急に表情が変わり、目が鋭くなる)じゃあいってこようかな。」
「(嫌な予感がしてくる)健闘を祈ります。」
「ああ。じゃあな。」
「いってらっしゃいませ。師匠。全兵引かせなさい!」
『了解しました。4師団員へ。全員撤退せよ!』
「(小声で)ここらが年貢の納め時かな。」
数分後
[戦闘音が爆発音のあとなくなる]
『第4師団長は連絡。敵兵団の壊滅を確認』
「!(あまりの速さに驚く)アレナさんは?」
『・・・(数秒の沈黙の後顔を歪めて)戦死なさいました。』
「!?(驚いた後信じたくないため確認する)本当に亡くなったのですか?死因は?」
『爆死です。敵を1人で8割以上倒した後敵の本陣へと突撃し自爆なさいました。』
「・・・何故自爆なさったのかは知っていますか?」
「それは私から説明します。」
「ヤイガさん、どういうことですか?」
ヤイガ・クラス。第9師団副団長である。
「一言で言いますと団長は、難病に侵されていたため余命宣告を受けていました。」
「どれくらいと、、、」
「3ヶ月前に余命2ヶ月と。いつ死んでもおかしくありませんでした。」
「つまり自分の死期を悟っていたのでしょうか。」
「それは間違い無いかと。こちらにくる前にこれをあなたに渡してくれといっていました。これです。」
「ありがとう、ございます。(手紙を開く)」
《俺の大事な大事な一人弟子、ユイナ・ミラコノフへ。
お前さんがこいつを読んでいるってこたぁ俺は一足先に星になってるってことかい?まぁそんなことはどうでもいいな。早速本題に入るが俺はお前さんにいつも3つのことを言っていたな。
1、相手を恐れるな。恐れは己を弱くする。
2、相手がいくら弱くとも決して慢心するな。油断は己を滅ぼす。
3、決して仲間を無碍にするな。仲間を捨てればそれは下衆と同じだ。
の3つだな。だけど実は俺はいつも自分に4つのことを言い聞かせていた。それはこいつだ。
4、決して1人で寂しく死ぬな。死ぬなら仲間を守って死ね。
だ。まぁお前さんはまだまだ元気で健康体だ。お前さんはこれからもたくさんの人を導くことができるさ。それに俺は団員全員にこのことを言ってある。そしてすでに王の兄ちゃんには第9師団を第4師団に吸収することを申請して通っている。これからは俺の代わりにあいつらを導いてやってくれ。頑張れよ。俺は天からお前さんのことをのんびり見守っておくことにするさ。感動を祈るぞ。ユイナ・ミラコノフ。》
「(目を潤ませながら元第9師団の面子を見る)!」
『そういうことだ。これから宜しく頼むぞ。団長?』
「(驚いて涙を流す)未熟者ですが、(数泊開けてから頭を下げる)よろしくお願いします。」
“頑張れよ。ユイナ”
ふと亡き師匠の声が聞こえた気がした。






