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32歳ニートの異世界譚  作者: たこ
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第1話 俺、ニート

はじめて小説というものを書いてみました。

もしお暇なら読んでみてください。


周囲を見渡しながらコンビニを出る。

別に悪いことをした訳でもないのに周りの目が気になってしまう。


これから夜通しネトゲをしようというのに、お気に入りのエナジードリンクを切らしていたことに気付いた為、親の財布から野口を一枚拝借し買い物にやってきたのだ。

購入した件のドリンクと少々の夜食を携え、夜の(とばり)の中家路を急ぐことにした。


25時を回ったこの時間、昼間は人通りの多いここら辺も今ならポツポツ通行人がいる程度。

知り合いにバッタリ出くわす可能性も限りなく低いだろう。


昔の同級生なんかに会って『今何してんの?』なんて聞かれた日には死にたくなる。

いや、俺の顔を覚えてるヤツなんていないだろうけど。



勉強・部活・恋愛といった青春とは程遠い中学生活を送り何とか入った低偏差値のバカ高校。

クラスメイトはどうみても自分とはタイプの違う『オラオラ系陽キャ(ヤンキー)』の皆様、もしくは自分と同じく勉強ができない故に『ライオンの群れに放()り込まれた羊系陰キャ()』。

当然のごとく一年生の頃からイジメられ不登校になりそのまま中退。

親には通信制も進められたが、登校の必要があるらしいので断念した。


二年間精神を休め、ついに就職を決意する。

が、今時高校中退――、いや中卒ではまともな職につけるはずもない。

クリエイティブ(体を使わず簡単)な仕事がしたく何社か応募したが、履歴書を見て鼻で笑われた。


仕方なく誰でも受かるようなバイトをしたが、既に逃げ癖のついた性根はどうしようもないらしく、3日目の休憩時間にバックレた。

俺の職歴はここまでである。


それからの15年はあっという間だった。

高校の卒業式、大学の入学式、成人式、初めての出社日、大事なデート、結婚式、子供の生まれた日…。

他の人間がいろんな記念日を過ごしている時、俺が家を出ることはなかった。

世間から目を瞑り、耳をふさぐ。

一日の大半を部屋で過ごす。

一晩中ネットをして、ゲームをして、ラノベと漫画を読んで、母親の作った飯を食べる。


今や、社会問題である『ニート様』として生活を謳歌している。


最初の頃こそ口をすっぱくして学校へ行け、働けと言ってきたそんな両親だが、無駄だと悟ったのか、もう諦めの境地に達したのだろう。

特に何も言われる事は無くなった。

そして俺は家計を食いつぶす『寄生虫』になった。


だが、親や世間に悪いと思ったことはない。


俺がこんなになってしまったのは、無関心な親やイジメを見て見ぬふりした教師、手を差し伸べない社会。

俺の心を殺したのはお前らなんだから、俺には心を休める権利がある。


なぁ、そうだろ?



もうすぐ家に着く。

帰り道の傍ら、スマホでこれから攻略するイベントの情報を確認していた。


今やっているネトゲはかれこれ2年は続けている。

基本無課金派の俺だが、コレには既に10万はつっ込んでる。

親に就職活動すると偽り金を無心するのは大変だったが、有り余る時間を注ぎ込んだ甲斐もあり全プレイヤーの中でもかなり上位のランクではないだろうか。

職業カンスト、ほぼすべてのスキルや魔法を習得、レベルも3桁に達している。


このゲームは今の俺の人生の生きがいといっても過言ではない。


それに自慢ではないが、ゲーム内でのフレンドはかなり多い。

皆、俺を頼りにしてくれるから引っ張りだこだ。


冒険仲間のツリッターの呟きによると今回はなかなか難易度が高いらしい。

頭の中で自分ならどう進めて行くか思考を巡らし、画面をフリックしながら歩を進める。


いいね!を押しながら、ネットの中みたいに現実の生活や人間関係も簡単だったらいいのに、なんてくだらないことを夢想する。



今の世界は、生きるのに難易度が高すぎる。



どうやら、中ボスの倒し方にコツがあるらしい。

意識が完全にスマホに向かっていたためだろか。


俺は接近してくるトラックに気付かなかった。

けたたましいクラクションの音でやっとその存在に気付いた。


「んぁっ?」


気付いた時、既に視界は眩いヘッドライトの光に覆われていた。

次の瞬間、体験したことのないような衝撃。


身体と、意識が、飛んだ―――。




――――――

―――――

――――

―――

――



ガサガサという草のが風に揺れる音で意識を取り戻す。


「んんっ…。」


目を開き、のそりと上半身を起こす。


「うぅっ…。体痛ぇっ……。んん、そうでもねぇ…?」


徐々に覚醒する意識の中で、記憶をたどる。

俺は間違いなくトラックに()かれた。轢かれたはずだ。

なのに、体に痛みはないしざっと身体を見渡しても怪我らしい怪我はしていない。何でだ?


「っていうか……」


ここ、何処だ?

もう住んでるマンションの近くだったはずだが、ここは一面原っぱ?みたいな場所のようだ。

家の近くにこんな何もない場所あったか?


それに空も明るいし。

いや、これは気を失っていたから時間が経っただけか?


何が何だか全く理解できない。



しばらく呆然として、時間が過ぎた。

多少頭が整理されてきた。

まず、トラックに轢かれたのは間違いないが傷一つ負っていない。理由は不明。

そしてここは俺の家の近くではない。

おそらく、東京でもない。下手したら日本でもないかもしれない。

空気が違う――。

直感的な何かではあるがそう思える。

だとしたら、海外か…?いるとすれば病院のはずだが、なぜか野原。

周りには山々、そして深い森、遠くを飛ぶ鳥。

圧倒的大自然である。



ふと目を凝らすと、遠くに集落のようなものが見える。

目を細めて、周囲をみているとその集落のある方向から何かがこちらに向かってきている。

よくよく、目を凝らすとどうやら馬に乗った人のようだ。

……馬。


身体を起こし立ち上がり、その人を迎える準備をする。

近づいてくる事でその人物が鎧らしきものをきていることを認識する

……鎧。


鎧といっても随分軽装である。ヘルムも被っていない。

ゲームでいったら最初のほうの安い感じのヤツ。


ヤバい。こんな格好してるヤツ間違いなく、ヤバい。


いよいよ鎧の人物は馬で俺の目の前につけると、颯爽(さっそう)と降りて近づいてくる。

そこそこ大きい体に金髪で彫りの深い顔、無精ひげを生やした中年のおっさん外人という風貌。


さて、なんと話すべきか…


「ファルマンのじじいが行き倒れの男がいるって言ってたけど、どうやら目覚ましたみたいだな」


………………。


顔はどうみてみ西洋の外国人顔なのにエライ流暢(りゅうちょう)な日本語で喋るんだな。

やっぱ、ここは日本でこの人はコスプレ好きの外人なのか?


「なんでこんなとこで倒れてたのか知らないけど、大丈夫かい?」


「っ!だ、だ、大丈夫です…」


やべっ、混乱と久しぶりの人との会話で上手く口が回らない。

何なんだ、この状況。

心配してくれてるみたいだし悪い人ではない…のか?

どうみても変人だが。


「そりゃ良かった。とりあえず、こんな所じゃなんだ。町に行こうか。えーっと、あんた名前は?」


「な、名前…ですか?」



「山田、騎士(ナイト)です」



そうそう、日本中のDQNネームつける親な。

マジ氏ね。


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