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第2章「熾烈」治水(5)

 また、轟音がした。おそらく、瀾ちゃんが言ってた「迫撃砲」の弾の音だ。でも、あたし達が乗ってるSUVは無事だ。

「って、何だよ、アレ?」

 どうやら、「それ」が盾になって爆風を防いでくれたらしいけど……。

 後方にはロボットアーム付の大型ブルドーザーが有った。

 先端が鋏型……と云うより大昔の「飛べない大型の肉食鳥」のクチバシのような形をしたロボットアーム。

 しかも、普通のブルドーザーが砲弾の爆風を防げるなんてのも、あからさまに変だ。

「仲間の『武器』だ。通称『キルドーザー・ディマトリア』。ところで、ヤツは……佐伯は生きてるか?」

「無事みたい……」

 瀾ちゃんは鞄の中からモバイルPC用の小型モニタを取り出し、眼鏡型端末と繋ぐ。

「今、レコンキスタのSUVに乗っています。レコンキスタのレンジャー隊と、一般人1名と水天(ヴァルナ)の力の後継者と一緒です。こちらのドローンが撮影した映像を送って下さい。我々の身の安全を図る為、レコンキスタにも見せます」

『了解した』

 小型モニタのスピーカーから、明らかに何かの処理を行なったらしい声がする。

『まず、JR久留米駅西口だ』

 モニタには瓦礫の中に居る黒い革ジャンの女性を上から撮影した映像。……瀾ちゃん達が「佐伯漣」と呼んでいる「もう1人の巫女」だ。そして、「佐伯漣」はJR久留米駅の方に向って歩いていく。

「何を……するつもりだ……?」

 画面を観た桜姉さんがそう言った。

「ヤツなら1人で、東口に居る奴らを全滅させられます」

『続いて東口だ』

 映像が切り替わる。

 まずは、何十人……と言うべきか何十匹と言うべきか……ともかくゾロゾロ居る「あるモノたち」を背後上空から撮影した映像。

「河童?」

「それと、河童達の前の方に居る白くてバカデカいのは何だ?」

 そして、河童達を護るように、白い……河童が大人の男の平均身長だとするなら、2・5mは有りそうな大型の「ナニか」が一〇体弱。

『伝聞と推測混りでOKなら……知っている。昔、「河童」の元になった種族を再生させようとした馬鹿が居てな……その実験の失敗作どもだ』

 モニタのスピーカーから再び声がした。

「はぁ?」

『しかし、再生実験の前提になった仮説に間違いが有ったみたいで、出来たのは……高速治癒能力ととんでもない身体能力は有るが、知能も低くて寿命も短かい……あの哀れな連中だった。そして、奴らを作った組織は、奴らを兵隊として使うようになった』

「その組織って、どこだ?」

『安徳ホールディングス』

「何だって? いや、そこ……」

『そうだ。ここ二〇年で大きくなった久留米の企業グループ「安徳ホールディングス」の前身は特異能力者を中心にした暴力団で、その創業者の一族は……久留米のS神宮を作った者達と共に久留米にやって来た「水妖」……俗に言う「河童」の末裔だ』

「無茶苦茶だ」

「あと、河童達に混ってる普通の人間に見える連中は?」

『1人だけ図体がデカいポニテの中年男は、多分、久米銀河。安徳ホールディングスの子会社の安徳セキュリティの幹部だ。安徳グループの中では外様(とざま)だが、かなり厄介だ。能力は獣化能力に高速治癒能力。そして、変身後には全身を覆う体毛の特性を変えられるらしい』

「どう言う事だ?」

『相手が銃撃を加えようとする場合は、銃撃を防ぐのに適したモノに。相手が打撃や刃物で攻撃しようとした場合も、同じように、相手の攻撃を防ぐのに最適なモノに、体毛の物理的特性を変化させる事が出来る。ダメージを与えにくい上に、ダメージを与えてもすぐに傷は治ってしまう。ついでに、変身後の爪や牙は……レコンキスタのレンジャー隊の装備で防ぐのは困難だな』

「おいおい」

『他の「普通の人間に見える奴ら」も何かの特異能力者だろう。次は西口から、やや南だ』

 次に画面に写ったのは……。

「河童だけど、さっきのとは何か違うような……」

 その河童達は、さっきの河童より数が少ないけど、体は大き目に見える。そして、肌には、ダークグリーン地に茶色の虎縞模様が有った。しかも、手には拳銃とか日本刀とか小型の機関銃とかを持っている。

『熊本に居る「水虎」と呼ばれるタイプの河童だ。おそらく、熊本の暴力団「龍虎興業」の関係者だ』

「何が起きてるんだ、一体全体?」

『広島のヤクザの女親分が、子分を引き連れて、九州にやって来た。しかも、九州のヤクザからすれば、何をする気か、さっぱり判らない。九州(こっち)のヤクザとしては、理由は判らんが、広島の同業者が喧嘩を売って来たと解釈するだろうな……』

「どうしろってんだよ、これ……」

『一つ言えるのは……今起きてるのは、ここ一〇年か二〇年で……九州本土で起きた中でも最大級の騒動だ、って事だけだ』

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