おまじない
お母さん、お父さんへ
友だちにおしえてもらったおまじないをするから少しの間、家にかえりません。
友だちもぼくの家みたいにお父さんとお母さんがけんかしたり、ぼくみたいにたたかれたりしてたんだって…。でもね!おまじないをしたらそんなことがなくなってお母さんとお父さんとなかよくなったんだって。だから、ぼくもお母さんとお父さんがなかよくなってほしいと思ってるんだ。
なかよくなったらゆうえん地に行きたいな。あと、友だちの家ぞくとキャンプに行こうよ。
あとね、友だちが言ってたんだけどね。今すんでる家からちがう家引っこししなくちゃいけないんだって、その新しい家の場所がね―――
―――こんばんは。ニュースジェネラルの時間です。
昨夜、二十三時十四分頃に当時小学三年生だった、大村 勝君(8)を虐待、殺害し死体遺棄した容疑で逮捕していた。父親の大村 哲弥容疑者(29)と母親の大村 汐里容疑者(27)が拘置所で心肺停止の状態で死亡していたのを拘置所の職員が発見しました。
今回の勝君の殺害事件が発覚したのは、今月18日の午前5時31分荒崎市の住宅地付近の林で犬と散歩中の男性(68)が勝君の遺体を発見しました。勝君の遺体には、複数の虐待の跡があり、このことから隣町のみつるぎ市に住んでいた父親の哲弥容疑者と母親の汐里容疑者を22日に警察が虐待と殺害、また死体遺棄の容疑で逮捕しました。
警察の取り調べでは、虐待の容疑については認めておりましたが、殺害と死体遺棄についての容疑を否認しておりました。
本日の夕方に行われた荒崎署での記者会見では、大村容疑者宅を捜査した際に勝君が両親に宛てたと思われる手紙があり、手紙の内容に書かれていた“友だち”という人物が何らかのかたちでこの事件に関わっているとみて友人関係などを洗い直し、今後も捜査を続けていく方針です。
次のニュースです。さきほど――
「お兄ちゃん。どうして泣いてるの?」
「!?何でもないよ。」
はずかしい‼自分より下の子に泣いてるところ見られちゃった。
少年に話しかけたのは、少年より体も身長も少し小さい所々ケガやアザの後がある男の子でした。
「お前こそどうしたんだよ。傷だらけだし、友達とケンカでもしたのか?」
「うぅん……お母さん……とお父さんに…うっ…ヒック……たったたかっ…れ」
「!わかった。しゃべらなくてもいいよ。」
「うっうん。」
少年は、男の子の側へと近づき泣き止むまで背中を撫でながら待ちました。
(この子もぼくと同じなんだ)
少年は、男の子がなんでケガがあるのか分かってしまいました。少年の家も同じだからです。
二年前のある日。少年が学校から帰ってくるといつもは夜遅くに帰ってくるはずの父親が帰ってきていました。
「お父さん?!めずらしいね。もう帰ってきてたの?」
少年の問には答えず、ただダイニングテーブルの上に置いてある紙を凝視していました。少年は、もう一度父親に声をかけながら側に寄って行きましたが、父親はこちらを見ませんでした。
父親の横に寄り少年はもう一度声をかけながら袖を引きました。ビクッと体を震わせゆっくりと首を少年に向けました。少年は驚きました。なぜなら、声を出さずに泣いていたからです。
お父さんと再び声をかけると父親は、少年にギュッと声を震わせながら抱きつきました。こんな父親の姿を見るのは初めてでした。
少年は、父親が見ていたダイニングテーブルにある紙が気になり見てみるとそれは…母親の名前が書かれた離婚届でした。
それから父親は変わってしまいました。酒を飲む回数が多くなり怒鳴ったり何かから気を晴らすかのように少年や物に当たり散らすようになりました。
普段なら少年はこの時間帯には家にいるのですが、いつも通りに学校から家に帰ってきてリビングに入ったら床にはビールや酎ハイの空き缶が転がっており、テーブルで缶ビールを飲んでいる父親がいました。
「ただいま。父さん」
「あぁん…お前、帰って来たのか…お前も俺を笑いに帰ってきたのか‼」
「なっ……何言ってるんだよ、父さん」
「お前もあいつらから聞いたんだろ!俺が役立たずだから会社からクビにされたんだってなぁぁあ‼」
「そっそんなの知らないよ‼」
「嘘をつくな‼‼お前もあの女みたいに役立たずの俺を捨ててどっかに行っちまいたいんだろ‼」
「そっそんな」
「俺の前から消えろ!!!!」
父親は、怒りのままに手に持っていた缶ビールを少年に向けて投げた。ぶつけられる前に少年は急いで踵を返し廊下を抜け玄関扉を開け、家を出たとたん走った。
走って 走って 走って 走って
そして、気がついたらいつも来ていた公園のブランコに座っていました。
“俺の前から消えろ!!!!”
どんなに酒を飲んでいてもどんなに僕や物に当たり散らして怒鳴っていても今まで口からだされなかった言葉でした。
“お前もあの女みたいに役立たずの俺を捨ててどっかに”
少年は知っていました。寝言で父さんが母親の名前を呟いていたこと、離婚した今でも母さんのこと好きでいることを。
なのに…なのに…なんで、どうしてなの父さん。もう、ぼくはいらないの………
会いたい…会いたいよ、母さん…どこにいるの。どうしてあの時、ぼくと父さんをおいていったの……
少年の眼からは、少しづつ涙が溢れてきました。しばらく泣き続けて、そろそろ家に帰ろうとしたときに突然この男の子に声を掛けられたのでした。
「お兄ちゃん、ありがとう」
「気にしなくていいよ」
「泣いちゃったのは。前のことを思い出したから」
「前のこと?今は、されてないのか?」
「うん!友だちから教えてもらったおまじないをしたらお母さんもお父さんも仲良くなったんだよ」
「へぇ、そうなのか……よかったな」
「うん!…お兄ちゃんも教えてほしい?」
「えっ?おまじない、をか?」
おまじないなんて効くわけがない。サンタにだって、七夕の日に願いを書いたって、神社の神様にお願いしたって…。お母さんは帰って来なかったし、ぼくとお父さんは幸せになってないのに。
少年は、少年が知る限りのものに願いましたが、現実は少年の願いを叶えませんでした
「うん!ぜっっったいに仲良くなるよ」
「……じゃあ、お兄ちゃんにおまじないを教えてくれるか?」
しかし、男の子の笑顔を見るともしかしたら母さんが帰ってきて、また前みたいに家族三人で幸せに暮らせるかもと男の子のおまじないに少し、ほんの少し期待をしました。
最後だ、これで最後にしよう。もう…何かに期待するのは。
「いいよ!じゃぁ、お兄ちゃんのおうちに行こう‼」
「?家の人には遅くなるって言いに行かなくていいのか」
チラッと公園の時計台を見ると短針の針が6の数字を指していたので男の子の両親が心配するんじゃないかなと男の子に聞きました。
「う〜ん。じゃあ、お兄ちゃん家の電話で家に電話する」
「えっお前の家ってこの辺じゃないのか?」
「うんっ。ちょっと遠い所だから」
「そうなのか…じゃぁ、僕のうちに行って家に電話してからおまじないを教えてくれよ」
「うん…お兄ちゃん、手ぇつないでもいい?」
「うん。いいよ」
男の子はやったーと両手を上げて笑い言いました。
少年は、弟がいたらこんな感じかなと心が温かい気持ちになりながら男の子と手をつなぎ、歩みを合わせて父親のいる家へと向かいました。
少年は見ていませんでした。横で男の子が嗤っていたことに
少年は不思議に思いませんでした。男の子が突然少年の目の前に現れたことに
少年は気づきませんでした。男の子の足元に“影”が無いことに
そして、二人のことを見ていた何かがいたことに
“男の子”はうれしいと嗤いました。友だちが増えると
“ “は悲しいとわらいました。家族が増えると
「そう言えば、名前言ってなかったよね。僕の名前は、秋森 光多。大南一小の五年生だよ。」
「ぼくはね、華盛ニ小三年生の
大村 勝だよ
あらすじの方でも少し書きましたが。数年前に内容は少し違いますが、一度投稿したことがあります。何の報告も出さずに突然消してしまいまして申し訳ありませんでした。
もし、以前見てくれた方がいましたら、もう一度見て下さりありがとうございます。