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第1、拾い物で異世界へ

「あーあ、もったいない

売れば金になるのに…」

そう言って目の前に落ちているゴミかごに入ってる本の束を拾う

青年は中身を確認すると漫画の新刊がいくらか入ってる。

寮で暮らしている青年(鳴海)は燃えるゴミをゴミ捨て場に

捨て終わりその場所にある籠をひとつずつ見ている最中だった。

鳴海が暮らしている寮には共用のゴミ捨て広場が寮内にある。

鳴海はたまにゴミ捨て広場から本やおもちゃを拾っては

リサイクルショップに売って金を工面したり、

気に入った本は部屋に持ち帰り読んだりもしていた。

鳴海は本束を持ち、寮1階にある自分の部屋へ戻る。

寮は6階建ての1フロア20部屋ある建物で

部屋は押し入れ有りの4畳半、1畳分くらいのベランダがある。

自室に戻った鳴海は本束の中身を確認していく。

10冊ほどの本にはホラー系やサスペンス、SF物が

入り雑じっており一冊ずつ読んでいく。

連続していく漫画達を読んでいく中で

表紙と中身が違う本が一冊混じっていた。

(なんだこれ?漫画だと思ったら違う本が入ってる)

鳴海は不思議そうに中身を確認するとよくある異世界物語の

冒険譚が描かれている。

異世界召喚された主人公が神様からスキルを受け取り、

活躍していく内容だった。

「よくある異世界系だな…

こういう物語の主人公って最強系の魔法やスキル、才能を

持ってるから最弱魔法とか使わないんだよな…」

(最弱魔法やスキルでも使用方法によっては最高になるのにな)

鳴海はそう思いながら本を読み進める。

(・・・ん?なんかおかしいな?)

鳴海が本を読み進めていると

勇者やヒロインがいっばい出てきては活躍している。

当たり前の展開なのだが約1㎝の厚さの割には

キャラが多すぎるし勇者、ヒロインが冒険を終えるまでや

その他の勇者の物語も多数描かれている。

読んでも読んでも最後のページまで読み終わらない。

残り3ページまで読んでもいつの間にか最初のほうに

戻っている。

「なんだこれ?なんか分厚い雑誌を読んでる気がしてくる」

鳴海はもしかしたら読み終えて違う本を持っているかもと

思い、持っている本から手を離した。

離した本を確認してもやっぱり他の漫画と同じ厚さの物で

カバーは先ほどと同じ物だ。

「これは興味が沸くけど

元のゴミ捨て場に捨ててこよう」

鳴海は不思議な本を手に取り自室の部屋から出ようとドアノブに

手をかける。

手をかけた途端に部屋の電気が消え真っ暗になる。

「停電かな?まぁ、この寮は4部屋に対して1つの電源で

まかなってるからどこかの部屋で電気使いすぎたんだろうな」

鳴海はたまに起こる事だから気にしても問題ないと思い、

扉を開けた。

「あれ?」

扉を開けるといつもの見慣れた廊下ではなく白い部屋で

一人の眼鏡をかけたサラリーマン風の若い男が

山積みの書類の中でデスクワークしていた。

鳴海は自室から出てきたよな?と思い後ろを向いた。

後ろには真っ暗な自室が有り他に変わった様子はない。

鳴海は一度扉を閉めて今起こった事を考える。

(扉を開けたら白い部屋?漫画の読みすぎだな…)

鳴海は今一度扉を開ける。

扉を開けても先程と同じ光景が目の前にあった。

(夢でもみてんのかな?それとも頭がおかしくなったか?)

鳴海は色々と考えてると

デスクワークをしていた男は鳴海に気づき声をかける。

「時間が無いから扉を閉めてくれるかな?」

「あ、はい!」

鳴海は男の言われるまま扉を閉めた。

扉を閉めた途端に扉が消える。

「なんだこれ!?」

鳴海は扉が消えた事に驚く。

「驚いてるところ悪いけど

扉を閉めたならこっちに来てもらえるかな?」

デスクの男が仕事をしながら鳴海に言葉を発する。

鳴海は動揺しながらも真っ直ぐデスクの男に近づく。

デスクの男は鳴海が近くに来たことを確認すると

指をパチンと鳴らした。

鳴海の後ろにはなかったはずの椅子が置かれている。

「どうしたのかな?立ってるのもダルいと思うから

椅子を用意したけど座らない?」

鳴海は頭の中がパニックになりながらも男の言われるまま

椅子に座る。

(これって魔法か何かか?)

鳴海が椅子に座るのを確認するとデスクの男は立ち上がり

興奮した様子で鳴海に近づき鳴海の手を握った。

「よく拾ってくれた!!そっちの世界に落とした本を

君のような人が拾ってくれてありがとう!」

デスクの男は満面の笑みで話す。

鳴海は笑顔の男を見て唐突過ぎて驚きながらも笑顔を作る。

「えっと・・・色々気になる事がありますけど

まずはあなたは誰でここはどこですか?」

鳴海の言葉にデスクの男は我に戻り鳴海の手を離す。

「申し訳ない、興奮し過ぎてしまった

私は神界社 別界派遣担当のハジメと申します。

そしてここは私の仕事部屋です

いやー私の初めての人が貴方のような人で良かった」

(神界社 別界派遣担当?仕事部屋?)

鳴海はハジメの聞いた事の無い言葉に混乱した。

「混乱していると思いますから

簡単に言いますと貴方は異世界に行ける

チャンスが与えられました

貴方が拾った本は応募券みたいな物で

本が見える人は限られています

そして本を拾って中の冒険譚を見れる方は貴方の世界で

例えると宝くじ一等を10回連続で当てるより低いものです!!」

(宝くじで例えられても わからんわ!)

鳴海は心の中でツッコミをいれながらもデスクの男は

熱心に話を進める。

「お試し期間として貴方の世界で一年間

異世界に行くことが出来ます

また、転移する前に必要なスキルを得る事が出来て

色々な経験を積むことで貴方のステータスも上がります

そして・・・」

「ちょっと待って!

話が唐突過ぎて内容が飲み込め無いし

色々な経験を積むことでステータス上がるのは当たり前な

気がするんだけど…」

ハジメの話を遮る様に鳴海は言葉を発する。

「いやいや、悪どい担当者や選ぶ別界、

最初の選ぶ転移場所によっては

ステータスなんて上がらずに

死亡するケースなんてありますよ

お試し期間、スキルなんて与えずそのまま別界へ転移

または魔物がたくさんいる場所の真ん中に

転移させられる人、無理矢理勇者に仕立てる担当者

なんてする人がいるくらいですから

私はまだ良心的だと思いますよ」

(なんかえげつないな…ブラック企業かよ…)

「だから貴方が望むスキルや場所、別界を選ぶ事も出来れば

このチャンスを棒に降り元の生活に戻る事も出来ます」

(異世界に行くことをなかった事に出来るのか…

まぁ、元の生活に戻ってもな…)

鳴海は現状の生活に若干憂いてはいた。

仕事先の人間関係、変わらない毎日等色々なことに

変化を求めていた自分がいる事は自分が分かっている。

変化を求めて動いても疎まれたり、

理不尽なことや不条理なことが多々与えられて

世界に社会に現実にがっかりした事もあった。

(お試し期間があるなら旅行気分で楽しめるかもしれないし

戻った時に世界が変化していて居場所を見つける事が

出来るかしれない)

「ハジメさんでしたっけ?

お試し期間での異世界行きたいです!!」

鳴海は決心しハジメに異世界に行きたい事を伝える。

鳴海の言葉にハジメは凄く嬉しそうにガッツポーズをする。

「ありがとうございます‼

では色々細かい所がございますので積めていきましょう!!

お試し期間を経てからまたお試し期間を行う事も可能なので

その度に更新する形式にしましょうか

あと別界に対する知識等も得る必要があると思いますので

そこら辺も話をしていきましょう!!」

そうハジメが言い、鳴海は話を進めることにした。

~ハジメの仕事部屋にて数日後~

「色々細かい所まで話し合いが出来て良かったです!!

まぁ、時間を掛けすぎてしまいましたけど…」

「大丈夫ですよ‼この部屋での時間がこちらの世界の

時間軸が違うおかげで捗りましたし

ハジメさんが用意した寝室やハジメさんの料理も美味くて

良かったですよ‼」

鳴海はハジメが異世界担当者で良かったと心から喜んでいた。

「では、今から鳴海さんを決めた別界への転移準備しますので

分からない事があればステータス画面のヘルプを押せば

話し合って決めた内容が書かれてるのでそちらを

ご覧下さい

私も多忙の身なので中々連絡が取れない時がありますが

ヘルプの中にある「連絡」を押してもらえば出来る限り

出ますのでよろしくお願いいたします

でもあのスキルで本当に良かったのですか?」

「問題ないですよ‼異世界行くとしたらこれだ!と

思っていたスキルがあったので良かったです!」

「わかりました!それでは準備が整いましたので

転移を行います

鳴海さんの別界でのご健康・ご活躍を心から願っております」

そう言って鳴海の後ろには扉が発生し

ハジメは深々と礼をした。

「それでは行ってきます‼」

鳴海がそう言って手を降り扉を開けて異世界へ転移した。

鳴海は扉を出てから目の前にある草原を見て

自分が異世界へ来たことを実感した。

「さぁ、観光始めるか!!」

そう言って鳴海は別界を歩き出す。

その頃ハジメは顔を上げてデスクワークを始める。

鳴海との数日間の出来事を思い出しながら

にんまりしたりして次の人を何十年、何百年も待ちながら

デスクワークに励んだ。

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