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感想を聞かせてよ、捨てた現実世界に花が咲き始めた状況の!(リメイク版)  作者: カラーコーン人間
第8章、ヲタクは2次元も3次元も愛することが可能である
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81ゲーム、ゲームの世界で組織を形成しても、抜けることにそこまで大きなデメリットを感じないので皆自由奔放である

「久しぶりねグラファイト、会いたかったわ」


グラファイトの声を聞いた途端、カスキが真っ先にマイクに声を入れて返事する。


「相変わらずその口調……」

「ごめんね、『いつもの』は今ここでは難しいかな……」

「別に今はどうでも良いよ。本題に入ろう」


グラファイト、褐色肌とそれに合う紫の長髪を特徴とした女アバターで、Lapinと同じ燕尾服をしているのだがバニー耳もその服もしておらず、黒ネクタイに白カッターに黒ズボンというスーツの姿をしている。背中には刀、そして先ほどから聞こえる声は、大人の男性である。


「まずみんなのために優しく事前情報を伝えると、俺はこのうさぎ座ギルド結成当時からいたプレイヤーだ。さらに言うと、それよりもっと前のLapinとも面識がある。あぁ、別にその時のLapinを明かすために言ってるわけじゃないことだけは理解しておいてくれ」


前置きが長い、しかしカスキにとっては決して無視できる内容ではなかった。Lapinという姿は半分アイドルという存在で扱われているところがある。だから中身が男である事実も相まって『自分がLapinを扱って良いのか?』と考え過ぎてしまうことがある。


それでも女アバターで使いたいのがヲタク、ゲームの醍醐味のようなものでもあり、みんなやってるんだからという状況に便乗している部分もある。


そんな複雑なカスキの心境に触れるようなことがこれから起きるのかと、カスキは内心ヒリヒリしていたが、早々に否定してくれたので安心した。しかし、まだ安心はできない。


「何が言いたいかというと、俺がこのギルドに入った理由は2つある。もちろん1つはLapinと仲良しだから、だが2つ目がある意味でかい。それはこのギルドがフリーなところだ。俺は俺でリアルのことがある。そんなに頻度良く『ゲームの世界』に来れねぇ。だけど無理に高みを目指すことなく来たる時に備えて出撃する、その程度のスパイスが、つまり今のままが良かったんだ。だがこれからのこのギルドの方針はそれに反している、ってことで良いんだよな?」

「一概にそうと言えないわ。これから定期的にギルドの親睦会や強化訓練みたいなことをしようと思ってる。でも強制をするつもりはないわ。だから不参加なのもこのギルドを抜けることも、仕方ないと思ってるわ」

「そう簡単に抜けたくないから抗議してるんだよ。別に上位志向になることは否定しねぇけど、それはギルドの方針をも巻き込むほどなのか? 去年みたいに来たるギルドバトルの時だけ本気で招集するくらいで良いんじゃないのか?」

「グラファイトは優しいね、上位志向になることは言及しないんだ」

「別にゲーマーが上を目指すことに理由なんてないだろ、聞くだけ野暮だ。だけどそれは人それぞれ違うってことだけは分かって欲しい。たとえば高校だ大学だの受験のために1年前から勉強漬けになるのが当たり前みたいな感じになってるが、人によって3年も前からってのもあるし、中には数ヶ月程度で良いってやつもいるよな? そんな感じだ、無理に1位を取らないとってほどスパルタな目標でないのなら、ギルドの方針を変えることまでしないでほしい。それが俺の意見だ」

「なるほど、グラファイトの言いたいこと、僕には理解できたよ。別に僕らギルドの長側が強制せずそれでも参加可能な人だけ集まって訓練しようって方針にしたって、それはそれで疎外感があるから嫌だもんね」

「そういうことだ」


グラファイトの真の意図を理解できたジョイ、もといラク。それを聞いてカスキたちも理解をしていたが、


「異議ありだわ! そんな自分勝手が許されると思ってるの!?」


ここで割り込んできたのはシュヴァルツだ。


「別に自分可愛さで言ったつもりはない。俺以外にも、このギルドが無理に上を目指すことのない平穏でアットホームな感じで気に入ってるから、異議を唱えてるだけだ。そもそも設立当初から決めた方針ってのは、そう易々と変えて良いもんじゃない」

「そうだね、なあなあで作ったみたいな仲良しこよしのギルドから始まった感じだもの。逆にそれで18位なのが不思議なくらい。だからみんなには感謝してるし、方針を変えるのを嫌がってるグラファイトたちの意見もちゃんと向き合うつもり」

「こんな平穏を望むような弱い者の声をいちいち聞いてたら、ギルドはまとまりませんよ!?」

「それは違うよシュヴァルツ、今は君たち『スタンピング』が一番の貢献者であるけど、もっと前から『カラージェイド』のパーティーにはお世話になってるわ。しかもグラファイトはTOP100入りだもの、えっと今は何位だっけ?」

「元TOP100なだけだ。最高で77位、今は111位だけどな」

「リアルが忙しいんだから仕方ないよね、でも去年のギルドバトルではとても助かったわ」

「……そんなすごい人なんだ」

「別に副リーダーだ幹部だと名乗るつもりもないが、意見を言ってもいいくらいの地位にはいるだろ? 俺は」

「そ、そうですね……。今の私より全然実力がありますものね。でも、じゃあ何でもっと高みを目指そうとか、もっと貢献しようとか思わないんですか!?」

「ゲーマーが上を目指すのに理由なんていらないなら、上を目指さない理由もいらないと思うが?」

「でも意見するならそれなりに納得できる理由を言って……」

「くどいぞ!!」

「……っ!?」


耳が痛くなるほど大きな声で叫んだグラファイト、それにみんなが声を出せずにいる。


(ま、まずいよカスキくん……。このまま続けたら……)

(ラク、2人をチャットから強制退去させろ)

(リョウくん……、うん!)


小さな声で作業するラクたち、そしてこれ以上荒れて取り返しのつかないことにないよう、シュヴァルツとグラファイトをチャットから外した。


「2人には一旦落ち着いてもらうためチャットから抜けてもらいました。今の議題を無視するわけにはいかないですけど、2人に時間をかけすぎるわけにはいかないのでこのまま他の方にも意見を聞きたいと思います。意見したいという方~」


しかし、あの衝突があって次に意見したいという者は出てこなかった。それはそれで重いプレッシャーがのしかかることになって前に出るのは辛いだろう。


だからもうこれ以上この場で生産的な意見が出るとは思わないということになり、早いが生配信を終えるはめになってしまった。


余談だが、この配信はアーカイブとして残るのでこの後も動画が残り続けるのだが、短い配信のわりには意外と再生数も低くなく、コメント欄も多いほうだった。皮肉にも2人の口喧嘩が良くも悪くも着火剤となり、人の喧嘩を楽しむ野次馬がこの動画に集まった。コメントには、


『うさぎ座ギルド解散の危機か!?』『幹部でもないやつらの対立だろ? そんな大ごとじゃねぇし』『これがE-ZONES同士の喧嘩じゃなくて良かったね~』『ていうかE-ZONESのみんなが新たな方針に賛成なのか?』『グラファイト自分勝手で乙』『くどいシュヴァルツも悪いだろ(笑)』『でも俺はグラファイトの味方だなぁ』『ていうか良いところでチャット外すなよE-ZONES(笑)』『喧嘩いいぞもっとやれ』『E-ZONESもエンターテイナーならこのまま喧嘩を止めないほうが良いのに』『そんなだから登録者数少ないんだよ(笑)』『1日で1万円稼ぐ方法あるの知ってる? 詳しくはチャンネル登録してね!』『いやここでチャットから外すE-ZONESは大人としてすごく良い判断。高校生って噂あったけどもし本当なら中身大人で尊敬する』『じゃあ大人の喧嘩に子どもが止めたってこと?(笑) バカじゃん』『別にそれはリアルでもあることでしょ』『あーやだやだ、これだからゲームは。大人まで子どもに逆転する』『じゃあここにコメントするお前も同類だな』『絶対に続きを読むを押すなよ?』


等々過去に見ない多種多様なコメント欄で埋め尽くされている。だがこれはしばらく先の未来の話、配信を終えたばかりの彼らは、


「……ばっかみてぇ。良い大人が、その喧嘩を何で俺ら高校生がとめなきゃいけねぇんだよ」

「ゲームの世界に高校も大人もねぇよ。でも最悪な展開にならなくて済んだな」

「まだな、でござるよ……」

「ちょっと休憩してから、2人のフォローに行こうぜ……」

「そうだね……」


対応に追われて一気にダウンした4人であった。そして気持ちを切り替えて、4人は2人それぞれと話し合った。


まずはグラファイトを誘ってチャットに参加させる。


「さっきはすまなかった、冷静になれなかった……」

「むしろ冷静なほうだったじゃん最初は。俺のことも怒ってるんだろ?」

「怒ってない、といえば嘘になるな。だけど不覚だ……、高校生に喧嘩を止めてもらうなんて……」

「あれ、この人って僕たちが高校生って知ってるの?」

「あぁ、それどころか俺がLapinとして演じる前の口調も知ってる仲さ」

「へぇそうなんだ……」

「なあグラファイト、お前はゲーマーが上を目指すのに理由なんていらないって言ってくれただろ? 配信が終わってから少し考えたんだ。俺がこのギルドをもっと上に行かせたい理由が明確に言えることは2つあるんだ」

「わざわざ考えたのか。で、何だ?」

「1つは俺が、というよりLapinがソロで5位になって、この前の百人組手やふたご座ギルド戦のおかげでもあるけど上位のギルドマスターと前以上に仲良くやれてんだ。でもギルドのランキングが18位っていうのは……、ちょっとだけ不甲斐ない要素なんだ。だからあいつらと肩を並べるようになりたくて、ギルドのランキングも上げたいと思ったんだ」

「言いたいことは分かるが、それでも結局は自分のためだな。お前が自分のためであることを否定する気はないが、理由が自分のためであるのなら俺も理由を自分のためで通すぞ?」

「別に説得するつもりで言ったわけじゃないんだけど……、じゃあこれも良い理由にはならないかな」

「聞くだけ聞いてやるよ、2つ目の理由は?」

「Lapinのためだよ」

「は? Lapinのためって……?」

「グラファイトには、というかみんなに理解してもらえるものじゃないと思うんだけど……、俺はLapinじゃないっていうか、俺とLapinは別もので切り離してるんだ」

「……要はあれだろ? 俺の場合、俺と『グラファイト』は別ものって、そう言いたいんだろ?」

「そうだよ、正確にはもっと複雑な感じなんだけど」

「お前にとって『Lapin』は、自分のもう1つの顔じゃないと?」

「そうだね」

「それが……、お前が口調を変えてる理由か」

「そうだよ、前から気にしてたもんな。別に良いんだよ、女のアバターで男の声でも全然、みんなやってることだから。でも俺は違ったんだ、みんながやってることをしたくないとか、女なら全て女で徹しろよとかそういう綺麗事じゃなくてさ、Lapinは別だって思ったんだよ。Lapinを俺色に染めてはいけないって思った。そしてLapinの力はこんなものじゃない。絶対に上にいける存在だって思ったんだ。だからLapinに見せてあげたいんだ、ソロで1位の姿も、長に君臨するこのギルドでも1位になる景色も……」

「それは……、そこまで来ると立派に『他』だな。お前のLapinは」


だが、カスキが『他』を理由にしたところでグラファイトを説得できたものではなかった。正直1番はグラファイトを説得することだ、だがもう1つ大事なことがある。たとえここでグラファイトを説得できても、目に見えてる喧嘩を止めるのも役目である以上、シュヴァルツも話し合っておかないといけない。


「先ほどはすみませんでした、高校生に喧嘩を止めてもらうなんて……」

「いえ別に……」

「デジャヴやな」

「2人とも最初に罪悪感あるのがそれとは……、ですわ」

「あのグラファイトってプレイヤーは前からああなんですか?」

「まあそうだな、変わらず冷静沈着というか、いざって時は熱さを見せる人っていうか……」

「そうですか……」

「シュヴァルツさんも、無理にグラファイトに噛みつこうとしないで。私たちがギルドの方針を180度変えてしまったことが悪いんだから、ギルドは会社みたいなもので、社風とか目標が前より大幅に違うようなことをしたらああなるのも当然だよ。他を巻き込むってそういうことだから……」

「それは……、否定できませんけど。でも上位志向であることの何が悪いんですか!? グラファイトはただサボってるというか……、やる気がないのが問題なんじゃないですか!?」

「そのやる気が本当に問題だとは思いませんわ」

「ハーミー?」

「世の中にはやる気があっても実力が伴わないことも、その逆が起こることもありますわ。グラファイトさんはちゃんとやる気自体はありますわ。シュヴァルツさんとグラファイトさんの本当の食い違いは、やる気や貢献度を表に出す時の質と量の違いだと私は思いますわ」

「えっとそれって……?」

「たとえばヲタクの聖地である秋葉原に、近いから毎日のように訪れてるヲタクがいるとしますわ。特定の店にも通って、でもお金がそこまでないから毎回買うとすれば300円のガチャガチャ1回だけ。対して秋葉原が遠くて月に1回しか来れないヲタクが、お小遣いを存分に使って色んなグッズを買う。結果として1番秋葉原を潤わせているのは後者の場合だったりしますわ。もちろん前者も全く貢献していないというわけではありませんが……」

「な、なるほど……」

「勘違いしないでほしいのが、シュヴァルツさんはこのたとえだと前者側だろうけど、決して薄っぺらいと言うつもりはないよ。ただシュヴァルツのような、普段は集まりが悪くても本番で最高の戦力になってくれるのは間違いないから期待してる。そういう実力者だからこそ持てる特権なんだろうけど、別に普段の付き合いが悪くたって私たちはそれを咎めるつもりはないわ。何せグラファイトは言いたくなかったんだろうけど、リアルのほうが忙しいから」

「何ならあいつ、Lapinを実力でも頻度でも嫉妬してたもんな。若いもんは時間あって良いなぁって」

「リアルを……、持ち込まれたら何も言えませんよ」

「そう、だからあいつは理由を言わなかった。何せこの理由で1番納得がいってないのはあいつ自身さ」

「グラファイトさんのことは分かりました。でも言ってましたよね? 集まりに参加することは強制じゃないにしろ、疎外感を持つから方針を変えるのをやめてほしいって」

「正確にはそれを言い当てたのはうちのジョイやけども」

「疎外さを感じるとかそういうのは個人の主張で、それで否定するのはやっぱり自分勝手だと思います……」

「そこは……、私たちには反論する資格がないわ。何せ先に自分勝手なことをしてるのが私たちだから。自分勝手に方針を変えようとするから、グラファイトも自分なりの主張を押し通したい、それに反論なんて少なくても私たちには言えない」

「じゃあ私は私で主張します……! 自分勝手なことを言わないでと私が自分のために主張を……」

「その理屈やと俺らのギルド方針改正を否定することになんで?」

「あっ……!」


かなり恥ずかしい発言をしてしまうシュヴァルツだった。


結果として両者を改心させるようなことなんか言えず、説得は見事に失敗した。話していくうちに何かしら進んでいると錯覚しているが、振り出しに戻ったような余計に拗らせたようなわけが分からなくなっている状態だった。


「というか喧嘩の介入なんて初めてやったわ……」

「このままだとうちのギルドは2つの派閥に分かれてしまうね……」

「それもそれで悪くなく思えるでござるが、圧倒的にバチバチと対立している状況は見過ごせないでござる」

「ギルド内で順位を出して競おうってつもりじゃない限り、変な派閥を作らせるのはまずいに決まってるよな」

「そうなると、むしろ分かりやすく順位でも作っちゃう?」

「何もない状態からランク付けするなら別に悪い気はしないけど……、きっかけがこれで、だからランク付けしましょうって移るのは良くない」

「確かにそうでござるな……」

「あ~あ、どうしてゲームの世界なのにリアルのようなことが起こんだか……、これだから現実はクソなんだ」

「……今何と言ったでござるかカスキ殿?」

「え? これだから現実はクソなんだ」

「違うでござるその前!」

「何お約束やってんだよ……、ゲームの世界なのに何でリアルのようなことが起きるんやって」

「ゲーム……、リアル……、それでござるよ!」

「それって……、何がだよ」

「ゲームの世界でもリアルなことが起こってしまうのなら、ゲームのことはゲームで解決するのが1番でござる!!」


ここでスミからの作戦会議が始まる。


「なるほど、むしろ主張は実力で、ゲームの腕で示せってやつだな。このくらい世界が単純であったらなぁ」

「確かにこれなら、どの結果になろうともみんな納得できるだけの実績になるな」

「意外と異論がなくて助かったでござるよ……。正直我の欲求バリバリなんでござるよ……」

「それに関しては、僕はこの前の責任もあるから、むしろ協力したいよ!」

「かたじけないでござる、では実行はどうするでござるか?」

「いや、これは時間をかけて行こう。みんなを巻き込むのなら事前に発表をするだけしておいて、こっちのチームはちゃんと作戦会議を……」

「あれ、これ意外と長期的な内容なんか」

「そうだね。その間ギルド内の空気はピリつくだろうけど、これ以上の最善な行動は思いつかないよ」

「じゃあ、明日からやっていくでござるか」

「そうだな。ここからは配信なんかしない、そもそもギルドの方針なんだからあまり世間に見せるものじゃなかった。ちゃんと俺たちギルド内で決着をつけよう!」

「あぁ!」「そうでござるな!」「うんっ!」

「じゃあやるぞ! E-ZONES、」

「「「「GO!!」」」」

【プチメモ】


グラファイトも、シュヴァルツも、両方『黒』という意味らしいです。白いLapinの影響を受けてますね。

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