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感想を聞かせてよ、捨てた現実世界に花が咲き始めた状況の!(リメイク版)  作者: カラーコーン人間
第7章、『面白い』能力を持つ人間は、必ずしも不平等ではない。男でも女でも持っているものだ!
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61ゲーム、『御技の申し子』フレイバVS『月夜の遊戯兎』Lapin②

時間は少し前に遡り、フレイバの対戦相手が出てくる出入口の奥であることが起こっていた。


「いやぁ何だかんだでフレイバと戦うのは初めてだなぁ! 喰殺者プレデターの力を見せてやるか……」

「いいやキリ、悪いけどその順番、代わってもらうわよ?」

「Lapin!? え……?」

「お願いしたのよ、フレイバが49敗した瞬間に、私が終止符を打つってことを」

「うわ本当だ、報せが来てる! ……っていうか、まじかよそんなの。師匠がやることかよ」

「他人には分からんさ、これも師弟愛の1つってものよ。キリもそのうち、弟子ができたら分かると思うわよ」

「ふぅん……、何だか随分と遠くへ行ったような感じだぜ。フレヒカと3人で戦い合って、去年の夏で実際に会って、それっきりお前はどんどん高みを目指していくんだよなぁ……」

「キリもフレヒカも、100位を行ったり来たりで大丈夫なの? もっと頑張んなさいよ! それじゃあ行ってくるね!」


そうして、Lapinが入場を始める。


「全くお気楽なやつだ……、そう簡単に強くなるわけにはいかないから苦労してるんじゃないか」


双小剣を持ちウサギのポーズをするLapin、光の両手剣を持ち上段の構えをするフレイバ。お互いが散らすその火花の熱が、観客まで伝わりそうだった。


「……そ、それでは、試合っっっ、スタートぉぉぉ!!」

「……っ!!」

「光剣奥義、十一ノ技!! 『天照大御神アマテラス』!!」


Lapinがダッシュするよりも速く、フレイバが大技を披露した。両手剣の十一ノ技は剣を大きくするタイプ、近づいてきたのでよりこの距離からでは避けるのが難しいはず……、しかし斬った先にLapinはいなかった。


「危なかった……、何て言うと思う? そう来ると読んでいれば、ダッシュを少しだけしたら『エアバウンド』で空中へ逃げられたわ」


双小剣を構え、ウサギのポーズをしていればダッシュをしてくる。今までのLapinはだいだいそういう動きをしていた。そこへ真正面から斬りかかる動きをしたフレイバ、そしてそれがブラフだったため何食わぬ顔をして避けられ、空中に浮遊している。


「さすがですねLapin、でも忘れたんですか? この大剣ならその距離も届きますし、これはもう一度振ることができるってことを……!」


その大きな剣を、鈍い動きながらも振り払う。そしてフレイバの言う通り、その切っ先はLapinが浮遊している場所にも届いた。


そしてもちろんその攻撃すらも、Lapinは避ける。避けるといってもその避け方は、浮遊スキルを解除して落ちることで避けただけに過ぎない。


「効率の良い、避けるとは違う避け方を見せてあげるわ」


未だ双小剣のまま、フレイバのところへ近づく。


「ま、まだまだ……!」


またも振るう、今度は上へ逃げることがないよう少し斜め上へ斬ろうとする。


「スパルダッシュ!!」


Lapinの突進攻撃、しかしその動きはフレイバへ向けてではなく、明後日の方向へ。


しかし結果として、フレイバの大剣が振るう範囲から逃れることができた。


「もうそれは悪手よ、どんどんMPが減っていくじゃないの」


フレイバのその両手剣の十一ノ技は、大剣という形が滞在できそれを振り回せる分、MPがどんどん減っていく仕様になっている。このまま避けられてしまうのなら、続けるのは良くない手である。


そしてLapinの今の『スパルダッシュ』での避け方、実はこれもそこそこ悪手なのである。間合いを詰める避け方や、攻撃モーションが入る前に攻撃して防ぐということなら話は別だが、この突進の後、双小剣で斬りつけるモーションがあるのだ。もちろん別の方向へ突進するわけだから空振り、その動きは蛇足になって下手をすると狙われてしまうことになる。


それでもLapinが行った理由は2つ、1つはフレイバが大剣を振るうからだ。動きが鈍いことを察したLapinは、『スパルダッシュ』なら問題ないと判断したため使ったのだ。


そして2つ目は、この立ち振る舞いをあえてフレイバに見せている。これが最後の教育になるからだ。


「今度はこちらから行くよ」


Lapinの走り、いつも見てきたから分かる、全ステータス半減のためいつもより遅い。それでもそのスピードは今のフレイバより上、だが今までその差を埋めるためにずっとタイミングを覚えてきた。


Lapinの双小剣の攻撃、走るスピードは遅いが剣を振るう速さは関係なくいつも通り、攻撃力も半分だが双小剣は2回アタックのボーナスがついてるため油断できない。必死に両手剣でガードしたり、受け流したり、逆にこちらからも攻めるがそれも避ける、避けるの繰り返し。


「光剣二ノ技、『射光ラディエイト』!!」

「んっ……!」

「まだまだ……、三ノ技、『発光ルミネセンス』!!」


やや大きく後退するLapinを見逃さなかったフレイバは、続いて三ノ技の斬撃を放つ。そしてそれをもLapinは避ける。


「ここっ! 九ノ技、『電光飾イルミネート』!!」


フレイバの追い討ち、離れているが故に技を発してからLapinが避けるこの一瞬を待てるように、攻撃した後の硬直が既に解けていた。少しでもタイミングを合わせられるよう近づき、そして九ノ技を放つ。


ヤーミンも出していた遠隔斬撃、しかも操作可能、タイミングがドンピシャ、当たる可能性は充分に……、


「あぶないっ!」

「よ、避けた……!? しまった、最初の避けはスティック強押し……!」


1戦目のデネブを相手にフレイバが使用した技術、元がLapinの十八番だったため、その技術は本家のほうがより繊麗されていた。


「だ、だったら……」

「もうこのタイミングは遅いよ、私の間合いっ!」


今度はLapinの突進攻撃、しかし『スパルダッシュ』でなくもっと強烈な動き、間違いなくこれは光双六ノ技『流星ヴォライドゥ』だと、フレイバは気づいた。


先にダメージを与えたのはLapin、その事実に観客が盛り上がる。


「ぐっ……! でもまだ……」

「いいや、まだ私のターンよ」


何と2度の六ノ技攻撃、轢かれて倒れる直前の受け身をすることもなくまた轢かれてしまった。


(ど、どうして……!? ま、まさか双小剣って六ノ技の突進も2回行うの!? でも……)


それは、Lapinがフレイバに教えていた時の話、


『御技は武器によっても形が変わるの。例えば普通の両手剣とは違ってレイピアと槍は突進攻撃だけ攻撃力が強くて、それ以外の攻撃力が下がる。他にも短刀の時は範囲が狭くなるけどその分スピードが速い。それが、ステータスボーナスというの』

『じゃあ、Lapinのその双小剣は?』

『これはさらに特別よ、何とヒットボーナスが2回、つまり2回技が出るから』

『えぇっ!? すごいじゃないですか! でも良いんですかそんなの……』

『その分MPが消費されるから、要は回数で攻めるタイプなのよ。回数が増えれば増えるほどクリティカルが出る確率だって上がるわけだし、攻めの手数は増やして損はないわ。でももちろんそのヒットボーナスの対象外のもあるわよ。例えば四ノ技は2回もカウンターが取れるわけじゃないから』

『そ、そうですよね……、ならちょっと安心かも』


しかし、これは完全に騙された。といってもLapinが嘘をついてたわけではない、だが六ノ技の突進攻撃は2回ボーナスはないんじゃないか、と勝手に判断してしまった。思い出した会話の内容では、六ノ技がそうだと言ってるわけではないのだから。


ここでフレイバは、あの言い方にまだ裏があると考える。『対象外のもあるわよ』『例えば』、この言葉を聞くとまるで複数あるかのように聞こえるが、実は四ノ技だけの場合この言い方をしても、『紛らわしい』だけで別に間違ったことは言ってない。


もしこれを狙ってやってるのなら、Lapinはとんでもない存在だ。こうやってフレイバと真剣勝負になることを想定してあえてそうミスリードを誘う言い方をしていたのなら……、


しかしその仮説に気づけたのなら重畳、ならば今すぐここで確かめれば良いのだから。


武装変更チェンジ、双小剣!!」


フレイバ自身が、双小剣を使って確かめれば良い。


『おぉっ、フレイバも双小剣か!?』

『良いねぇ! 双小剣同士の戦いだぜ!!』


ミラー対策というフレイバの手に観客は盛り上がったが、その意図は戦場にいるこの2人にしか知り得ない。これから行うのはただの検証なのだから。


そう、検証。この真剣勝負においてそんな悠長なことをしている暇はない。しかしやらねばならないのだ、Lapinが隠し持っている情報を開示できるのは、RCWによって双小剣を使える今この時でしかないのだから。


「光双五ノ技、『月景ムーンライト』!!」


回し斬り、果たしてこれも2回行われるのだろうか。双小剣なため範囲が狭い、なのである程度近づいてから技を放ったのだ。とはいっても距離が充分に届いているわけではなかったので1撃目は外す、問題は2撃目。


「ふんっ!」


やはり2回目があった。これで五ノ技は普通に該当することが立証された。


(こんな真剣勝負の最中にこんなことしてるなんてバレたらまずい……! 悟られる前に次の技を出さないと……)


離れるLapinを相手に、今度は近づくことをせずその場で次の技を放つ。


「八ノ技、『天川ラクティックウェイ』!!」


御技の八ノ技は、回転して竜巻を起こす技だ。多少離れていても届く範囲攻撃であり、当たれば連続でダメージを与えられる優れもの。もちろん有能な技ということも含め、これで2回も出せるのかが一番気になっているところだ。


「いけえぇぇぇ!!」


Lapinに竜巻が迫る、フレイバから見ればLapinはまるで巻き込まれたように上空へ飛んで行ってるように見える。そしてそれは観客にいるプレイヤーたちも、ジョイたちにもそう見えた。


「当たったか!?」

「いや、よく見ぃや。Lapinが双小剣から飛脚に変えとる、当たる前に跳んであたかもダメージを受けたかのように見せたんや……」


竜巻をまるで跳び箱のように容易に飛び越えるLapin、しかし本命はここから。


「まだまだ!」


双小剣の2回目のヒットボーナスが出た。着地する無防備なそのタイミングに竜巻が襲ってくる、これはさすがに避けきれないはず……。


「光双八ノ技、『天ノラクティックウェイ』!!」


ここでLapinも八ノ技を、お互い出した竜巻同士が相殺された。しかし、問題はこれからだ。Lapinもまた双小剣、2回目の竜巻が出てきたことをフレイバは気づけず巻き込まれダメージを受けてしまった。


(後出しされてしまった……! でもまだまだ、これが正真正銘最後の検証! 正直これはあり得ないと思う……、これはもう検証とか関係なく、流れを変えるためにはこれを使うしかない!!)


フレイバのMPが十一ノ技ほどではないがごっそり減ってしまう、その引き換えとして強力な技が炸裂する。


「光双十ノ技、『創星宇宙論ビッグバン』!!」


フレイバに纏う、黄色を中心とした虹色のオーラ。


その状態でLapinのところへ突進し、剣戟を魅せる。


「1ッ!!」


1撃目は避けられた、だが本領発揮はこれから……、


「あ、あれ……!?」


しかし、すぐさまフレイバに纏ったモヤが消えてしまった。


「なってないわね、手本を見せてあげるわ。光双十ノ技、『創星宇宙論ビッグバン』!!」


今度はLapinの身体から、光のオーラが出現する。


そして瞬きをする間もなく、フレイバのもとへ近づかれ、1撃を喰らった。しかも、1撃目を喰らったと視認した途端に2撃目、そしてそれに気付いた時には3撃目、4撃目と……、結果として10回、双小剣による攻撃を喰らっていた。


「あらっ……! やっぱり久々に使うとここらへんでリズムミスるわね」


フレイバが1撃目で、Lapinが10撃目で終わったそのわけを説明する前に、御技の最終技、十ノ技について説明しなければならない。


十ノ技、十一ノ技に埋もれる要素になってしまってはいるが、使い手の技術が高ければそれはそれで切り札になりつつある技となる。


十ノ技は今までの中でもかなりのMPを消費する代わりに、攻撃力、スピードを高めた上で、ガード不可能な攻撃を繰り出せる連続剣技なのである。


しかしその剣舞を充分に発揮するには、先ほども言った通り使い手の技術が求められる。それはリズムだ。


システムに求められた、画面に表示されるサインにタイミング良くボタンを押す必要があり、それを外すと連続攻撃によるバフは消えてしまう。最初はそこそこゆっくり、しかし徐々に速くなるというシステムでありいつかは人間の反応では対処できないほどのリズムになって終わってしまう。


平均で10連撃、16連撃行けば重畳、20が現在の最大記録である。


さて、ここでなぜフレイバは次の2撃目で失敗したのか……。それは決してフレイバが下手だとか慣れてないとかではない。フレイバは、予期せぬもう1つのシステムに対応できなかった、ただそれだけだったのだから。


十ノ技の連続攻撃、双小剣の2回ヒットボーナスは適応されるのか。結果でいえば、適応される。


連続の2倍、攻撃すればするほど力が増していくシステムでもあるので回数を重ねれば最強、双小剣や二刀流ならもっと早くその境地へ達することができる。


しかしその代償は、より速くなるリズムの要求であった。


一度フレイバが練習したリズムよりも、前段階早く要求されたそのリズムに、事前に知っておかなければ対応できないタイミングで、要求されたリズムに応えることができず、十ノ技は1撃目で終了してしまった。


そしてLapinも、普段はMPの使用を空中戦用に使うため四ノ技以外の御技を使うことがほとんどない。だから今、久しぶりに使ったのだ。十に限らず六も八も、久しぶりに。


だからブランクがあって、少し失敗して10連続で終わってしまった。かつては20連撃を成功した栄えある称号を持ったLapinが、少し腕が鈍っていたようだ。


だが、今はそんなことどうでも良く思っていた。Lapinは、フレイバに話しかける。


「意図は分かった。だけど私を相手に実験を始めるとは良い度胸ね、あなたは最悪なシステムを想像した上で立ち回れば、慎重に動けば問題なかったものを……、好奇心か、恐れをすぐに祓いたかったのか、最もしてはいけないことをしたのよ! 慢心という、言動をっ!!」


そしてこうも言った、恐怖は常に持っておくもの、その恐怖を飼い慣らすことが、強くなるための一歩である、と。


やはりLapinは、最後の教育をしている途中なのだろうか。そう考えたフレイバは沸々と、闘気を滾らせて攻撃に移った。フレイバの双小剣の通常攻撃を、Lapinもまた双小剣で受け、鍔迫り合いとなった。


「そういうLapinこそ……、真剣勝負の最中に授業なんてやめてください! 敵に塩を送ってるんですよ!!」


フレイバも想いをぶつけ、対してLapinは笑っている。ようやく情を捨て、全身全霊で戦えるという手応えを感じているからだ。


お互い十ノ技を使用したためMPが少ない、だがダメージを受けたフレイバはそのMP自然回復で1つくらいは技を出すことはできそうだったが……、Lapinの攻撃の応酬が群を抜いていたせいで攻撃に移れなかった。


「攻撃は最大の防御ならぬ、攻撃は最大の回避術ってことよ!」


試合が開始して3分が経過、LapinのHP残りは100%、フレイバのHP残りは53%。

【プチメモ】


近接武器範囲における≪ステータスボーナス≫は攻撃力・素早さ・防御力、etc……、と、行動増加の〈ヒットボーナス〉、〈近接武器範囲〉のことを総称して呼ぶ。

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