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感想を聞かせてよ、捨てた現実世界に花が咲き始めた状況の!(リメイク版)  作者: カラーコーン人間
第1章、こんなクソみたいな現実に感想だと!? どこかのラノベみたいにゲームに閉じこもっていたいね!!
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5ゲーム、人間を平等に見ることができない神が宿るこの現実世界は、表と裏の差が激しすぎる

「だからごめんって! 思わぬ用事が入ったからさぁ、もう今日はラクん家に行けないや」

「そうでござるか、居残りが長引いてるのかと思ったでござったがまあ良いでござるよ。今度からはちゃんと連絡するでござるよ」

「すまん、そっちは今どうなってる?」

「もう今日は帰るかって話になったわ、動画配信の機材も用意したってのに、何してんねん」

「だからごめんって言ってるじゃんか……」

「まあええけどな、こっちはこっちでご馳走頂いて、カスキは大損してしまっただけやからなぁ!」

「なん……、だと……!?」


ラクの家は羨ましいと思うくらいの豪邸である。アミューズメント業界でもトップの存在で、執事もついていて簡単にヴァーチャルミルチューバ―になれたのもラクの支援があってこそだ。


ゲームをするにも配信をするにも持ってこいの環境、豪華な食事に豪華なおやつも振る舞われて泊まりたいと、3人が夏休み中ほとんどの寝泊まりをラクの家で過ごしたほど居心地が良いところである。


「な、なぁ……? 明日も集まらないか? 明日こそは大丈夫だからよ……」

「悪いな、明日は部活やわ」

「我も用事があるでござる」

「ごめん明日は塾なんだ……」

「ちくしょう……」


そんなグループ通話も帰路中に終わり、鍵の開いた扉を開け家に入る。


「あ、おかえりお兄ちゃん。遅かったね」


彼女はカスキの妹、紅葉もみじである。カスキとは一つしか離れてない。


「ただいま、モミジはもう帰ってたのか」

「当然でしょ、始業式で午前しかないから家のことやりたかったのよ。逆に珍しいよね、インドアのお兄ちゃんがこんな遅く帰ってくるなんて、どうせラクさんのところなんでしょ?」

「まあそんなとこ」


今日は色々あったためそんなに正直に言えるほどカスキは律儀ではなかった。


「まあ好きにしても良いけど、ちゃんと風呂掃除と洗濯物やってね」

「なんで俺も手伝いしないといけないんだよ、全部モミジがやってくれよ」


面倒くさいにもほどがあると思うひどい一言だった。


「ちゃんと家の手伝いしてよ、それに私、料理終わった後見たいジャニーズ番組があるの!」

「え~、風呂掃除はまだしも洗濯物なんてめんどいのやらせんなよ。代わりに皿洗いするからさ」

「もうやったわよ、料理する人間が皿洗いするってルールでしょ? やるならもうちょっと早く帰ってきなさいよ。それに私、お兄ちゃんのパンツとか触りたくないし」

「俺がお前の下着触ってもいいのか……? 変な妄想しちゃうぞ?」

「お兄ちゃんはしないってわかるもん、私みたいな貧乳のブラなんか見ても興奮なんてしないでしょ? アハハハ!」

「女子中学生のセリフじゃねえ……」


独特な会話を交わす紅葉。カスキの影響あってか、少し変な性格になっている。


紅葉は別にアニメオタクではない。強いて言うなら、カスキが見ているアニメを少し見たりSNSで話題になっているメディア関連のツイートを見ている程度、だがそれ以上に紅葉はジャニーズが好きだ。


アニメとドラマは紙一重、ドラマにも1クールとか2期といったシステムがあり、声優と俳優もどこか似ている。中でも紅葉はドラマやバラエティ番組、特にジャニーズが出ているドラマや番組を徹底的に探して見続けている、いわゆるジャニヲタである。


「じゃあ先に残ったお湯を洗濯に使って……、その間にするか。なあモミジ、晩飯何時くらいにできそう?」

「え……、まあ7時前にはできると思うよ。また友達とゲーム?」

「まあな、洗濯機かけてる間だけしてくるわ」

「あっそ、行ってらっしゃい。……なんかお兄ちゃん、今日良いことあったのかな?」


制服を脱いで、カッターと靴下と溜まった服を一気に洗濯機に入れ、ボタンを押して終了。

部屋着に着替え、基地という名の自分の部屋へ行く。


「夏休みずっと籠ってたから、ここを離れたのは久々だなぁ」


扉付近のスイッチを押してこの空間に光を与える。


壁にはアニメのポスター、部屋の隅には3階もあるフィギュアボックス、ベッドの枕元には数冊の漫画、勉強机と思われる机にはなかなか大きなパソコン、そして豪華すぎて目立つメッシュチェア、辞書やクリアファイルもあるが漫画とラノベのほうが圧倒的に支配している本棚。誰がどう見ても、典型的なアニメヲタク部屋だとわかる。


そんな部屋にすぐさま飛び込むのは勉強机、だが決して今から勉強するわけではない。

パソコンの電源ボタンをつけて、起動する間にスマホを見る。SNSやゲームアプリの通知、特に人気のモバイルメッセンジャーアプリ、POINTの通知に指を近づけ、何のチャットが来てるか確かめる。


カスキたち『E-ZONES』のグループの未読トークもあったが、何より一番重要視すべきなのは『愛姫薫』というフレンド名だった。


差出人:愛姫薫

何時から始められますか? 17:42


という返事が来た。

カスキは華麗な親指捌きで返信する。


差出人:Lapin

ごめんね今帰ってきた 既読18:03


送信した途端に既読がついていたが、まさかずっと開いていたというのだろうか。


差出人:愛姫薫

それでは、よろすくおねがいしまし! 18:03


あ、誤字った。

予測変換を使わないのか『よろしくおねがいします』をわざわざ最後まで打ってるのだとわかった。


差出人:愛姫薫

すみません間違えました!! 18:04


SNSという顔が見えない会話なのに、加鍬は薫の恥ずかしそうな顔がすぐ目に浮かんだ。特にいじることもないのでカスキはすぐ本題に入る。


差出人:Lapin

それで、どこまでできた? 既読18:04


差出人:愛姫薫

ここまでできました! 18:04


差出人:愛姫薫

一枚の写真を送信 18:05


その写真には1台のノートパソコン、画面は『CORPORATE SPACE ONLINE』と『press any button』と出ていた。

明らかにゲームのスタート画面だとわかる。それを見てカスキはホッとする。


「そうか、なんとかできたみたいだな……」


実は先ほどの秋葉原での買い物にて、カスキは薫と一緒にネットカフェへ行っていたのだ。ゲームショップアプリのダウンロードの仕方、それからさらにゲームのインストールの仕方、万が一誰かにバレないように隠す方法も教えたのだ。


やり方を覚えたみたいだが、家に帰ってできるか加鍬は心配だったのだ。


差出人:Lapin

それじゃあまずは新規登録をしてね! 既読18:06


差出人:愛姫薫

はい! 18:06


とりあえずここは、少し待つことにしよう。スマホのSNSを開いてタイムライン監視を親指スワイプという省エネプレイで20分くらい暇を潰していた。


しかし、意外にも時間がかかっているのか返事が来ない。


「あーこれはあれか、キャラメイキングをものすごく凝ってて時間がかかってるのか。確かに愛姫さん、3Dの絵が大好きなんだからこだわるに決まってるよな~!」


カスキも最初のキャラメイキングは色々悩んでいた。まず男か女にするかで悩んでいた。ネカマという響きが個人的に嫌だったということと、自分の姿を美化したい、という理由で最初は男キャラにしていた。


しかし何かが足りないと思っていた、それは『萌え』だった。それが発覚した途端に、カスキは新しいキャラを作った。


金髪にしようかツインテールにしようかなどという試行錯誤が加わった結果、『Lapin』という白髪巨乳美少女に決まったわけだ。


ゲーム初心者が最初にワクワクするのはキャラメイキングだということをカスキは知っている、なので今は気長に待つことにした。


差出人:愛姫薫

すみません、ユーザーIDというのは何でしょうか? 18:30


という返事が来たのを確認できたカスキだが、さすがに驚いてしまった。


「え、ユーザーID? まだ新規登録できてなかったの……?」


まあ初めてなんだから躓くのは当然だと加鍬は思い、質問に答える。


差出人:Lapin

ログインする時の認証に必要なもので、個人を識別するもの。簡単に言うとパスワードみたいなものだよ

好きな英数字を8文字以上決めるんだよ

あ、でもパスワードとユーザーIDは一緒にしないでね 既読18:31


差出人:愛姫薫

そうなんですか、ではパスワードはスリーサイズの番号にします! 18:31


「言わんでええわ!!」


正確には『書かんでええわ』、というより関西弁になっているが、愛姫薫がここまで天然だということに驚いた。


「まったく……、あれ? 今新規登録してるならさっきまで何をしてたんだ? ユーザーIDとか登録した後にキャラメイクだからな……」


さっきまで何をしてたんだ? と加鍬は少しどうでもよさそうなことを考え始めてしまった。


「直接聞いてみよう……」


差出人:Lapin

さっきの時間何してたの? 調べてたの? 既読18:32


差出人:愛姫薫

え、利用規約読んでたんですけど……? 18:32


「り、利用規約!?」

ゲームやWebサイトのルールがまとめてあり、それを同意することで遊ぶことができる最初の壁。


しかしよほど悪用しない限り、利用規約なんて長いものは無視していいものだ。カスキを含むほとんどの人が無視して同意ボタンを押す、たとえ読んだとしてもわかるはずがないこの利用規約を読むなんて、どれだけ真面目なのかという話である。


「まあ特に指摘することないからツッコまないでおくか……」


普通は、読むものである。今の時代の普通というのはかなり普通じゃないようにできていると感じたカスキだった。


差出人:愛姫薫

新規登録終わりました、キャラを作っていきます!! 18:33


ビックリマークをつけているあたり、かなりテンションが上がっていることがわかる。


顔も声も必要ないSNS、普通は感情など全く見えないと言ってもいい。しかし薫と話しているとまるで隣に座って喋っているかのような感覚になる。なぜこうもドキドキしているのかカスキはよくわからなかった。


「あ、でも今からキャラメイクするってことはまた時間がかかるってことか……」


利用規約に時間を費やしたのが意外だった、またこれから数十分くらいかかると思うとどうやって暇を潰しておこうかカスキは悩んでいた。


「ちょっとお兄ちゃん! もう洗濯機終わったよ! いつまでゲームやってんの!?」

「あぁごめん、今行くー! 今の言い方完全にお母さんだったな……」


扉の奥から紅葉の怒鳴り声が聞こえた。


部屋から出て行き、洗面所へ向かい蓋を開けて洗濯物を取り出す。


洗濯物が詰まった籠を持ちながらベランダへ行き、パンパンとはたきながらハンガーにかけて干す。このやり方だけなら特に難しくなさそうと思いがちだが、最初のはたく行動が地味に重要になってくる。変なしわができないようにはたいたり少し伸ばしたりするのだが、適当なこの男にとってはしわなんてどうでもいいわけだ。だが家族は気にする。

しっかりと伸ばす、カッターなどの襟がある服はハンガーをかけるところに注意する、などという細かい指導を受けたカスキにとって洗濯物の手伝いは苦手なのだ。


「お兄ちゃん、そんなに嫌な顔するなら代わるよ?」

「いやいやいや最後までやるって! うそ、顔に出てた!?」


嫌々やっている子に怒って『もういい私がするから!』と言う母親とのやり取りみたいになってしまった。急いで洗濯物を干して、カスキは少し居たたまれないこの状況を抜け出すことにした。


部屋に戻り、椅子に座って心を切り替えようと深呼吸をする。スリープしたパソコンを立ち上げて、もう一度POINTを開く。


差出人:愛姫薫

キャラメイクできました! 18:35


「あれ、早くない?」

ほんの2分、洗濯物の処理をしていた時に愛姫からの通知が来た。

先ほども言った通り、キャラメイクというのは凝りたくなるものなのでかなり時間がかかってしまう。それを薫は1分くらいで終わらせた。

「あれほど絵が好きとか言ってたわりにはすぐ終わったな。いや、もしかして既に決めてたというのか……?」


まあここで色々と悩んでても仕方がないので、早く次へ移ることにした。


差出人:Lapin

それじゃあプレイに入っていくわけだけど、まずはチュートリアルだね 既読18:43


差出人:愛姫薫

大丈夫です、すでにプレイ動画で予習済みです!

チュートリアルスキップします! 18:43


「いや、フロムゲーじゃないんだからちゃんとゲーム会社の配慮を受け取りなよ……」


初心者にも優しいゲームなので『死んで覚える』というタイプではない。


CSOはしっかりとチュートリアル機能がついてるし、少し複雑な操作もあるので説明を受ける価値はあるのである。しかし本人が問題ないと言ってるのであれば指摘すべきではない、それにカスキは早く薫とプレイしたくてうずうずしているのだ。


「それじゃあこっちもログインしときますか~!」


カスキもパソコンからゲームを起動する、現実でなく今度はゲームの世界で合流することにした。


「それじゃあ、ゲームの世界へ! レッツゴー!!」

【プチメモ】


またも言うまでもなく、POINTというアプリはL〇NEです。線の反対は点かな、と思ったので。

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