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感想を聞かせてよ、捨てた現実世界に花が咲き始めた状況の!(リメイク版)  作者: カラーコーン人間
第1章、こんなクソみたいな現実に感想だと!? どこかのラノベみたいにゲームに閉じこもっていたいね!!
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1ゲーム、アニメオタクを認めてもらえない現実世界は、やっぱりクソゲーより攻略難易度が高すぎる

ここは現代の世界、9月という新しい何かが始まり、夢のような一日が終わる月といったイメージだ。


『次は、御茶ノ水~、御茶ノ水~……』


駅員のアナウンスを聞いて、私服を着た男子高校生が電車から降りる準備をする。


「ふぁ~ぁ……、また今日から学校かよ。……何だよまだ5分あるじゃねえか! 早く落ちて損した……」


けだるげな小声のおかげで彼の独り言が他の人に聞こえることはなかったが、彼の発言の意味は一部の人しかわからないだろう。


彼はスマホを見ながら今の時間を確かめる。7時40分だとわかり、ポケットからイヤホンを取り出してスマホに刺し、音楽を聴き始める。それと同時に彼の乗っている電車が東京都御茶ノ水駅に停まり、扉が開くと彼を含んだたくさんの人が電車から降り、そのまま真っすぐ改札口まで向かって行く。


まるで朝の通勤のアルゴリズム。駅に着いたらすぐ改札口とは、日本人はもうちょっと余裕を持てないのだろうか、と男は考える。


「はぁ……、あっち。ほんとに9月かよ……。これだから現実はクソなんだ……」


赤谷あかたに過守着かすき、高校1年生。仲間からはカスキと呼ばれていて、現実はクソだと口癖になっているどうしようもない男だ。

ボサボサの黒髪に目の下には僅かにクマができていて目付きが悪く、あまり清潔感が見られない。

私服での通学が許されてるため、左胸にお気に入りのアニメの赤いマークが描かれている白いポロシャツと黒いスラックスというコーデで登校していた。


「あ、おーいカスキ! こっちやで!」


バス停にて待ちながらカスキに手を振っている男3人がいる。


「はぁ……、はぁ……、全く、運動不足で完徹の俺を走らせんなよ。てかまだバス来てねぇじゃん」

「完徹は知らないでござる」


不動ふどう住十代すみとよ、高校1年生、仲間からはスミと呼ばれている。肩まで伸ばした黒髪ロングの黒縁眼鏡、そのレンズから少し冷たい目線が見える。語尾に『ござる』とついているがこのメンバーたちは何も違和感を持っていない。


「自業自得やんけ」


防人さきもりりょう、高校1年生、仲間からはリョウと呼ばれている。スポーツ刈りの茶髪に痩せた高身長故上から鋭く睨む目付きの悪さ、日焼けした部分をさすりながら関西弁できつい言葉を放つ。


「ギリギリでも良いっていうその精神が心を腐らせるんだよ?」


詠娯えいごらく、高校1年生、仲間からはラクと呼ばれている。清潔さを保った丁度良い長さの金髪、3人とは違いおっとりとした視線を放ち優しさが滲み出ていてもカスキに対する言葉には歯に衣着せにくいところがあった。


「味方いねぇクソどもが……」


遠まわしの友情にただクソという感想を送るカスキ。それこそがこの4人、これもまたヲタクという絆故に発する会話である。


「ていうかカスキ、お前その私服はなんや?」

「へへっ、良いだろこの服!」

「左胸、これ……、『クロマジュ』の魔法陣でござるな。これしか描かないとは需要あるのでござるのか?」

「あるって! イマドキのヲタクはギンガムや柄シャツとかから逸脱したんだ。こういった一見普通のシャツでありながらヲタクなら分かるキーワードがさらりと含まれている。シャツにしたってアニメキャラの絵が描かれてるのは気持ち悪がられるからな、こういったマークくらいが丁度良いんだよ!」

「なるほど、確かにパッと見ヲタクシャツには見えないでござるな」

「いやいやスミ、そういう問題ちゃうやろ。今日は始業式やで? 式の付く日は制服着んのがルールやで」

「あぁそういえばそうだったなぁ〜」

「確信犯やな」


リョウがカスキのすっとぼけに気付く。


「学校には行くが、式には出ないぞ。時間の無駄だろ?」

「それでこそカスキ殿でござるな。我らにできないことを平然とやってのける」

「ふふんそうだろ?」

「でもシビアコではないでござる」

「おいっ」

「あ、バス来たよみんな」


4人ともバスに乗って、扉が閉まると動き出す。座るカスキとスミ、席がなくて近くに立つリョウとラク、バスの中でも4人の会話は止まらない。


「さて、今日は午前中には終わるがどうするんや? 部活もないし、また配信でもするか?」

「時間はたっぷりあると思うでござるし、直行でラク殿のうちへ向かうでござるか?」

「ちょっ、ちょっと待ってよ! さすがに直行はやめてよ、色々準備が必要だからさぁ!!」

「準備っておめぇ、思春期の男かよ!」

「思春期だよっ」

「カスキ殿はどう思うでござる?」

「あー行きたいけど……、今日9月4日だろ? ちょっと用事あるんだ」

「用事? 何やいったい?」

「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました!」

「そんでさぁ、来期のアニメは2期3期が多くて新アニメが少なすぎなんだよなぁ! さすが秋アニメ!」

「おい待てその話題参加したいけど無視するんじゃねえよ!!」


カスキが発したうざいセリフをリョウが別の話題を出してスルーする。こんな雑な扱いすら彼らがあ仲の良い証拠、こういういじりが何気に関係が保てる要素になるのだ。


「あー漫画の発売日でござったなぁ」

「あぁ、だからまあすぐ終わるだろ。そのままラクん家行くよ。みんなは先行っといて」

「「「ういー」」」

「というか9月4日から2学期ってちょっとお得な感じだよなぁ」

「2日と3日が土日やったからなぁ。その分夏休みの始めは遅かったし、夏期講習もあったし」

「でも有意義で楽しい夏休みだったね、特にカスキくんなんか昨日で終わりなの気づかなかったくらいだからね」

「今日9月4日じゃねぇかぁ! 夏休みもうとっくに終わってるよぉぉぉ」

「あ、ちょっと似てるでござるな」

「何だっけそれ?」

「マニアックなとこ選んだなぁ」


周りの目など気にせず、ヲタクらしい会話を大声で話す少し迷惑な4人だった。


バスが学校前に着き、4人だけでなく同じ学校の生徒たちも降りた。


「おーおー、相変わらず校門前は黒塗りリムジンが渋滞してるなぁ」

克星かつせい院高等学校、教育者の頂点とも呼べる教都部理事長がエリートという金の卵を育てるために設立した新生エリート校でござる」

「どうした急に?」

「無性に語りたくなったのでござるよ」


スミの言う通り、カスキたちが通う学校の生徒は物理的な意味でも輝いている。ではカスキたちもそうかというと、そうとも言えない。


「あ、ラクくんおはよう~! 今日も暑いわね!」

「おーラク、おっは~&久しぶり! 少し焼けたな!」


バスから降りると、登校しているクラスメートと会うのは必然である。故に夏休みという長期休暇により久しぶりに見る女子高生や少しちゃらい男子高生が次々と現れ、挨拶を交わす。


しかし、一つおかしな点がある。それは『ラク』にしかあいさつされてないことだ。


「あーあそうだった。嫌なこと思い出すぜ、俺ら推薦で選ばれた割には似合わない問題児、不良ヲタクだったわ」

「まあまあいいじゃん、目に見えるカーストがないだけまじだよ……」

「そうだな、『目に見えない』だけな……」


歩いているカスキの後ろに、友達と話しながら前を見ていない女子高生とぶつかった。


「そうだねぇアハハ、あっ! ……っ! うわ……」


ぶつかってきたわりには謝罪の言葉もなく、当たった部分を掃いながら逃げて行く。


「ほんとに目に見えてない? 節穴かみんな?」

「どんまいでござる」


バス停から校門までの間に横断歩道が一つある。下手したら赤信号のせいで遅刻になるほどの面倒な横断歩道、青になるまでたくさんの人が待ち構えていた。校舎にある時計台の長い針が下へ降りようとするのが遠くからでもわかる。遅刻ギリギリな高校生にとって校門がゴール、スタートの合図であるランプが緑に照り輝く瞬間が来るまで目が離せない。


だがそこへ、フライングしようとしてる人が現れた。


(なんだあの子……、信号無視を……)


たくさんの人がスタート地点にて待つ、友達と話したりスマホを眺めたり、歩道と歩道を繋ぐ縞々の道をトボトボと歩こうとする女子高生がいる。


ながらスマホではない、顔を下に向けてただ暗い印象を持つ女、何か悩んでいるのだろうか。だがそんなことを気にすることなく、一台のリムジンが奥から見えてくる。それに気付いたのはカスキだけだった。


「危ないっ!」


高音で強烈な刺激が脳の髄まで届いてくるほどのブレーキ音。スタートの合図などもう目に入らないほどの瞬間だった。ぶつかりそうになった女子高生とカスキは横断歩道を越えた先、女子高生を覆いかぶさるようにカスキが庇っていた。


「カスキ!?」

「カスキくん!!」

「大丈夫でござるか!?」

青信号も関係なく、女子高生と一緒に横たわっているカスキが心配になった3人が駆け付ける。


「痛たた……」

「カスキどの……、転生したくなるほど現実が嫌になったでござるか」

「ちげぇわバカ! この女が飛び出すから……」

「あ……」


女子高生が起きながら、横断歩道、トラック、カスキの順番で見ていき頭を整理する。


そして、一気に女子高生の顔が真っ青になる。すると何の言葉もなく、カバンを持って校舎へと逃げだした。


「あ、どこ行くねんおい!」

「あーあ、また無視されちゃったよ……」

「おーいお前ら、またなんかやったのか!?」


さすがにこの騒ぎ、校舎から教師が出てくることは必然だった。教師は不良ヲタクであるカスキたちを疑ったが、運転手の証言もあって疑いは晴れとなった。


「すまないないきなり疑って」

「全く、七度尋ねて人を疑え、ってやつですよ先生!」


ここで調子に乗らなければ、カスキという人間としての株はもう少し上がるのだが……。


「本当にありがとうございました、怪我はありませんか? もしどこか悪いならこのまま病院まで……」


運転手がカスキの怪我の具合を気にする、擦りむいてはいるが大して問題はなかったみたいだ。


「大丈夫っすよ、一張羅が台無しではあるけどなぁ」

「それくらい大目に見ろよあかた……に……、お前何で私服なんだ?」


その後、カスキは先生によって連行された。

【プチメモ】


前回は彼らの高校を新越谷にしましたが、特に意味もないので、普通に東京の高校らしいところを選びました。距離的に秋葉原に近からず遠からずなところを選びました。


高校のモチーフは『か〇や様』みたいにどうしてもなってしまいました。

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