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感想を聞かせてよ、捨てた現実世界に花が咲き始めた状況の!(リメイク版)  作者: カラーコーン人間
第2章、車や電話というデジタルな現実になったのに、なんでこんなに走り回らないといけないんだ!?
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11ゲーム、現実世界でもゲームの世界でも、味方がいたほうが何百倍にも力が膨れ上がる

「ねぇ3人とも、いい加減決めてよ……」


9月19日、3連休が終わった学校の終礼、3人の相変わらずの態度にラクは少し怒りを抑えながらもけだるげに注意する。


「だからぁ、俺ら当日休むから他の人に頼めよ」

「全員もう選んだから! さっさと何の競技するか選んで!!」


珍しく声を荒げるラク、只今10月上旬に行われる体育大会の種目を決めている。


実行委員のラクと翔子、一応体育委員が指揮を取って次々と種目が埋まっていく、残るはこの3バカだけだ。


「あんたたちなんでこういう時に限って頑固なの? 早く決めたら早めに家へ帰ってゲームできるというのに……」


ラクの背中を押すように、翔子も説得に入る。この前は家でゴロゴロとアニメ見ていることを哀れんでいた翔子が、この前の件で少し柔らかくなったようだ。


「我らヲタクにとって運動することは勉強と労働の次に嫌いなのでござる! 当日休んだらいっぱいゲームできるからこうして頑固になってるのでござる」

「働くのと勉強するのと運動したら負けだ~!」

「それじゃほとんどの人が敗者になるよ……、だめだ丸秘さん、3人ともこうなってしまったら手がつけられないんだよ……」

「というか、防人くんは運動得意よね? どうしてそっち派なの?」

「休める時に休みたいんや、怪我がまだ癒えてへんからなぁ」

「な、何も言えない……」


リョウは運動も得意、むしろ陸上部に入ってるくらいだ。しかし2週間ほど前の怪我からまだ完全には回復していない。体育大会に間に合ったとて、ブランクのある身体では本調子ではないだろう。だからリョウもカスキたちと同じ、サボる側についているのだ。


「あのね、ゲームしたい気持ちも運動したくない気持ちも分からなくないけど、学業優先でしょ?」


なぜかお母さんみたいな説教をしてしまうラクだった。本来なら無縁のセリフである。


「体育大会のどこが学業だよ? 何も学べねえよ! だいたい義務教育終わってるんだから休んでもいいだろ? わざわざ受けなくてもいい授業出てるだけでもありがたいと思えよな!」

「何なのその屁理屈は……」


反抗期すぎる一言に同年齢の自分では説得力がないと思い何も言い返せなかったラクだった。


ちなみにケンコバは急に呼び出されて席を外している。どこまでも役に立たない教師である。


「だいたい中学にあった大縄跳びがなんで高校になるとないんだよ? これがあったら巨乳が跳ね上がってるとこ見れるんだけどなぁ……」

「中学の時もそれ目当てで参加してたの……?」

「あれや、丸秘とかの貧乳の女が障害物競争するんやったら考えてやってもええで。貧乳が活かせる競技やからな」

「そんなこと頼んだら殴られるに決まってるでしょ……」

「私は借り物競走に出るのよ」

「パット借りるのか」

「そんなわけないでしょ!?」

「胸貸してやろうか?」

「胸から離れて……、あぁ慣用句のこと?」

「我は小学校の運動会が見たいでござる」

「もはや高校全否定かよこのロリコン!」


彼らの性癖満載のクレームに対するツッコミも段々疲れてきたラク、だんだん怒りが露わになっていた。


「もうダメだ拉致があかない……、こうなったらあの手しかないか」

「まさか詠娯くん、このヲタクたちを何とかできるの……!?」


ラクに残された最後の切り札とは一体……!?


「体育大会が終わった後、僕の家でお疲れパーティをしない?」

「「「やる!!」」」

「すごい食いつきね……」


ラクの家はお金持ち、夏休みのお泊りは最高だったことをこの3人は身に染みている。


ラクが開催するパーティはまさにヲタクのためにあると言っても過言ではないほどの豪華な品や娯楽が詰まっている。特に家で思う存分カラオケができるのは本当に最強だ。


「まあ仕方なくやるとして、残りは何があんねや?」

「えっとね……、僕と一緒の3人4脚と、1000M走」

「「「な、なんだと……!?」」」


これはかなり究極の選択となってしまった。


3人4脚の空いている枠は2つ、しかも相手は仲良しのラクだ。


天国に行ける者は2人だけ、負けた者は1000Mという地獄に行かなくてはならない。


さあ、誰が行くのか……!?


「せっかくだけど、リョウに譲るよ。運動部以外の人間、帰宅部のヲタクには身が重い」

「全くでござる」

「いやいや、俺長距離適性じゃないんや」

「嘘つけ! お前の陸上の友達が言ってたぞ、お前はマルゼンスキーみたいなものだって!」

「ウマと一緒にすんなや!」

「じゃあ俺が行けって言うのか!? 言っとくけどな、水泳も縄跳びも、酸欠で頭痛くなって保健室送りになったことあるんだぞ!? 自称愛称は酸欠少年カスキ!」

「アーティストかバカ! しかも自称かよ!」

「埒が明かないでござるな。もう公平にじゃんけんするでござるよ」

「ちっ、しかたがねぇな」

「正々堂々と、勝負や」

「『ジャジャン拳』が『ボーイ・Ⅱ・マン』どっちが良い?」

「一発勝負や」

「オーケイ。もうこれで終わってもいい。だからありったけを……」

「大袈裟すぎる、どれだけやりたくないの……」


呆れるラクを放っておいて、3人が拳を前に出す。


「「「Geek’s Pride! じゃんけんポン!!」」」


お互いの拳を何の小細工もなく表へ出す勝負、ジャンケン。


この三つ巴の戦い、あいこになることなく勝負は決した。


「な、なんだと……!?」

「敗者、酸欠少年!!」

「いじるくらいなら代われよ!」

「はい皆解散! 良かったわぁ1000Mって一番得点が低いから捨てゴマとして最適なのよね」


もうその種目いらないのではないだろうか。

ヲタクだからなのかカスキだからなのか、捨てゴマになることを大いに喜ぶクラスメートがここに存在していた。


「というかお前ら、ちゃんと3人4脚できるのか? リョウとの身長差とかペース合わせるとか」

「それはこれからの練習次第だね」

「まあ怪我治ってる時には、ブランク分がハンデとなってお前らと合わせられるやろな」

「嘗めてるでござるな、ラク殿、リョウ殿を見返せるくらい速くなろうでござる!」

「うん、そうだね! やるなら全力で、だよね!」

「お前らで勝手に盛り上がんなよ……」


置いてけぼりにされたカスキが少し拗ねる。


「まあ他人事になっちゃうけど頑張って……」

「ほんまに他人事やな、まあ俺もあんま言えることないけど」

「いやリョウ殿は走り方とか教えられることはあるでござろう……、そうだ、頑張ろうとするカスキ殿にプレゼントでござる」


スミが筆箱から何かを取り出してカスキに渡す。


「この輪ゴムを足につけると速くなるでござる」

「俺が欲しいのは代理だ」


どうやらスミからのプレゼントは気に入らなかったらしい。


「それじゃあ詠娯くんまた明日お願いね。防人くん、不動くん、本番ヘマしたら許さないからね」


ラクにあいさつを交わして、一応カスキを除いたヲタクたちにも厳しいあいさつをする翔子。


「当然のように俺がヘマすること前提なのね」

「いや、あれは無視じゃないでござるか?」

「つうかなんで俺らがお前に従わないとあかんのや」

「あのねえ、体育大会は数々の来賓の方やエリートクラスの親御さんが見に来るんだから、私たちのクラスの恥をかかせないようにするためよ」

「来賓とか親御さんとか考える歳じゃねえだろお前は……」

「あ、そうだ詠娯くん、この後1000M走の選手は化学準備室で説明会があること、言っておいて」

「おい、本人目の前にいるぞ……。てか、は? 何でそんなめんどいのあるわけ……?」


さすがに走る練習をしておきたいと先ほどリョウとカスキが話していた、でないと完走できなくなるという自信がカスキにはあったからだ。


しかしそれに加えて説明会だと? 何の説明だ、走り方のか!? と内心苛立っている。


「1000M走はプログラムの2番目だから、最初の開会式やラジオ体操では入場門前で待機っていう説明がおおよその内容だと思うよ」

「そうかありがとラク、それさえ聞ければもう十分だ」

「「帰るな、ちゃんと聞いてこい!!」」


ついに翔子すら無視できないツッコミをラクと共に放つ。


「えーというわけで1000M走はプログラム2番目だから……」

「本当にラクの言った通りだ、帰っても良かったんじゃないの……」


現在化学準備室にて説明を受けているが、本当に来た意味がなかったかもしれない。


この説明も、先生か体育委員が伝言として教えてくれればいいだけだ。わざわざこうやって説明会を開くことはないと思う。


まだラクの知らない説明が来るのか、あるいは走り方を教えてくれるのか……、いやさすがにそれはないだろうとボーっと考えながらカスキは座っていた。


「えーと、ここからが本番だが……」

(来た……!)


たかが1000M走のことでここまで緊張するのはおかしいが、だからこそ1000M走のことで説明会を開く理由を知りたい。その理由がこれから話すことだろう。


「君たちにお願いがある。この1000M走……、負けてくれ」

「……は?」


視界に映るのは、説明してくれた先生の土下座。


そしてカスキと同じように先生の行動を見て驚く選手たち。そして棒立ちな生徒が一人。


「まず紹介しよう、こいつは推薦組の永良寿一。親が永良スポーツジムの社長、お忙しい中今回の体育大会に来て下さるそうだ。私は永良の陸上部の特別顧問、4月からどれだけこいつが成長しているのか確かめられるわけだ。永良はもちろん速い、だが圧倒的な差を見せなければならない、僅差なんてもっての外だ。よって君たちにはギリギリに走らないでそうだな……、一周分遅れてほしい」


運動しないカスキでも少し聞いたことがあった。


永良スポーツジム、事業展開していて駅前にあるほどカスキの目に移る日本一の選手育成場とされている。オリンピックに出た選手ももちろん、海外の選手が合宿に来ることもあるのだという大きな会社である。


その社長の息子、普通は総合体育大会にて実績を出したほうがいいわけだが、どうやら学校内の体育大会でも実績を出したいらしい。


普通の高校生よりも圧倒的な差という実績を出すため、この先生は八百長作戦を考えたわけだ。さすがはエリートと組んでいる大人、聞いただけで吐き気がする。


「まあ、別にいいんじゃないの。1000M走って点数低いし、まともに競っても永良に勝てるわけねえし……」

「ギリギリじゃなく一周差か、全然やりやすいわ」

「メリットも特にないけど、デメリットもないわけだしいいか」

「もちろん聞いてくれたら何でもしてあげよう、そうだ焼肉だ! 実績を出すくらいなら奢るくらい大したことないよ!」

「おぉ先生太っ腹!」


妙に賛成が多い、おかしいと思わないのか……。


社長に目をつけられたくないからか、先生に逆恨みされたくないからか、そのくらいの頼みなら引き受けてもいいってか?


「ほんと……、これだから現実はクソなんだ……」


だがカスキにはどうしようもできない。


捨てゴマのつもりで選手となった状態、本気を出そうが出さないが勝てるわけがない。


そもそも乗り気じゃなかったわけだし、むしろゆっくり歩くと褒められるわけだ。大人しく引き受けるのが正しい判断だ。


いや、本当にそう思うか?


「ふざけんなよ先公ッ!!」


本当は机を思いっきり蹴って威嚇させたかったのだが、化学準備室の机は床と繋がってるタイプだったので、代わりに手で大きく机をドンと叩いた。


「あんた、自分が何やってんのかわかってんのか? まだ純粋な俺たち子どもの前で、ゲロみたいな汚い姿見せてんじゃねえよ! 汚い大人の代表だな全く……、俺はクラスの捨てゴマとして走るわけだが、あんたの話に乗る気はいっさいねぇから。じゃあ俺は帰らせてもらう」


たかが学校の体育大会でどうしてこんな汚い社会の姿を見なければいけないんだ。言いたいことをはっきりと言い終わったカスキはそのまま化学準備室から去っていく。


「先生、あの男は?」

「あぁ……、5組の赤谷過守着、不良ヲタクのリーダーだ。あいつには気をつけろよ永良、ひょっとしたらお前の足を傷つけてくるかもしれない。それさえ気をつければ大丈夫だ、あいつはすごく運動神経が悪いんだ」

「そうですか……、いっそのことリンチを行ってほしいけどな……」

「ん、何か言ったか?」

「いえ、何でもありません」


翌朝、カスキは教室で昨日の件をみんなに話していた。


「ハァ、それほんまかいな!?」

「バカ、声がでけえよ……」

「そ、そうだね。カスキくんここで話すのまずいよ……、体育館の裏へ行こう」


まるで告白場所の代表と言えるほどの体育館裏、ある意味告白をするようなものだから間違ってはおらず場所として最適なのかもしれない。


「しかしあんの先公そんなこと考えてたんか……、いっつも裏でコソコソやっとったけどそういうことか」

「やっぱりリョウはあの先生のこと知ってたんか?」


リョウも陸上部、その先生はおろか永良のことも知ってるということだ。


「あぁ、どうやら永良の親の機嫌を取らせたいのと自分の教育力を認めてもらうために汚い手使ってたんやろなぁ……。あぁちなみにあの先公は長嶋言うから覚えときな」

「で、どうする? さすがに先生に言ったほうがいいんじゃないのか? チクったとか関係なくさ……」

「止めておいたほうがいいからここに来たのでござるよ、先生たちは所詮エリートクラスの親の奴隷、うやむやにされて、むしろ変な言いがかりつけられて退学させられるに決まっているでござる」

「さすがにそれはないんじゃないかな……」

「だけど、気に入らねぇんだよ。なんとかしてあの先公の悪だくみを潰したいんだけど、何か方法ないかな……?」

「難しいでござるな、ラク殿の特権も融通利きそうでござるか?」

「む、難しいねさすがに……」

「何かないのかぁ……?」

「方法はある」


カスキたちの後ろに立ってる男が言動を遮った。


「あんたは……、永良!」


暗めのグレーな短髪がこの男の涼しげな性格を強調させる。深いとまではいかない顔の彫りでも、光の影響を受けていない曇った目がいかにも冷静な男の顔を表現してくれている。


穏やかな地声、ゆっくりとこちらへ向かう歩行の姿、まるで氷の女王の男版だ。


「初めまして、と言ったほうがいいのかな。俺は永良寿一、お前が赤谷過守着だな?」

「あぁ、そうだよ」

「やはり、防人の知り合いで助かった」


先ほどまで凍ばった顔をしていた寿一が急に安心した顔になる。


「俺が知り合いやと何がええねん」

「それは後で話すよ、まずは赤谷、昨日はありがとう」


本題に入ろうとした途端、まずはカスキにお辞儀をする。


「ありがとう……? カスキくんは八百長に反対したんだよ?」


カスキよりも真っ先にラクが疑問に思ったことを告げた。


「だからこそさ、俺は八百長には反対だ。だが長嶋のやつが聞いてくれなくて手に負えなかった。昨日いた選手も、俺がエリートの息子だということで目をつけられたくないとかであっさりと八百長に賛成したから長嶋は上機嫌だった。だが昨日赤谷が暴れてくれたことで長嶋の顔が少し曇った、ここでトドメを刺したい」

「ふむ、まさかの永良殿も反対派でござったとは……」

「で、トドメってのはなんやねん?」

「まだ体育大会の種目決めは変更できる。赤谷、防人と交代してくれないか?」

【プチメモ】


カスキたちは20歳を過ぎたら早速、競馬で金を賭けてみたいと思っている。もちろんラクを除いて。

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