エリザ花をもらう
十時ということもあり城へと向かう道の両側には徐々に開店している店も増えてきて商店街が色を帯びはじめてきた。
「任務終わったら休暇なしですぐに報告しろってもうなんなの?あんのたぬきオヤジ。人使い荒いっての」
エリザは赤いポニーテールを思いっきり左右に揺らしながら腕を頭の後ろに組み勢いよく石畳をガツガツとわざと音を立て、歩いていた。
「まあまあ、怒る気持ちもわかるけどさ」
ユリアナがなだめる。
「忙しいんだよ。私たちの任務結果を知らせないとあの人だって動けないでしょ?」
「そーだけど……」
エリザは煮え切らない様子の一方でユリアナは久々の城下ということもあり、うきうきして商店街を見回していた。二人は晴天のもと城へと続く道をまっすぐと登って行った。すると黒い柵でできた門の前につき何事もなく通り過ぎようとしたら番人に止められた。
「おい、身分証を出せ」
「身分証ってねぇ」
エリザが呆れたように言い、軍服の胸元についている桜のピンバッジを見せつけるように指した。
「しっ失礼しました。近衛兵殿どうぞお通り下さい」
番人はあわてて敬礼をして門を通した。城は小高い丘の上にあり町が一望できる。門から城までは少し距離があり庭が広がっている。ここの庭までは許可証があれば誰でもはいれるの自由に花を植えたり庭の手入れをおこなったり憩いの場として国民に広く愛されている。ちょうど薔薇が見ごろなので今日はたくさんの人で活気づいている。エリザとユリアナも人ごみに紛れて庭をゆっくりと眺めながら進んでいった。
「ねぇ見て。この薔薇エリザの髪色にそっくりだよ」
ユリアナはしゃがんでその薔薇を指さしてエリザに手招きする。どれどれとよってみてみると確かに深紅でひときわ目立っていた。
「軍人のお姉ちゃん、それ気に入ったのかい?」
「え、まぁはい。きれいな赤だなって」
エリザはいきなりおばさんに声をかけられてびっくりした。
「そうかい、じゃあ持っていくといいと」
おばさんはそういってはさみで茎を切ると慣れた手つきでとげを処理して、手渡してくれた。
「これから城に行くのかい?」
「はい」
「そうかい。王様にあったらこの庭に見に来てくれるように言ってくれないかね?きれいだからぜひとも見てもらいたいんだよ。私だけじゃない、ほかに花を植えている人もそう思っているからさ」
「わかりました。薔薇ありがとうございました」
エリザはお辞儀をしてユリアナとともに城へ急いだ。