プロローグ
ちょっぴりグロテスクっぽい表現があります
苦手な方は気を付けて下さいm(__)m
しばらく、書くことから遠ざかっていましてリハビリも兼ねておりますので。誤字脱字などありましたらご指摘お願いしますm(__)m
ただ御手柔らかに(笑)
「ハァァァ!!!」
死臭が漂う薄暗い部屋。魔王前にしたクラフトは、仲間の血液で染まった床を蹴り、剣を振り上げた。
しかしクラフトが放った渾身の一撃を、魔王はいとも簡単に退ける。憎しみや、怒り様々な感情を込めて、強く握っていた剣は、遥か彼方に飛んでいった。
「クッッゥ」
苦痛の声を上げるクラフトをあざ笑うかのように、魔王はゆっくりと近づいてくる。
死を覚悟したクラフトの脳裏に浮かぶのは、目にいっぱい涙を溜めて必死に笑顔を作る愛しいリーベの顔。
「必ず生きて帰るという約束。守れなくて悪いな」
クラフトは誰に告げるでもなくぼそっと、つぶやき目を閉じた。
その時、脳裏に不思議な声が響いた。
『あなたの願いを叶えましょう』
気がつくとクラフトは何もない世界にいた。上下左右すべてが黒の世界、今自分は立っているのか、前を向いているのか沈んでいるのか、存在しているのかすらもわからない。
(俺は死んだのか……)
クラフトがこの黒の世界の死後の世界だと考えたその時、再び脳裏に声が響いた。
『あなたの願いを叶えましょう』
「誰だっ!?」
耳から聞こえない声はクラフトの脳に直接語りかけるように響き渡る。
『私は願いを叶えるもの、あなたが最も望むものは』
「なんだ? 神の慈悲と言うやつか、望むもの……」
自傷気味に笑うんクラフトが思い浮かべるのはやはり彼女リーベの事。
「俺の、婚約者リーベの、幸せを望む」
クラフトは一つ一つ言葉を紡ぐように答えた。
『……貴方の最も願う望を叶えましょう、本当の願いを』
リーベの幸せはもちろんだが、願わくば自分が幸せにしたいと言うクラフトの心を、声の主は見透かしているのかもう一度畳み掛けるように言った。
「それは……」
天使の慈悲か悪魔のささやきか、死を受け入れていたクラフトに“生きたい“と言う気持ちがふつふつと湧いてくる。
「さあ、願いなさいあなたが望む事は?」
「俺はっ、生きたい!! 魔王倒す力が欲しい」
クラフトが言い切った時声の主が少し笑ったような気がした。
『その願い叶えましょう。……あなたが魔王倒したと言う事実は残らない、それが願いの代償』
「いいだろう、俺は英雄になりたくて、勇者になりたくて、魔王退治するわけではない!!」
クラフトが迷わず即答すると、謎の声は満足そううなずいた。
『魔王倒す強大な力をさずけましょう。 しかし、貴方が魔王を倒したと言う記憶は誰にも残らない………さぁあなたの物語を始めましょう……』
声はだんだん遠く離れていき消えていた。声が消えるのと同じく真っ黒だった視界も、晴れてくる。
すると視界が一気に開き魔王が目の前に迫ってくるのが、スローモーションのように見えた。
クラフトは魔王を倒すために、もう血の気のない仲間が持つ折れた剣を拾った。
力が膨れ上がり、体から光があふれだす。
暖かいようで冷たい光が折れた剣の刀身を形作る。
先ほどまでただ脅威でしかなかった魔王が、今や小さな存在に思えてくる。
(これなら勝てる)
そう確信したクラフトは軽々地面を蹴った。
クラフトの剣に串刺しされ、苦痛の声を上げた魔王は、朽ちる様に消えていく、その表情はどこか安らかないもののように見えた。