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フォルトゥナ・ストーリア  作者: 英雄ひいろ
灰色の魔導師と白黒の双子
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EP.10-3 二対三

 セト、グレンと別れたユキハ達はフォルテッシモの残り二人のメンバーとの戦闘に突入していた。

 

「そりゃ! W(ダブル)バネパーンチッ!」

 

 バネの様に伸びる義肢を持つ道化師、フィルの放った拳は、ユキハを挟み込む様にして地面を穿った。

 

「さらにさらに! ハイジャンプキッーク!!」

 

 フィルは両足のバネを使って高く跳躍し、伸ばした腕のバネが元に戻る反動を利用して蹴りを放った。

 

「───っ!」

 

 左右をフィルの両腕に阻まれ、ユキハは跳躍で空中へと逃れ、そのまま高所から太刀を振り下ろした。

 

 隕石のように飛び込んできたフィルは両腕を引き抜くと、迎撃するために拳を放った。

 

「させねぇよ! フルパワースロー!」

 

「ぬわっちょ!?」

 

 リッパーの放ったダーツがフィルの腕を弾き、スキを生み出した。

 

「───ハァ!!」「ひょ───!」

 

 寸前で体を反転させて回避したフィルだったが、ユキハの太刀の切っ先は彼の腕をかすめた。

 

「今のは上手かったぜ、おチビちゃん」

 

「ありがとうございます!」

 

「うへ~、これはマズいなぁ~負けちゃうかもなぁ~………………なんてね♪ 姐さん頼んだヨ!」

 

 フィルはニッと歯を見せて笑うと後方へと跳び退く、すると彼の背後から姐さんと呼ばれた魔導師、アマンダが飛び出して呪文を唱える。

 

「クレイジー・ハリケーン!!」

 

 彼女の手にした杖から幾重(いくえ)もの竜巻が放たれ、ユキハとリッパーを切り刻もうと襲いかかる。

 

「魔銃アトミック!!」

 

 カレンが死角から撃った魔弾は、竜巻の中心へと到達すると爆発し、次々と竜巻をかき消していった。

 

「カレン、魔法の処理は任せたぞ! おチビは俺が援護してやる、攻めて攻めて攻めまくれ!」

 

「わかったわ!」「了解ですっ!」

 

 リッパーが指示を飛ばす様子を見て、フィルとアマンダは視線でお互いの意思を伝え合う。

 

(彼が司令塔ってところね、フィル、頼んだわよ)

 

(アイアーイ、了解ぞな♪)

 

 フィルとアマンダは二手に別れ、それぞれ別の方向から攻撃を仕掛ける。

 

「まだまだこれからだヨ! パニックブロー!」

 

 伸びたり縮んだり不規則に動き回る腕を縦横無尽に振り回し、フィルは三人を攻め続ける。

 

「っ! これじゃ近づけません!」

 

「俺があのピエロ野郎を直接叩く! スキができたら一気に突っ込め!」

 

 リッパーは、フィルの攻撃圏から離脱すると懐からダーツを取り出し狙いをつける、しかし──。

 

「スラッシュ・カーテン!」

 

 アマンダが放った魔法は、触れる者を容赦なく切り刻む壁となってリッパーの攻撃は阻み、ユキハ達と分断される。

 

「しまった! 罠か!」

 

「司令塔を囲ってしまえば連携は破綻する、簡単なことよね?」

 

 一陣の風となってリッパーの目の前に降り立ったアマンダは、涼しい顔で言った。

 

「全く、流石のS級ハンターって所だな、随分と対人戦闘に慣れてる様で……」

 

「ホイホーイ、僕を忘れてもらっちゃ困るヨ!」

 

 フィルは超人的な跳躍力を見せ、壁を軽々と飛び越えてアマンダの隣に着地する。

 

「形成逆転ね、抵抗をやめて大人しく投降しなさい」

 

「………やれやれ、俺もなりふり構ってられねぇな!」

 

 そう言うとリッパーは懐から火のついた爆薬や煙玉をばらまき、身を守るようにその場に伏せた。

 

「フィル! 防壁をお願い!」

 

「アイアイ! アース・シェルター!」

 

 フィルは両手を地面に着き呪文を唱えると、周囲の土が盛り上がり、二人を守るように覆い隠した。

 

(ちっ、やっぱりあのフィルって野郎は魔法も使えたのか………だが、今さら関係ねぇな)

 

 あちこちで起きていた爆発が止むと土の防壁は崩れ、フィルとアマンダが姿を現した。

 

「うひゃ~~凄い煙幕、何にも見えな~い!」

 

「落ち着きなさい、フィル」

 

 アマンダは風を操って視界を塞いでいた煙幕を晴らすと、そこにリッパーの姿はなかった。

 

「っ!? 物陰に隠れられた? 探すわよ、フィル!」

 

「アイアーイ、仰せのままに!」

 

 アマンダとフィルが一歩踏み出したとたん、前方から二人目掛けてダーツが襲いかかってきた。

 

「なっ!?」「ひょう!?」

 

 紙一重で回避した二人は、避けた先でカチリと何かを踏んだ感触を得た。

 

 すると地中からカギ爪付きの鎖が次々と飛び出し、まるで意思を持ったように二人を目掛けて飛び掛かってきた。

 

「どうだい? 本物の(トラップ)ってのはこうやって次の罠に誘導するように仕掛けるのさ!」

 

 どこからともなくリッパーの声が響き、二人を挑発する。

 

「こんなもの……! ウインド・カッター!」

 

 アマンダが放った真空の刃は鎖を断ち切り、二人を解放する。

 

「ハッハー、やるねぇ! だが俺をみつけねぇとどうしようもねぇな!」

 

 リッパーはなおも挑発するが、アマンダは冷静に耳をすます、やがて彼女はリッパーの居場所を割り出す。

 

 洞窟に反響して分かりづらくなっていたが、自身の作った風の障壁付近、ひときわ大きな岩陰が声の発生源だと突き止めたアマンダは再びフィルに目で合図する。

 

(フィル、左右から挟み撃ちにするわよ)

 

(アイ! 了解!)

 

 静かに、しかし素早く二手に別れた二人は手筈どおり岩陰に隠れていたリッパーを挟み撃ちにすることができた。

 

「動かないでっ! 下手に動くとその両腕とサヨナラする事になるわよ?」

 

「ちっ、勘がいいね! でもお二人さん、何か忘れてねぇ?」

 

 リッパーがそう言うと風の障壁の向こう側で、カレンが魔銃を構えていた。

 

「無駄よ、たとえ魔弾といえどその障壁に触れれば爆発する前に細切れよ、通れっこないわ」

 

「クックック、確かになぁ……だが、光ならどうだっ!!」

 

 リッパーがその場に伏せ、カレンが魔銃の引き金を引くと、アマンダ達の視界は魔銃から放たれた閃光で真っ白に染まった。

 

夫婦飛燕(めおとひえん)!!」

 

 アマンダの集中が切れ風の障壁が消え去ると、ユキハは二対の真空の刃を放ち、フィルの両腕(義手)を切り落とす。

 

 ぼやけた視界の中で、アマンダは何者かに腕を絡めとられ、拘束される。

 

「動くな……自分の両腕とオサラバしたくないだろ?」

 

 クツクツというリッパーの笑い声が背後から聞こえる、両腕と首を締め上げる細く強靭な糸は、彼が少し力を加えただけで肉体を易々と切断するだろう。

 

 アマンダは全身からゆっくりと力を抜くと、降伏した意思を表すように杖を地面に落とした───。

 

 

 

お読み頂きありがとうございます!

次回は4月15日に更新予定です!

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