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フォルトゥナ・ストーリア  作者: 英雄ひいろ
覚醒する魔導師
3/65

EP.1-3 情報屋

 翌日、グレンの両足の痺れがとれ、セトが何者であるかの調査を始めることになった。  

 

「今日は仕事が入っててアタシは同行できないけど、午後にはもう一度診察するから一度ここに戻ってきなさい」

 

「わかった、行こうぜセト」  

 

「ああ、ちょっと待ってて」    

 

 セトはミューズからペンと紙を借りるとローブの懐にしまい「よし、行こう」と言って軽く笑った。    

 

 ミューズの医院を出て、グレンはまず大勢の人が日々行き交う、街の中央広場(セントラルパーク)に向かう。  

 

 中央広場は円形の広場を石造りの壁が囲んでおり、東西南北の大通りに通じる門の隣に設置された掲示板の一つを調べる。  

 

「ここにはその日の特ダネとか、首都での失踪者の情報が載ってるんだけど、気になる記事はあるか?」    

 

 しばらく掲示板の記事を見ていたセトは「これ…」と言って一つの記事を指差した。    

 

 そこには『情報求む! 探し人! 黒髪に黒目の十代の少年が、3日前の正午から行方不明になっています! 詳しくはフギンとムニンの情報局まで!!』と、書かれた紙が張られていた。

 

「黒髪に黒目の十代──って、いきなりドンピシャじゃん!やったな!」

 

「そうだね、こんなに早く有力な情が見つかるとは思わなかったよ」    

 

 グレンは喜びからセトの背中をバシバシ叩き、セトも嬉しそうに微笑む。  

 

「よし!それならフギンとムニンの所に行こうぜ!」    

 

 グレンは記事を引き剥がすと小さく折り畳んで腰のポーチに押し込んだ。  

 

「ところでグレン、『フギンとムニンの情報局』っていうのは?」  

 

「あぁ、この街にはフギンとムニンって双子が居て、あっちこっちの情報を集めて新聞なんかを作ってるんだ、この掲示板の管理もその双子がやってるんだよ」  

 

 セトは「なるほど……」と言ってミューズから借りたペンで紙にメモをとる。  

 

「あの双子なら確かに何か知ってるかもしれないな……」    

 

 二人は早速フギンとムニンを訪ねて中央広場をあとにする、その後ろ姿を広場の中心に設置された噴水に腰掛け、禿頭の少年がじっと見ていた────。    

 

 朝市で賑わう商店街を抜けると、家の上にそのまま巨大な鳥の巣箱が付けられた様な建物にたどり着く。  

 

  看板には大きく『フギンとムニンの情報局』と書かれ、巨大な鳥の巣箱に設けられた幾つもの窓からは両腕の代わりに鳥の翼をもつ翼人達がひっきりなしに出入りしている。  

 

「相変わらず今日もすごい忙しさだな…」    

 

 グレンは受付に行き職員の呼び出し用のベルを鳴らす、すると巣箱に設けられた窓の一つから突風が吹き込み、翼人の青年が飛び込んでくる。    

 

 青年は巣箱から受付に繋がる吹き抜けを猛然と降りてくると、グレンの前に着地した。  

 

「人々の『知りたい』の声に答える情報通、フギン!ただいま参上!」

 

 桃色のハンチング帽を翼の先で弾き、フギンと名乗った青年は二人に話しかける。  


「やあやあこれはグレン様お久しぶりでございます、ん! 今日はお連れ様がご一緒のようですな、これはこれはどうぞよろしくお願いします! ワタクシフギンと申します、この情報局の第一局長をしており……」  

 

「は、はぁ…」    

 

 フギンはセトを見つけると、狭い受付から身を乗り出して翼でセトの手を器用にとり、握手をしながら自己紹介を行う。   

 

「あぁもう落ち着いてくれフギン、今日はこの記事について詳しく聞きたいんだ」    

 

 猛烈な勢いで捲し立てるフギンを宥めすかし、懐から取り出した記事を見せて今までの経緯を説明すると、すぐに答えがかえってきた。  

 

「なるほど、それでこの記事に書かれている少年とはセト様の事ではないか、ということですか」  

 

「あぁ、できればもう少し詳しく話を聞きたいんだ」  

 

「しかしこの記事に書かれている方はセト様ではないと思います、こちらをご覧ください」    

 

 フギンは新たに記事を取り出して見せる、そこにはセトとは別人の黒髪黒目の少年の写真が載っていた。  

 

「えぇ、コチラの方はアレス・フォーネル様、魔道師の名門フォーネル家のご子息にして次期当主ですね」  

 

「別人か…」  

 

 嘆息するグレンの隣で、セトはフギンの取り出した記事の写真を観察していた。  

 

「その写真がどうかしたのか?セト」  

 

「……この人、さっき中央広場に居たよ」  

 

「な、なんですと!?それは本当ですかセト様!」    

 

 セトの思いがけない発言にグレンとフギンの二人は己の耳を疑った。  

 

「中央広場に居たのか?オレはこんな顔の奴、見なかったぜ?」


「記事を掲載してからロクな情報がなかったのに、遂に有力な情報を得られるかもしれない!感無量です!」    

 

 フギンは受付から飛び出すとセトの背をぐいぐい押して急かす。  

 

「さあさあセト様、善は急げと言います!彼のもとへ連れてって下さいませ~!」  

 

「あ、ちょ、ちょっと」  

 

「おい!オレを置いてくなよっ!」    

 

 一行は情報局を後にし、中央広場へと向かった。  

文字数2000位の短編なら、一週間あれば全く無理なく続けられるものだな~。

_(_-~-)_

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