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38 クイーンローパー1

「俺も、まさかあそこまで戦えないとは思ってなかった」


 ゴブリンとの戦闘……というか馬形態による絶の一方的な殺戮の後、俺は自分のあまりのダメダメな戦闘に、自分でも呆れた。



「あんた、余裕ぶっこぎまくってたけど、本当にどこまでも使えない男よね。VRMMORPGを舐めすぎよ!」

「返す言葉もございません」

 アリスからのお説教を受け、俺は平原のただ中で正座中。


 でも、この姿勢ってすごくいいんだ。

 地面の上に座っりながら、立ったままアリスの説教を受けてるんだけど、このアングルだとアリスの外部装甲に守られた胸をちょうど見上げる位置になって……


 ――ゲシッ


「このすけべ!変態!」


 顔面蹴られたー!

 またしても、俺の顔が例の表情になっていたか。


 ク、クソウ。

 ジローのせいじゃねえ。

 全部スレイの奴がいけないんだ!


 我が身が可愛い(ジロー)は、あの表情をしでかしてしまう原因を、ラグーン内での分身(アバター)、スレイのせいにする。

 あんなにやついた顔など、リアルの俺はしてないぞ。

 スレイの奴がいけないんだー!


 なんて、心の中で自分のアバターに責任転嫁だ。




「まったく、絶ちゃんはこんなに可愛くて健気なのに、爪の垢でも煎じて飲んだ方が……いや、この変態男だと逆効果か」

「あの、アリスさん。俺は幼女には手を出さないから、それはないって」

「まさか、YESロリータNOタッチとかいうアレなの!?」


 この子、失礼にも俺の守備範囲を広く見積もりすぎだよ。

 俺は少女と幼女に、そんなことしないって。

 リアルの姪っ子に泣かれたら、俺はオロオロすることしかできない、まっとうな大人だよ。

 あの年頃の子に泣かれたら、俺は物凄く困っちゃう。



「安心してアリスちゃん。スレイはちゃんと特定の年齢……」

 そこで絶が俺の潔白を証明するため、助けに入ってくれる。

 ……のだが、語られ始めたのは俺の女性に対する性癖の方向性。


 しばしの間、絶が俺の性癖暴露をしてしまう。

 なお、語られた内容に関してはオフレコで頼みます。

 青少年には過激すぎるからさ……。


「ぜ、絶さん。頼むからこれ以上俺の心の中の闇を暴露するのはやめてー!」

「このド変態!」

 アリサが胸を両手で隠しながら、俺の顔面をまたしても蹴ってきた。


 ギャー、やめて。

 俺のリアルのHPと、スレイのHPまで尽きちゃう。


 虚弱体質持ちなんだから、手荒い扱いはやめてー。




 ◇ ◇ ◇




 そんな惨事もありました。

 どうしてこんなことになったんだ?

 俺は何も悪い事なんてしてない……はずだよな?



「しかしスレイ。もう少しまともに戦えるようにならないと、絶ちゃんが可哀想よ」

「いや、さっきの戦いは馬に乗ってたからダメだっただけだ」


 話が一回りして、なんとか元に戻ってこれた。

 今回は俺の性癖暴露大会でなく、俺がちゃんと戦えるかどうかって話だったからな。


「……そう言うのって、ダメな人が言う台詞よね。ダメだった原因を用意して、本気を出せなかったのは、そのせいだって言いだしちゃう人」

「いやいや、地面に自分の足がついてたら、ちゃんと戦えるから」


 ただでさえアリスから俺への好感度が低いのに、ここで俺の得意分野である戦闘まで低評価を食らってしまってはたまらない。

 VRでの戦闘だけは、俺の唯一の取り柄なんだよ。


 あ、ゴメン。VRの戦闘以外にも、俺には取り柄があるぞ。

 きっと……何かあると思う……。


 ……いかん、自分でも長所が何も出てこないのって、かなりヤバくね?




「もういいわ。スレイ、あんたに今から簡単な戦い方をレクチャーしてあげるから」


 もう、俺の評価は散々だよ。




「ところでアリス。あれはなんだろう?」

 俺は平原の隅っこから、こっちへ近づいてくる物体の方を見る。


「そうやって私が振り向いた隙に逃げ出すつもり?」


「いや、本当に何か変なのが来てるんだって。なあ、絶」

「うん、本当だよ。アリスちゃん」

 絶が同意する。


「絶ちゃんが言うのなら間違い……」

 俺より絶への信頼度が絶大だな。

 俺たちが気になる物体の方を、アリスもようやく振り向いて確認する。


 直後、アリサが硬直したけどな。



 平原の彼方から近づいてくる物体は、ウネウネとした触手を生やしたイソギンチャクみたいな生物。

 ただし全長5メートルくらいの超巨大サイズ。

 そいつが近くにいたゴブリンを触手でからめとって、あられもないことをし始める。


 気持ち悪いので勘弁してくれ。

 誰得だよ、ゴブリンのあられもないシーンって!


 なお、超巨大イソギンチャクは、AR表示では『クイーンローパー、モンスター』となっていた。


「ヒャッホウ、エロゲモンスターの登場だ」

 俺は小声で歓喜の声を上げるけど、直後アリスに睨まれてしまった。


 ただし、今回は蹴りはなし。



「冗談でしょう。あんな化け物の相手なんてやれないわ。今すぐ逃げるわよ!」

 至極まともな判断だ。


 俺もあれとは戦いたくない。

 ああいうのと戦うのは、巨乳美女の役目。

 ……俺だけ安全圏内からアリスの戦い方を見守ってられるなら、いいんだけどなー。


 そんなことを考えてる間に、アリスは白馬のヒルドを呼び寄せて跨る。



 ――ブオオオォォォー!!!


 直後、触手お化けのクイーンローパーが咆哮を上げた。


 途端に、ヒルドは足がすくんでしまったのか、棒立ちになって、その場からピクリとも動かなくなってしまった。


「ヒ、ヒルド。逃げるわよ。早く走って!」

 アリスが愛馬に頼み込むが、それでもヒルドは動こうとしない。



「触手ぜ……」

「絶、お前がそれを言ってはダメだ。それを口にすると、アリスの俺に対する評価が、修復不可能になる!」


 絶は幼女姿でも、俺のエロ系VRのアレコレを知っているので、時に見た目に似合わない言葉を口走ることがある。

 でも、それを絶が口にすると、絶の主人である俺の変態度が上がるだけ。

 とても、そんな言葉をアリスに聞かせるわけにはいかない。



「でもスレイ、どうする?もしかして、このままスレイの好みの展開にするの?」

 俺好みの展開とは、もちろんローパーの触手とアリスが……。

 絶は外見の姿に似合わず、頬を赤く染めながら、クネクネし始める。


「ぜ、絶ー。ここはオンゲの中だからそういう発言はやめよう。そう言うのはオンラインでなく、ローカルな場所だけにしておこう」

「はーい」


 あああ、絶の脳内がピンク過ぎる!

 誰だ、こんな見た目幼女にとんでもない教育をしたアホは!

 ああ、俺だよ。全部俺がいけないんだよ!



 もう、俺の中では迫ってくるクイーンローパーのことなど眼中になく、別の事で大ピンチになってるよ!


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