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32 魔法系スキルと女騎士

 獲得しているスキルをあらかた検証・考察した。

 あと残っているのは魔法系のスキルだけど……俺ってまだ魔法の使い方知らないんだよな。


 一応、獲得してる魔法系のスキルも見ておくか。



 ――闇魔法

 影の腕が伸びたり、影の形が剣や槍になって敵に襲い掛かる!

 なんて魔法が使えたら凄いな。


 そもそも魔法の使い方を知らないから、完全に俺の願望だけど。



 ――血魔法

 吸血鬼っぽいな。


 ――死霊魔法

 ネクロマンサーにでもなるのか?

 確実に死体から、ゾンビやスケルトンを作り出して動かす魔法だろ。

 死霊魔法と眷属支配スキルは関係ありそうな気もする。だけど俺、グロイの嫌いだから、魔法の使い方が分かっても死霊魔法は使わないだろうな。



 ――魔眼

「うおおおっ、俺の左目に封印された魔眼が疼く!」

「ス、スレイ大丈夫!?」

「ただのネタだから気にしないでくれ」

「あっ、そう」


 やらずにいられない中二病ゴッコだな。

 絶も、俺の芝居をあっさり受け流したし。


 この魔眼スキルは使えたら格好いいな。

 束縛の魔眼とかないかな?


 なにを束縛するのかだって?

 それはもちろん巨乳なお姉さんたちを……(以下略)。


 あとは、視線を向けただけで炎とか出せないかなー。

 それより巨乳お姉さんを魅了して、俺と情熱的な一夜を……(以下略)



 しかし魔眼に関しても詳細は不明なので、今は死にスキルだ。




 これで俺の持っているスキルは全部だな。


 しかし、思うんだけど、

「スキルって、もしかしてレベルが存在してないか?」



≪特定の条件を満たしたことにより、能力鑑定のスキルを獲得しました≫



 はい、本日もいただきました、スキル。


 今回いただいたのは『能力鑑定』。


 とりあえず俺の所持しているスキルを眺めてみるかー。


 するとなんということでしょう、

『能力鑑定 (微)』

 という表示を始めとして、俺の所持しているスキルの後に、微や、弱、中などという文字が追加されている。



 確実にスキルにレベルが存在している。

 ただし数字表記でなく、漢字一文字で表記とか……



 能力鑑定のスキルレベルが高くなれば、数字でレベルを確認できるようになるんだろうな。

 今は微妙感が漂うが、そのうち能力鑑定が役に立つ日が来るだろう。

 その日が来るために、スキルレベルが、さっさと上がってほしいものだ。





 で、能力鑑定にそれてしまったけど、魔法の使い方と言えば、例の初心者狩りをしていたプレーヤーから手に入れたクナイがある。


 ――魔手裏剣ウルフファング。


 そこは手裏剣なんだから和名で行こうよ。

 と言いたくなる武器だが、そこは気にしないことにしよう。



 俺はウルフファングを取り出す。

「なんだか今にも壊れそうなくらいボロボロだな」


 戦っていた時はそこまで気にする余裕がなかったが、あまり長く使えそうにない。

 多分武器の耐久値が、かなり減っているのだろう。


 鍛冶屋にでも持っていけば、耐久値を修復出来るだろうが、一発試し打ちするくらいなら問題ないはず。



 今度は絶を怒らせないよう、ラビットがいない方向にクナイの先端を向ける。


 初心者狩りはこう言って使っていたな。

「ウインド」


 ――ブウォン

 風の塊が駆け抜けた。

 魔力感知スキルでも、ピンボケした魔力の塊が飛んでいくのが見える。


 それはいいけど、俺の手元にあるウルフファングが、見るも無残にボロボロと砕けていった。


「……レアっぽい武器だったのに、勿体ない」

 今の魔法の一発で、耐久値がなくなって完全に壊れてしまった。



 武器の能力によるものとはいえ、初めて使った魔法は、感動よりも残念さが付きまとう結果になってしまった。




 スキルと魔法の検証はこれで終わり。

 魔法の使い方はまだ知らないので、この問題は結局先送りだ。


 で、俺は初心者狩りの男から手に入れた量産品と思しきクナイを持って、適当に地面に向けて放り投げていく。

 クナイを使った戦闘の練習だ。


 なお、ラビットには投げないぞ。

 絶が俺を怖い目で見てるから。




 ◇ ◇ ◇




 その後俺たちは陽が傾き始めた段階で、ノートンの村へ戻った。



 さて、今までお預けをくらっていたが、ようやく待ちに待ったお胸との再会の時間。


 いやいや、また見苦しい姿をさらけ出して、イケメンである(スレイ)の株価を下げてはまずい。

 ここは紳士的に、極めて冷静に、クールに、落ち着いていこう。


 宿屋の娘さん、ぜひそのお胸を拝ませてくれー。



 宿屋のドアを開けると、その向こうは広間になっていた。


 そこではワイワイガヤガヤと、旅装束に身を包んだたくさんの人が賑やかに食事をしている。


 でも、そんな連中はどうでもいいさ。


「娘さんはどこかなー」

 俺は視線をキョロキョロとさせ、周囲を見回す。



 ムムッ、レーダーに反応あり。


 こ、これはなんだ!

 二つの大福のように白くて弾力のある塊が存在するぞ。


 だがなんてことだ。鎧に阻まれて、直接目で視認できない。

「クッ、あの外部装甲め。あれがなければ見事な甘くて蕩けそうな大福が見えるというのに……」


 宿屋の娘さんじゃない。

 食事をしている連中の中に、銀色の鎧に身を包んだ女騎士がいたのだ。

 金髪のウェーブがかかった長い髪をしていて、肌は白雪の用に白くて繊細。

 撫でればスベスベしてるだろうな。エロゲなら、迷わず突撃しちゃうよ。


 だけど、そこは我慢だよ我慢。

 ほら、ラグーンはオンラインゲームだし、エロゲではないから。下準備をを踏まないといけないだろう。


 落ち着け、落ち着け、俺の中の小宇宙コスモ

 ここで爆発してはいけない。

 焦りすぎて、全てを台無しにするわけにはいかないだろう。



 俺は自分の中に渦巻く、情熱(よくぼう)の炎を何とか抑えようとする。


 だが、そんな俺を、女騎士の視線が捉えた。

 間違いなく、彼女は俺の方を見ている。


 整った綺麗な顔立ちをしている美人さんだが、その視線は意外に鋭く、俺のハートを貫くように見てくる。


「ねえ、スレイ」

「なんだい、絶?」


 ちょっと呼吸が荒くなって、ハァハァしたかもしれないが、それでも冷静に答えるだけの余裕が残っているぞ。

 ほら、俺って冷静なイケメン紳士だから。


「今すぐ逃げないと、きっと痛い思いをすることになるよ」

「安心しろ。俺はどんな結果になっても大丈夫だ」


 絶と話しているうちに、女騎士さんが俺の前まで来て立ち止まった。

 金色の細い眉が、つり上がっていている。


「おい、貴様!」

「なんですか?」


 ウヘヘー。

 声も言いなー。

 これで頑健な胸部装甲さえなければ、眼福なのに。



「下卑た顔で私を見るな!」


 ――ブウォン!


 空気が唸り声を上げ、女騎士の拳が迫ってきた。

 しかし俺を誰だと思っている。

 俺は、スレイ。


 あの鬼畜師匠のせいで獲得してしまった数々のチート能力を持つ、VR空間内では屈指の強さを持つ男だ。

 そんな俺の前で、女騎士の拳ごとき命中するわけがないだろう。


(でも、胸から視線が外せない)



「グハッ」

 直後、俺の顔面に女騎士の拳がめり込み、その場から派手に吹き飛ばされた。


「あ、ありが、とう、ござい、ます……」

 顔面が物凄く痛いけど、でもこれってご褒美だよね。


 でもさ、顔面陥没とか、それぐらいの痛さじゃない?

 いくらご褒美とはいえ、俺は痛いのに耐性ないから辛いんだけど。



「これに懲りたら二度と私の前にそのにやけた面を出すな」

 そう女騎士は言う。

 けど、俺は体を動かせなくて、返事を返すこともできない。


 ダ、ダメージがでかすぎなんですけど!




「すみません、僕が後でちゃんと叱っておきます」

 それどころか吹き飛ばされた俺の横で、絶が女騎士に謝り始める。



「……君は、この男の連れか?」

「はい、絶って言います」

「……ホームAIなのか」

 女騎士は絶のAR表示を見たのだろう。

 PC(プレーヤー)であれば、AR表示でそれぐらい簡単に調べることが出来るからな。


「こんな小さな女の子が、あんな男のホームAIとは。……ねえ、絶ちゃんって呼んでいいかな?」

「いいですよ。お姉さんの事は、アリスさんと呼んでも?」

「ああ、構わない」

 絶の背の高さに合わせ、視線を合わせるためにしゃがむ女騎士アリス。


 なお、俺は胸だけ見ていたので、女騎士のAR表示を全く見ていなかった。

 ホームAIの絶は、AR表示を見ることはできるから、それで女騎士の名前を見たのだろう。


 そうか、アリスさんと言うのか。


 でも、いまだに俺はピクリとも動けないので、何も言えない。



「こんな男のホームAIをしてると、辛いことがたくさんあるんじゃない?」

「辛い事?」

「そうよ。だって、こいつが私を見る顔が明らかにおかしかったもの。も、もしかして絶ちゃんは、この男にとんでもないことをされているんじゃ……」

 そこで言葉を濁らせてしまうアリスさん。

 ちなみにとんでもないことの部分は……言わなくても想像つくよね。


 しかし、そんなアリスさんに絶は答える。

「スレイはリアル"でも"とってもダメな大人だけど、それでも僕がついていてあげないといけないんです。そうしないと、スレイって生きていけないもの。部屋の片づけは全然できないし、料理も作れないし、お金の管理もダメダメ出し、それに……」

 その後、絶はリアルの(ジロー)のダメな点を次々と上げ始めた。


 ……あ、あれ、なんだか俺のリアルの心が痛いんですけど。

 殴られた顔面だけでなく、豆腐メンタルの心まで痛い。



「そうか。小さな見た目でつい同情してしまったけど、こんな男でも絶ちゃんは大切にしているんだね」

「はい、僕がスレイの面倒を見てあげないと、可哀想すぎるもの」

「なんて健気な子だ」


 そこで女騎士の目から、一粒の涙が零れ落ちる。

 感動の涙って奴だな。



「フゥー、ヒィー」

 でもさ、俺の扱いひどくね。

 ていうか絶、お前は俺の事を可哀想な物扱いしていたのかよ。

 さ、さすがにここは絶の主人として、言わなければならないことがある。俺はまともな二七歳の大人だぞ。


 そんな俺が、可哀想なわけが……



「絶ちゃん、辛いことも多いだろうけど、これからも頑張るんだよ。そうだ、せっかくだから、今から一緒に晩御飯を食べよう。私が奢ってあげるから、何でも食べていいからね」

「えっ、本当ですか。ワーイ、よかったねスレイ」


 そこで絶が俺の方を見たけど、

「ウワッ、これはひどい……」

 なぜか俺を見る絶の顔が引きつっていた。


 なお現在進行形で、俺は口も体も動かせない重篤状態。



 そんな絶の肩に、アリスさんがぽんと手を乗せる。


「大丈夫だよ。ここはゲームの中だから、リアルの彼は傷一つついてないさ」

「それもそうですね。じゃあ、スレイが復活するまでの間、ご飯をごちそうになりますね」

「ああ、たくさん食べていくといい」


 そんな感じで、俺はアリスさんと絶に見捨てられてしまった。



 ――お、俺、豆腐メンタルだから捨てないでー。

後書き



 ――小宇宙コスモ


 聖闘士星矢ですね。

 もっともジローの場合、コスモとは関係ない別のものが爆発するわけですが。

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