30 スキルの検証と考察一
前書き
本日は二話更新です。(一話目)
宿屋の準備はまだかかるようなので、ノートン村を出て、周囲に広がる平原へやってきた俺と絶。
黒馬状態になった絶に跨り、平原をある程度進んだので、村からはかなり離れた場所までやってきた。
周囲には、ホーンラビットやモコモコラビット、フカフカラビットなんて名前の、ラビットの上位種らしいモンスターたちがいるだけ。
この辺りにはPCの姿はもちろん、NPCすらいない。
モンスターは、俺たちがいても襲ってくることはない。
こちらから手を出さなければ、戦闘になることはないだろう。
「俺はしばらくスキルの検証をするから、絶はその間ラビットでも眺めてていいぞ」
「スキルの検証?」
「ああ、今までにポロポロとスキルを獲得したから、ここらで確認しておこうと思ってな」
「ふーん」
スキルの検証に関して、絶は特に関心がない様子。
「ラビットたちと遊んでるね」
「多分近づいたら攻撃されるから、眺めるだけにしておけ」
「ううーっ、あんなに可愛いのに、モンスターなんてひどすぎる!」
可愛らしい動物好きの絶は、ラビットがモンスターであることに不満なのだろう。
しかし俺から言わせてもらえば、モコモコだのフカフカだのと名前の付けているラビットたちの違いが理解できない。
見た目はどっちも、ちょっと大きめのウサギでしかない。
『経験値になるのか?』
『レアアイテムはドロップするのか?』
程度の事は考えるが、俺はガチ勢ではないので、ラビット共を虐殺して回る必要はないしな。
――え、この前ラビット五百匹虐殺して回ったのは、どこのどいつだだって?
知らんよ。
人間、自分にとって都合の悪いことは、記憶に蓋をして忘れなきゃやってられないよ。
年齢を重ねるほどに、俺はそのことをしみじみと実感しているからな。
それはさておき、スキルなどの検証。それと考察といこう。
攻略サイトを見ればすぐに分かるけど、今は何も知らない状態でゲームを楽しんでいきたいので、サイトはまだ見ないぞ。
まずは俺の種族が人間(吸血鬼・真祖)ということ。
吸血鬼と言えば、ブラム・ストーカー著の『ドラキュラ』を、真っ先に挙げることが出来るだろう。
古来より人間の生き血を啜る怪物は存在しているが、今日ほど吸血鬼の存在を有名にしたのは『ドラキュラ』で間違いない。
VR物の小説の定番が、百年前の『ソード・○ート・オンライン』から始まったように、吸血鬼を題材にした物語は、『ドラキュラ』が始発点と言っても過言でない。
ヨーロッパにおける吸血鬼と言えば、美人の処女の生き血を啜り、太陽の光に弱かったり、流れる水の上を飛び越えられないなどの特徴がある。
「俺は処女でなくていいから、胸が大きければ全然OKだなー」
ついでに吸血するなら、首筋よりも胸にかぶりつきたい。
わおっ、そう考えると吸血鬼ってなんて素敵な種族だろう!
……と、このままだと考える方向が脱線してしまう。
いや、このまま脱線しまくってもいいんだけどなー。
……とりあえず、冷静になろう。
俺の場合は吸血鬼にはなったが、日光を浴びても全然問題なし。
ラグーンではHPが減ると、HPバーや数値が減るのでなく、リアルに近い痛みを体験させられることになるが、そう言ったものはまるでなし。
戦闘能力が弱体化していることもない。
夜間戦闘能力向上なんてスキルは獲得したが、だからと言って、太陽の元で弱体化するスキルは所得していない。
「これは俺が真祖だから、吸血鬼の持つバットステータスの影響を受けないってことか?」
そう考えるのがいいいかもしれない。
あとは東南アジアでも生き血を啜る吸血鬼系の人間がいるそうだが、そいつらは燦々と光り輝く太陽の光の元で平気で日光浴をしている。ヨーロッバの吸血鬼が苦手とするニンニクだって、ガリガリと齧って平気でいるとのこと。
ヨーロッパの吸血鬼が陰気でモヤシ体質だとすれば、東南アジアの吸血鬼どものなんと逞しいことか。
「なるほど、俺はヨーロッパの貧弱な吸血鬼どもと違って、東南アジア系の吸血鬼なんだな」
よし、種族としての吸血鬼問題は、これで解決ということにしてしまおう。
どうせこれ以上考えても、何もわからないし、今のところ不都合はないから問題ない。
で、種族としての吸血鬼はいいが、問題はそれに関係したスキル。
――吸血。
血を吸ったらHPが回復するってのが定番だよな。
でもさ、ラグーンって五感の再現度が高くて、味覚だって当然リアルに近いわけ。
俺、血なんて飲みたくないぞ。
巨乳お姉さん相手なら考えるけど、さすがにこの辺りにいるモンスターの生き血を啜るとか……マジで勘弁してください。
「当分、用のないスキルだな」
――吸血鬼化。
相手が死ぬまで血を吸えば吸血鬼化できるのかな?
それとも吸血するだけでいいのか?
あるいは魔法的な方法でできるとか?
「よく分からんな。それに今のところ必要性ゼロだし」
――眷属支配。
眷属がいないから、試しようがない。
吸血鬼化を使った相手が眷属になるんだろうけど、そもそもどうやれば吸血鬼化できるか分からないので、検証しようがない。
ところで、ペット枠に割り振られてる絶も、俺の眷属扱いになるのだろうか?
「ピョンピョンピョン」
気になって絶の方を見たら、ラビットたちが飛び跳ねるのに合わせて、無邪気に飛び跳ねていた。
可愛い子だ。
こうしていると外見相応の幼さに見える。
……俺、絶の教育を確実に変な方向にしてるよな。
さ、さあ次の検証に行くぞ。
――不死。
これも種族が吸血鬼になった時に獲得したスキル。
言葉通りなら、死んでも死なないってことだよな。
とはいえ、ゲーム的にはPCが完全な不死になるなんて有り得ないはず。
せいぜいHPが0になっても、一定確率で蘇るとかか?
とはいえ、ラグーンではHPが減るとリアルで痛い。
今までに殴られたりして、それは経験済みだ。
俺は死ぬ感覚なんて知りたくないから、不死に対しての検証は絶対にしないからな!
っていうか、ゲーム内で死ぬのが怖い!
SP0状態に陥って、既に二回も死を覚悟するような動悸や痙攣に襲われている。
HP0だと、痛いでは済まないレベルの痛みを与えられそうで、マジで勘弁だ。
今あげたのが、吸血鬼関係の能力かな?
他にも種族が変化した際に獲得したスキルがあるけど、今あげたものほど理解し辛いものじゃない。
ということで、検証を続けていくとしよう。
まずは分かりやすいところをいこう。
――SP最大値上昇、技量最大値上昇、敏捷最大値上昇。
多分プレーヤーの基礎ステータスの数値を上げるスキルだろう。
技量や敏捷は……た、多分効果があるんじゃないか?
俺のプレーヤースキルが、ゲームのシステムを明らかに超えてる部分があるので、有難みゼロだ。
SPに関しては、最大値が上がってくれた方が嬉しい。
このスキルを所持していても、今までに二回もSPゼロで気絶させられているが、あった方が確実にありがたいものだ。
もうSPゼロでの気絶はごめんだ。
――身体能力向上
攻撃力とか、防御力、素早さが上がる。
そんな感じで、俺の基本ステータスが全体的に底上げされるスキルだと思う。
吸血鬼の真祖なんだから、普通の人間より体が強化されている……それくらいの恩恵があってもいいよな。
――虚弱体質
なんでこんなスキルを獲得したんだ?
俺はモヤシでも貧弱でもないぞ!
少なくとも、ゲームの中での俺は、弱くなんてない!
とはいえ、このスキルって確実に弱体化の能力だよな。
うわー、いらねぇスキル。
どうにかして消せないか?
――夜間戦闘能力向上
名前のまま夜に戦闘能力が向上するスキルだな。
いかにも吸血鬼っぽいスキルだと思う。
もっとも、どれくらい強くなるのかはいまいち分からないけどな。
――HP自動回復(大)とSP自動回復(大)。
単純に、HPとSPが回復するスキルだろう。
それも大とついているから、回復量が多いはず。
オンラインRPGでは、HPやMP、SPなどが時間経過で回復していくことが多いけど、その回復量が多くなるということだろう。
ただしHPなどの残量を、数値やバーで確認できないゲームだ。
大とかつけられても、ありがたみが全然分からん。
しかし、大とついているからには、その効果は大きいはずだ。
HPに関しては、今までに殴られたりしたけど、結構立ち直りは早かった……かな?
というか、俺がダメージをまともに受けたのは、全てPTメンバーからの攻撃によるものだ。
このゲーム、FFがあるな。
そしてSPの方だが……SP切れで二度も倒れてるからなー。
ただ、ラビットを殺戮していた時は、攻撃を回避し続けても、疲労感を特に覚えなかった。
たぶん、役に立っているんだろう。そう信じたい。




