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3 隊長からのご褒美

 頭の中に流れたのはシステムボイスだろう。

 だが今なんて言った!?

 種族が転生した!?

 吸血鬼の真祖?


 あと、いろいろ訳の分からないスキルをまとめて獲得したよな?



 俺は頭の中で訳が分からないと思いつつ、ログを確認できないかと考える。


 すると視界の端に、ログが表示される。

 思っただけで表示がアクティブになるとは非常に便利だ。



『特定の条件を満たしたことにより、プレーヤースレイの種族が人間から、人間(吸血鬼・真祖)に転生しました』

『吸血鬼・真祖に転生したことにより、闇魔法、血魔法、死霊魔法、吸血鬼化、眷属支配、不死、吸血、身体能力向上、魔眼、暗視、HP自動回復(大)、SP(スタミナ)自動回復(大)の各種スキルを獲得しました』



「……マジで吸血鬼の真祖になっとる。っていうかこの種族の詳細とか確認できるのか?」


 しばらくログを見ていれば、AR表示が出てきて説明が出てきたりしないだろうか?

 だけど、ログを眺めていても何も変化はない。


 ならばと、次に自分のステータスを確認してみる。



 ステータス画面には、名前がスレイとあり。種族はやはり間違いなく、"人間(吸血鬼・真祖)"となっている。

 HPやMPと言った、RPGでは定番のステータス表示はなく、そこから下には闇魔法、血魔法、死霊魔法……と、先ほど獲得したスキルが並んでいた。



「なんだよこれ、バグじゃないのか?」

 そう思いながら、頭を傾げて考える。



 事前にPV(プロモーション・ビデオ)ゲーム内画像(スクショ)は見たものの、Wikiなどで事前情報は全く調べてなかった。



「ま、いいか。とりあえずその辺にいる人にでも聞いてみるか」


 悩んでいたのはわずかな時間。

 どうせ始めたばかりの初心者にそんなことわかるわけないだろうと気楽に考え、俺は周囲を見回した。




 ◇ ◇ ◇



「貴様がこの地に新しくやってきた新米だな。名は何という?」

 いきなり背後から、上から目線で大声で話しかけられた。


「いきなりなんだ?そんな大声で怒鳴らなくても聞こえて……」

 振り向くと、そこには胸にたわわな実を二つ宿した、茶色に栗色の瞳をしたお姉さんの姿があった。鉄製の鎧を見に纏っているが、ところどころボディーのライン部分に鎧がなく、むき出しの肌が露わになっている。

 下半身なんて、鎧がほとんどなくて美脚が丸見え。


 な、なんて素晴らしい、もとい、けしからん格好だ!

 視線を胸に向けるべきか、美脚に向けるべきか迷ってしまうじゃないか!


 そうして見ていると、AR表示が出て、NPC(ノン・プレーヤー・キャラ)と表示される。


 しかし、俺にはそんな些事どうでもいい。



(グッジョブだ。この姉さんをデザインしたグラフィッカー、グッジョブだ!

 エロイ女騎士だぜ!)



「お姉さん、俺はスレイ。君のことが大好きだー!」

 俺は童心に帰った少年のように、自分に素直になることにした。

 そのまま女騎士のたわわなお胸に、両手を伸ばしながら突撃だー。


 ――ブオンッ

「ガフッ!」

 直後、俺は女騎士にぶん殴られ、その場から吹き飛ばされてしまった。


 あまりに振られた拳が早すぎて、反応している暇すらなかった。

 そのまま地面に派手に倒れ込んでしまう。




「うっ、ううっ。痛い、痛すぎる……」

「き、貴様。今どこに突撃しようとした!」

「それはもちろん、その立派なおむ……ゲフッ」


 今度は鳩尾を蹴られました。

 って、足のつま先が金属製のブーツじゃない。


 も、物凄く痛くて、息が出来ないんだけど。

 つ、辛すぎる。し、死にそう……。



「こ、この破廉恥男め!」

 そう言って胸を隠すように両手を当てる女騎士。ただ、その顔はほんのりとだが、赤くなっていた。



(ナ、ナイスだスレイ。お前の見た目のおかげで、早速女騎士とフラグが立ったぞ)



 そう思いながらも、俺の中で視界がぐるりと回る。次の瞬間、胸の奥が気持ち悪くなると、泡を吹いてしまった。

 これ、本当にVRなの?現実なんじゃね?


 そこで俺の意識は闇の中へ落ちてていき、途切れてしまった。




 ◇ ◇ ◇




 ――バシャッ


「うおっ、何するんだ!」

 いきなり水をぶっかけられた俺は、目を覚まして叫んだ。


 すると目の前には先ほどのナイスグラマーな女騎士がいる。

 あれが制作した超巨乳のファースト女性キャラには劣るものの、あれは次元が異なる乳お化けだから仕方がない。

 それにしても、この女騎士も実に素晴らしい物を持ってるなー。


 あと、ついででごつい筋肉もりもりのマッチョマン騎士の姿もある。鎧を着ているから間違いなく騎士だろうけど、それにしてもがたいが良すぎ。

 ちなみに禿頭だが、どうも毛を剃っているだけのようで、天然物の禿ではない。

 手には木製のバケツを持っているので、このマッチョマンの方が、俺に水をぶっかけてきたようだ。


「この地にきた新米野郎。私の名前はリズベルだ。ここではお前ら新米どもに教育を施す教導隊の隊長を務めている。もし、次も私に襲い懸ろうとしたら、お前を真っ二つにしてやるからな!」

 女騎士改め、リズベル隊長殿は、俺に向かって険のこもった視線を向けてきた。


(ウヘヘッ、そんな顔で見ないでくれよ。照れちゃうじゃないか)


 ――ゲシッ


「ちょっ、ちょっと隊長殿。どうしていきなり蹴ってくるんですか?」

「次にその顔したら、真っ二つにするよ」


 おかしい。

 俺が嫉妬の炎に身を焼きつつも作り上げた、この完璧ハイスペックイケメン野郎スレイの顔を前にして、この隊長殿は一体何を言っているんだ?


 ――まるで理解できないよ?



「下心見え見えの顔してるんじゃないよ」

「ギャフッ!」


 またしても蹴られてしまった。



 い、いかんな。

 どうもギャルゲーばかりし過ぎたせいで、顔の筋肉がダメダメになってしまっているらしい。

 お、落ち着け俺。

 ラグーンは、確か18禁ゲーだったはず。


 ここは紳士的な対応をしておこうじゃないか。


 そう思い直して、俺は多分にやけ切っていただろう表情を無理やり元に戻す。

「失礼しました、隊長殿」

「分かればよろしい」


 納得した様子で、俺の目の前で腕を組む隊長。



 にしても、やっぱりあの胸はいいよなー。

「なので、早速お食事でもご一緒……ギャフン」



 隊長が、心底冷め切った目で、汚物を見るような目で俺を見下していた。

 ちなみに、またしても鳩尾に蹴りを食らってしまった。

 ああ、その顔も素敵でいいなと思いながらも、俺の意識は再び闇の中へと落ちていって、気絶してしまった。



(……というか、この闇落ちって、HPが0になって死んでるとかってないよな?)

 気絶する中、俺はそんなことをおぼろげに考えてしまった。




 ◇ ◇ ◇




 ――バシャッ


 またしても水をぶっかけられて意識を取り戻す俺。


 デジャビュだな。

 いや、デジャビュも何も、さっきからこれを繰り返してるんだが。



 だが意識を取り戻した俺の目の前には、巨乳隊長の姿はなく、筋肉もりもりのマッチョマンしかいなかった。


「隊長は?」

「私の名前は、マッチ。新米であるお前の教育を隊長から任された」

「……あ、はい。それで隊長は?」

「お前の面倒は私が見る。分かったら、イエス・サーと答えるのだ!」


「……」

 これって多分ゲーム開始時の導入イベントだよな?

 てことは、これってチュートリアル的なイベントだよな。


 とはいえ、俺はそんなものより、巨乳隊長がーーー!



「イエス・サーと答えよ」

「ノー・サー」


 男のマッチョに興味などゼロの俺は、反発して答えてやった。



 ――バシャッ


 またしても水をぶっかけられてしまった。


「答えはイエス・サーだ。それ以外は認めない」

「ノー……」


 ――バシャッ


「答えはイエス・サーだ。それ以外は認めない」

「……」


 ちょっ、なにこれ。

 昔の出来の悪いRPGの選択肢じゃないか。


 イエスと答えるまで、永遠に無限ループ続けるイベントなのか!?



「……さっきの隊長さんになら、イエス・サーて言います」


――バシャッ


 またしても水をぶっかけられてしまう。



「答えはイエス・サーのみだ。それ以外は認めない。それと隊長には、サーではなく、マムと言え」

「イエス・マム」


「愚か者!マムは女性の上官に対して使うのであって、俺は男だ!」




 ああ、なにこのイベント。頼むから今すぐスキップさせて。

 俺は心の中でぼやかずにいられなかった。


後書き



 やっぱりノクターン行きの話じゃないのか?

 いや、そこまでエロい事はしてないですよ。


 なんかSMみたいなガガガガガガガガ……

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