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Vermilion~ヴァンパイア+インキュバスでチートな少年(仮)~  作者: にゃさぎ
第一章 美の街と、『双子魔術師』と、白虎の少女
17/21

―17/僕が中心になって、事件が起こっていそうな気がするのですが。―

ちょっとだけ長めかもしれません

 何度目の朝だろうか?確かこれで三度目の朝になるだろう。そんなことより昨日のデメテルさんのキャラ崩壊は何だったのだろうか?

 あの後にギルドカードが更新されたらしい。早速確認しよう。


 ステータス

 Lv:2

 HPT:1020/1020

 MPT:127000/127000


 ATK:92

 DEF:87

 WIS:2010

 MEN:79

 SPD:121

 DEX:71


 お、COUNTER STOPの表示が消えてちゃんとMPが分かるようになってる。こう見ると意外とMP少ない……のかなぁ、基準というものが分からない故に起こる認識の違いである。そしていつの間にかレベルも上がっている。……それでも2ですか、成長速度どんだけ遅いんだろう。


 その理由は寄生の新たな能力の弊害でもあった。


≪寄生:Lv3:CT19≫

 対象の血又は行為によって相手の能力とステータスを恒久的に得ることができる。能力のレベル、ステータスの上昇率は相手の血の量(依存)または感度(8%固定)によって決まる。


 この能力には次の制約がある。

 ?対象は「知能」を持った生物であり、Lvが高くなるほど低い知能を持った生物の能力を得ることができる。

 ?同じ相手に同じ方法で能力を得ることはできず、各種ステータスを得る量は1/3になる。

 ?既に保有されている能力を持っている場合、レベルは今ある能力にプラスされる。

 ?敵を倒すことによって得られる経験値は通常の1/10になる。

 ?寄生はレベルと同じ日数使わないと、副作用として自動的に相手の血を吸い、殺してしまう。


 つまり僕の場合は経験値によるレベルアップを狙わず、寄生の効果によって少しずつ能力値を底上げする方が得策なのだろう。




 支部長デメテルによる召集命令がかかったのは午前八時少し前のこと。ある程度ゆっくり食事を済まし、汗を備え付けのシャワーで流し終わったくらいの時間である。


「んー」


 そして改めて分かるMP消費の半端なさ。ただの光の玉を出すのに100も消費するとか魔法技能ないですよね。本当にありがとうございます。


「ニコ。魔力のコントロールが出来れば一般の魔法使いレベルにまで収まるから大丈夫」


 そんな様子の僕を慰めに……否、付き添って集会の内容を聞くためにチェムとリュミエールが合流している。


「そういってもな……いまいちよくつかめないんだ」


 指定された席に座りつつ尚も魔法技能を練習する。というか、待ち時間が暇なのだ。


「どうやったらそういうコントロールができるんだろうな」


「「慣れ(ですよ)」」




 そんな会話をしている内に集会が始まったようだ。デメテルが前に出るや否や周りの空気が張りつめたように、変わる。


「簡潔なお知らせだ。これよりここ、暗殺ギルドアムドゥスキアス支部は三日間、厳戒態勢と実演訓練を行う。三日間後に大規模な集団暗殺を行うから、各自コンディションを整え万全な体制で挑むように」


 デメテルの発言により一層緊張感が高まる。


「さて、ここに呼んだ連中はみんな今回の暗殺に参加することになるぞ。今回の班分けは、長男テラー・マリウスの抹殺、ロズ・アラモス攻撃の阻止、次男ミグ・マリウスの抹殺及び白虎族の女の保護、以上の三つに分かれて行う」


 有名な二つ名付きの人は、総じてこういう役割のリーダーになりやすかったりする。一応僕の希望としては次男ミグ・マリウスの抹殺と白虎族の女の保護に入りたいのだが。


「まず、長男テラー・マリウスの抹殺は『ブレーダーズ』をリーダーにC班が向かってくれ」


「「「了解」」」


 指令を受け敬礼を行うブレーダーズ一同と、後ろにいるギルドメンバーたち。


「続いてロズ・アラモス攻撃の阻止だが、私と助っ人のオイラー・グレイ、それとS班が向かう、いいな!」


 は、という声と共に敬礼をする最前列。


「最後に次男ミグ・マリウスの抹殺及び白虎族の女の保護。これは『双子魔術師』とA班、B班が共同で行う。これが一番緊迫した戦いになるぞ。以上だ」


「了解しました」


 チェムが丁重に礼をし、周りにいたメンバーが一斉に敬礼。その時。




 変な違和感に気づいた。何処かから魔力が見えるような、そんな違和感。


 僕を除く全員が各自の持ち場に移動する中、デメテルが僕の目を見つめて会話する。


「ニコ。君は恐らくどこに入っても差し支えの無い動きをするだろうと思ってね。君が入りたい場所に入らせようと思うのだが、どうする?」


 その後にデメテルがぽつりと「私のところに入ってくれたらうれしいのだがな」と呟くが、ここは自らの野望、もとい考えの為に丁重に断ろう。


「ごめんなさい、僕は元から白虎族の女の救出に入ろうと思いますので」


「そういうだろうと思った…」


 デメテルの様子が明らかに変だった。いや、それだけじゃない。その周りもだ。


 この魔法の感覚は嫌な予感しかしない。なのに何故、それが分からない?


 その時、昨日まで味方の筈だった『双子魔術師』『ブレーダーズ』が、明らかに殺意をもって僕に襲いかかろうとしている。


「よくも俺らをだましたな!」


「…やっぱりそうだと思っていたのですが」


「いったいどういうことなの!?」


「失望しました…」


「奇天烈…貴方の存在を許さない」


「っえ、ちょっと待って……!?」


 僕と一緒にいた人たちとのの間で起こる距離。まるでそう話されているかのような、辻褄の合いそうで合わない言葉。そしてデメテルまでも、が僕を明らかに敵視していた。


「…ニコ。貴方は既にブラックリストに載っている。殺したところで…文句は一つもないな!」


 それを合図に6人全員が僕に襲いかかる。


「っ……まじかよ!」


 隠蔽スキルを一時的に利用し、風魔法の力で瞬時に6人がいる広間から脱出すると、逃走劇よろしく手当たり次第に道を探す。


「ちっ…ここからどうすればいいんだ」


 兎に角あの場所から逃げようにも僕には全く分からず。対して相手側はこの場所を知り尽くしていると言っても過言ではない。もし本当にあの人たちが僕を殺すために騙したとしたら、今度こそ僕は死を迎えてしまう、それだけは避けたかった。


 何かがつかめない以上迂闊に相手を傷つける行動だけは避けたいが、最悪の場合それもあり得るか。何にしろこういう狭い通路で戦うことはこの先幾らでもあるのだが。


 兎に角傷を負わない程度に、気絶させちゃいましょうか。


「見つけた!」


 って気絶させるべき最初の相手はリュミエールかよ!やり辛いことこの上にないな!


 とにかく前言撤回。間もなく僕とリュミエールとの壮絶な鬼ごっこが始まった。


 速いスピードで動く光弾を風魔法の緩急と魔力の感覚だけで全て避ける。こんな芸当ができる理由も、魔力がどうやって動くかの原理を知っているからこそである。要するに魔法は自らの全身の力を発揮して空気中の魔力を上手いこと操る訳だ。


 お返しにと闇を纏った風の矢を放つがしかし、動きながら動いている的に当てるのはこちらも困難だ、矢はリュミエールが進む場所を大きく外れ消滅する。さて、この鬼ごっこはいつまで続くのかな!




「見つけた」


 挟み撃ちか!曲がり角で待ち伏せをしていたチェムが闇弾を幾つも放ってくる。ものの一瞬で右手に光が宿り闇弾を薙ぐが、その間にもリュミエールが光弾を放ちながら近づいてくる。


「甘いっ!」


 余った魔力の弾同士で同士討ちに!なんて期待も込めてチェムに向かって突進……する目の前で、跳ぶ。


 しかしそこに、ものすごい勢いで迫ってくる爆発魔法の連鎖が!


「っ、そこの追い込みは想定外だよっ!」


 間一髪、某段ボールをすり抜けて獲物を取る猫又さん宜しくスライディングをして避け、そのまま宙返りして逃げようとしたが。


 その先は視界零メートルの霧だ。おまけに闇のようなもやもかかって方向感覚もつかめない、いやらしい追加効果も。


「まじで……まじであいつら殺そうとしているのか?」




 しかし、あんな良心の塊みたいなリュミエールが…人を殺せるのか?そして魔力の質が双子魔術師のものじゃないような気がした。いや、よく見れば光弾が明らかに濁っている。だとすれば、


「主よ。この魔力パターン、誰かが改変したような跡が見える」


「……洗脳魔法か!」


「ほぼ間違いないだろう」


 そう断定する間にも上手い具合に光弾をすり抜けるが、その先の闇弾が体にあたる。痛みと衝撃が襲いかかる中、どうにか足を風に纏わせて跳ぼうとする、が、ここでもう片方の足と地面が離れずそのまま転倒してしまった。


「しまった、氷魔法……!」


 再び体制を取り戻す時間はほぼ、ない。


 そうしている間に二人が、いや、この状況から察するに五人が同時に詠唱を始めた。明らかにものすごいスピードで何かが動いている、そう気づいたときには。


 赤と青がほんのり混ざっている光と。


 チェムが放ってきた紫色とは違う、漆黒の闇の巨大な球が大きく膨らんでいく。


 既に氷魔法は身体中の動きを拘束されている。この攻撃を仮に逃げ切ったとして、次の攻撃は何が来る?いや、魔法だったら何でも致命傷レベルじゃ済まされない、この街ごと吹っ飛ぶ勢いの……


 最後に迫ってきた魔力は、恐らくデメテルなのだろう。嘲笑するような皆の笑いと共に消えていくのだろう。


 やはり僕の運命は初めからこうであったようだ。


「……ここまでか。すまない桜花」




「天使の息吹(エンゲルアーテム)!」


 僕がそう呟くのと、きらきらした光が僕の向かいに吹かれるのは、ほぼ同時だった。






 それにしても、氷を高温で溶かすって余裕がないとできない行動なんだよな。火魔法自体触るとやけどするくらいの温度を持っているし、自分を温めようとしても逆に今度は物理的に熱くなるし。かといって其の侭だと寒い。うん、すっごく寒いよ。大事なことなので二回言いました。


「中々の推理力、いや魔法感知力?とにかく君が只者じゃないことは分かりました、『奇天烈』ヴァ―ミリオン」


 いつの間にか霧も晴れている。氷を全て融かしきり後ろを振り返ると、誰かが一人立っていた。


 レムレスとはまた違った雰囲気だ。高身長で薄灰色のローブを羽織り、手にはロザリオらしき装備を持っている男性が、チェムの前に立っている。


 一方でチェムは息を切らし立つのも覚束ない状態、僕が見た中では明らかに異常だ。


「…解除後の副作用が出てきていますね、早急に休息、念のため診断を」


 どうやらリュミエール始め他4人、というかも同じ症状が出ているらしい、暗殺ギルドの連中が二人を連れて何処かに立ち去って行った。


「後は…どうやらこの支部に『奇天烈』がブラックリストに載っているというデマが入っていますね…早急な修正と共にB級への昇格願いを出すべきでしょうか、と」


 何やらロザリオらしきものは一種の魔道具のようだ、両手に持って何やら言葉を発すると、壁に映った四角い画面を操作していた。やがてそれの操作が終わると、フードを外し僕に向かってにこやかに挨拶をしてくる。


「おっと、自己紹介が遅れました。初めまして、僕の名は『聖十字』のオイラー・グレイ。正式に君を保護する役目を担うことになったのでね、宜しく頼むよ」


「あ、はい、宜しくお願いします」


 表情こそ優しいが、明らかにデメテルと同じプレッシャーを感じ、思わず緊張してしまう。


 それを察したのか、「まあ緊張しないで」とはにかむ様はさながら好青年である。


 それにしても、すべてが解決したというはずなのに何かまだ嫌な魔力を感じるんだよな。


「…主よ」


 どうしましたか寄生さん。


「…来る」


 意外な言葉に一瞬だけ戸惑う。しかし、次にはそれが意味していることがすぐに分かった。




「やれやれだよ」


 そこに立っているのは…1−Bの副委員長であるタクマだった。


「逃げた犯罪者がここにいるっていうから上手く操って殺そうとしたのに」


「……てめぇ……!」


 こんなくだらないことだけに罪のないあいつらを利用したのか?もしそうだとしたら、何故こうまでして僕を殺そうとするのか?


 即座にオイラーが放つプレッシャーにも動じず、ただただ異様な笑みを浮かべる。


「ここに犯罪者など存在しないじゃないですか?」


「うるせえ、お前もこいつも邪魔なんだよ。ただ単に力が欲しいだけの単純なチート野郎は生まれてくるだけで罪だ」


 互いに一歩も動かない状況、のように見えなくもないが、二つの強い魔力の流れを感じるあたり、いつでも攻撃できるような姿勢だろう。


「守る価値がある限り、消させはしませんよ」


 言葉と大きな衝撃が同時に、感覚を奪っていく。お互いに無傷ではあるが、あれだけの死闘を繰り広げても傷つかなかった周りの壁にヒビが入っていく。


「……へぇ、あの一撃を完全に耐えたんだ。やっぱり只者じゃないね」


「……貴方こそ、あの威力の闇弾をよくこの時間で出せますね……」


 オイラーは予想通り強かった、だがそれ以上にタクマもがたった数日でここまで強くなるのは流石に想定外だった。迂闊に戦闘に加わろうものなら一瞬で倒れてしまうほど僕が弱く見える。




 互いに数手の応酬を完全に受け止め、依然睨み合いの状況が続く。降りかかった闇弾を光弾で相殺することくらいならまだ余裕でできていた。が、そこから攻撃を仕掛けようとしてもまるで当たる気配すら感じない。


 だが、この戦いはそう長く終わることは無い。


「ちっ……わぁったよ、戻りゃいいんだろ?」


 突然タクマの下に魔方陣が広がり、まるでホログラムであるかのようにかき消されていく。


「っと、本来の目的を忘れるところだった」


 あ、そういえば僕は殆ど気にしなかったけど、異世界の人達にとっての本来の目的を忘れてた。


「魔王が完全復活した、これから世界を征服するってさ。まあ精々止めようと足掻くがいいさ」


 その知らせをわざわざ持っていくあたり、魔王はとても親切な人物なんだろうな。なんてことを言っている暇はない。魔王が復活した、というアナウンスは確か異世界に入った時から聞いたような気がする。


 タクマは、たった数日の間に一体何を見たというのだろうか?そしてこんな化け物相手に桜花は無事なのか?


「っまさか!」


 オイラーが珍しく動揺するが、その後にはただ、激しくたたかった爪痕が広がっているのみであった。

※訂正コーナー

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