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神紅の剣  作者: 栗太
1/8

プロローグ

 中学3年の夏、僕には恋人がいた。

 他のどんな女の子よりも、可愛くて、優しい、そんな素敵な彼女。僕にはもったいないくらいの、美少女。

 もともとは、ただの幼馴染だった彼女。いつまでもたっても、ただの幼馴染。僕たちは、兄妹のようなモノだと思っていた。だけど、ふとした瞬間に気づいた、気づいてしまったんだ。何時ものように何気なく見る彼女の姿。その一挙手一投足に見入ってる自分がいることに。

 そして、気づいてから後は、自分が彼女に恋をしているのだと理解するのに時間はかからなかった。人の恋愛感情というものには鋭いわけではないが、人並みには鈍感でないと自覚もしている。自分が彼女に抱いているこの気持ち。これが恋だと理解するのは、難しくはなかった。


 とはいっても、それから先、何か特別なことがあったわけじゃない。ただ何時ものように過ごすだけの日々を送り、幼馴染の少年として、彼女の隣に居続けた。変わらぬ日々、不変の関係。今の関係が、彼女との距離が壊れてしまうのが怖くて、僕は、自分の気持ちを隠し続けた。

 それが、悪かったのか、良かったのかは、今となってはわからない。いや、ある意味では良かったのかもしれないが、思い返してみると、何とも情けない男だと自分を笑いたくもなる。

 まあ、しかしながら、結論だけ述べれば、僕は彼女と恋仲になった。

 話が飛びすぎだって? ああ、そうだね。さて、それじゃあ、どう話したものか。

 …僕たちが中学三年生になった年の夏、近所の夏祭りに出かけたんだ。毎年の事なんだけどね、いつも通りの日常の中の一風景。幼いころから、毎年一緒に行くものだから、夏祭りには二人で行くのが当たり前になっていたよ。でも、その年だけは、いつもと違ってた。そう、前年までは、ただ幼馴染と祭りへ出かけるだけだったのだけど、その年は、僕にとって好きな人と行く初めての夏祭りだったんだ。

 まあ、あれだ。その時僕は相当緊張していてね。どうにも、彼女にはそんな僕の様子が祭りを楽しんでいないように見えたらしい。やたらとベタベタとくっ付いてきては、こんな美少女と二人きりで夏祭りに来てるんだからー、何てことを言い出すんだ。ただでさえ緊張しているところに、そんなことされたら、男の子としちゃあ色々と、まあ、思っちゃうよね。

 思わず、口から彼女に対する気持ちを伝えそうになったんだ。でも、さっき言ったように、僕は当時の関係が崩れるのを恐れていたんだ。だから、僕は彼女を突っぱねた。べたべたするなってね。

そうしたら彼女、泣き出してしまってね。正直焦ったよ。泣かせるつもりなんてなかったし、彼女が泣くことなんて滅多になかったからね。

 僕はすぐに尋ねた。どうして泣くんだって。そうしたら彼女は言ったんだよ。


「好きな人から冷たくされて、悲しくない女の子なんているわけないじゃない!!」


 ってね。それから僕がどうしたかは、聞かないでくれるとうれしいかな。流石に、僕としても恥ずかしいからね。…そんな顔をしないでくれよ。君が、話を聞かせろと言ってきたんだろう? 少しくらいは、僕にも我儘を言わせてくれないかな――――うん、ありがとう。まあ、そんなことがあって、僕たちは恋仲になった。それからの日々は幸せばかりだったよ。彼女がいて、僕がいて。ただそれだけの事が、とてもうれしくて楽しかった。そうそう、ペアリング何かをして見たりもしてね。親や友人には、まだ中学生じゃないかって笑われたよ。それもまあ、楽しかったんだけどね。彼女と一緒に笑っていられたから、何があっても幸せだった。



 だけど、そんな幸せも長くは続かなかった。あれは、その年の冬だったね。奴らが、この星にやってきた。僕らの敵、コンクエスタが。

 奴らは、世界中に同時に出現して、全てを破壊し始めた。ああ、こんなことは言わなくても知っているか。…そう。奴らは突然現れて、突然すべてを奪い去ったんだ。僕の家族も、友達も、故郷も。そして―――僕の恋人だった少女、美咲の事も…。

 一人生き残って、僕は考えたよ。必ず、奴らに復讐してやるってね。だから、僕はCASにはいったんだ。奴ら…コンクエスタに復讐する為に。




 五大歴238年。それはあまりにも唐突に、音もなく終焉を連れてやってきた。

 それは、初めは小さな隕石だった。大気との摩擦で欠片も残らないであろう小さな隕石。しかし、多くの予想に反して、その隕石はこの星の大地に落ちてきた。落ちたのは中央大陸コードスウェルと北方大陸ジャスティアの中間地点にあたる小さな島。クルシナ島と呼ばれるその小さな島は、クシナという果実の名産地で島名と同じ名を持つ村を内包した小さくも、争いが起こらず、平和で穏やかな島だった。その小さな島が、一晩のうちに地図上から姿を消した。たった一かけらの小さな隕石が、小さいとはいえ一つの島を滅ぼしたのだ。…否、この表現は適切では無い。正確には、小さな隕石と共に飛来した生物のような何か。それによって、クルシナ村、及びクルシナ島はその姿を消した。

 後に、コンクエスタと呼称される外宇宙飛来型機械生命体と、ガラド人類とのファーストコンタクトである―――


――――記録者 ***




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