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弱き剣聖と銀星の守護者  作者: 忘れな草
第1章 邂逅編
8/19

第7話 彼が求めた剣


####  鉱山へ


朝の空気はまだ冷たく、街道には薄い霧が残っていた。


カゲトとステラは並んで歩く。

目的地は東区画の鉱山。


「初心者向けって書いてありましたけど……」


「油断は禁物だな」


軽口を交わしながらも、互いに周囲への警戒は怠らない。


「終わったらご飯行きましょうか」


「いいな」


短いやり取り。

それだけで、少し気が楽になる。

---

####  異変


鉱山に近づくにつれ、空気が変わった。


「……静かすぎる」


「魔力の流れも変です」


ステラが杖を握る。


その瞬間――


地面が微かに震えた。


「来る!」

---


#### 第一波

岩陰から現れたのは、甲殻を持つ虫型モンスター。


数が多い。


「ウォータリングランス!」


水の槍が一直線に突き抜け、先頭を吹き飛ばす。


「右から回る!」


「了解!」


カゲトが前に出る。


動きはまだ荒い。

だが以前よりも明らかに速い。


一体、切る。

もう一体。


(いける――)


だが。


「上です!」


ステラの声。


見上げた瞬間、頭上から新たな群れが降ってくる。


#### 崩落

「下がれ!」


「大丈夫、私が――」


氷の魔法が展開される。


だが連続使用。


地面が軋む。


嫌な音。


次の瞬間――


岩盤が崩れた。


「っ……!」


落石。


ステラの脚を直撃する。


膝が崩れる。


「ステラ!」


カゲトが振り向く。


だが敵は止まらない。



####  分岐

前――敵。

後ろ――仲間。


一瞬の判断。


「前だけ見てください!」


ステラの声が飛ぶ。


「ここは任せます!」


その言葉に、迷いが消える。

####  覚醒

カゲトは深く息を吸う。


(焦るな)


(数を減らす)


短剣《蒼穹》を握る。


軽い。


だからこそ、ブレる。


(無駄を消せ)


一歩。


踏み込みを最小に。


一振り。


――当たる。


一体。


次。


狙う。


確実に。


倒す。


(速さじゃない)


(正確さだ)


動きが変わる。


余計な力が抜ける。


「……すごい」


後ろで、ステラが息を呑む。敵の数が減る。


流れが変わる。


最後の一体。


跳ぶ。


カゲトは腕を振る。


短剣が一直線に飛ぶ。


――命中。


静寂。

---

####  「終わりました……!」


ステラの声。


カゲトは振り返る。


痛みに耐えながらも、立ち上がろうとしている。


「無理するな」


駆け寄り、肩を支える。


「大丈夫です」


「無理だろ」


「でも……」


言葉が途切れる。


「二人でやるって決めましたから」


その一言に、力が抜けた。


「……そうだな」


####  帰り道


夕方。


ゆっくりと街へ戻る。


ステラは足をかばいながら歩く。


「さっきの、凄かったです」


「いや……必死だっただけだ」


「でも変わってました」


「……そうか?」


「はい。迷いがなかったです」


カゲトは少しだけ考え、


「守るって決めたからな」


そう答えた。


ステラは一瞬だけ驚き、そして笑った。


道端のベンチで足を止める。


「ちょっと見せてください」


カゲトは膝をつく。


傷を確認し、手当てを始める。


「自分でできますよ?」


「今は任せろ」


包帯を巻く手は、まだ少しぎこちない。


それでも丁寧だった。


「……優しいですね」


「普通だろ」


「普通じゃないですよ」


小さく笑う。


「でも、こういうの好きです」


その言葉に、少しだけ手が止まる。


「……そうか」


それ以上は言えなかった。


それぞれの決意


再び歩き出す。


「次はもっと上手くやります」


ステラが言う。


「無理はするな」


「カゲトさんもです」


少しだけ強い口調。


「分かってる」


短く返す。


だがその中に、確かな意志があった。


彼が求めた剣


夕焼けの中、二人の影が伸びる。


カゲトは自分の手を見る。


まだ弱い。


それでも――


(届いた)


ほんの少しだけ。


守る側に。


(もっと強くなる)


そのための剣。


そのための力。


そのための――選択。


隣にはステラがいる。


それだけで、十分だった。

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