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弱き剣聖と銀星の守護者  作者: 忘れな草
第1章 邂逅編
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第5話 王都の扉

####  新天地の朝


王都の城壁を前に、朝靄が白く漂っていた。

昨晩の雨が石畳に残り、淡く光を反射している。


カゲトは冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、小さく息を吐いた。


「寒いな……」


「ふぁあ……でも、よく寝られました」


隣を歩くステラが軽く伸びをする。

その表情は疲れを残しつつも、どこか晴れやかだった。


「昨日は色々あったからな」


「はい。でも……ちゃんとここまで来られました」


その言葉に、カゲトは小さく頷く。

たった一日。それでも確かに、何かが変わり始めている気がした。


####  王都の門


巨大な城門の前には、すでに長い列ができていた。

商人、旅人、傭兵――様々な人間が行き交う。


「思ったより人多いな……」


「王都ですからね。少し緊張します」


検問の順番が回ってくる。

門番が二人を見下ろし、書類を差し出した。


「目的は?」


「冒険者登録です」


「身分証は?」


「まだありません。仮登録を希望します」


門番は一瞬だけ訝しげに眉を動かしたが、すぐに手続きを進めた。


「仮登録なら通行は可能だ。ただし問題を起こすなよ」


「はい」


重厚な門がゆっくりと開く。


その先に広がっていたのは――


圧倒的な人の流れと、巨大な都市の気配だった。

---

####  洗礼のテスト


白い石造りの建物。

王国直属――白獅子冒険者ギルド。


扉の前で、カゲトは一度足を止めた。


「……行くぞ」


「はい!」


扉を押し開けると、ざわめきと熱気が一気に押し寄せた。

酒の匂い、革の軋み、金属音。

ここが“戦う者の集まる場所”だと、肌で理解できる。


受付へ向かうと、女性職員が顔を上げた。


「新規登録ですね。費用は一人銀貨一枚です」


「銀貨……」


カゲトの動きが止まる。


(足りない……)


逡巡したその瞬間、隣から静かな声がした。


「私の分で二人分、先に払います」


「えっ……」


ステラは迷いなく銀貨を差し出す。


「後でちゃんと返してくれれば大丈夫です」


その笑顔に、カゲトは言葉を失った。


「……ありがとう」


「仲間ですから」


軽く言われたその一言が、妙に胸に残った。

####  思わぬ才能


「ステラちゃんの属性適性……面白いわ」

副ギルドマスターの老女・メルセデスが水晶板を凝視する。


「本来なら“土系”一色のはずなのに、“闘気オーラ”成分も観測されてる。つまり……」

「剣術も使えそう?」

「正解!」


教官が目を輝かせた。「じゃ試しにあれでやってみませんか」


模擬戦台の中央に置かれたのは細身の木剣。ステラは躊躇なく柄を握る。


(あの体型じゃ振り上げるのも辛いだろうに……)

そう思った矢先――


**シュパァーンッ!!**


風斬音と共に剣閃が宙を走った。カゲトの目線より高い高さで振り下ろされた刃の跡が、台座に深い斬痕を刻む。


「嘘だろ……軽く持ち上げただけで……!?」

「すご……私もビックリしましたぁ」

本人すら困惑の様子。教官席から拍手が湧く。


---

####  無防備な距離


合格通知を受け取ってギルドを出るころ、夕焼けが壁を朱に染めていた。

「良かったぁ……一緒にAランク目指せますね」

「Aランク……俺が? 冗談だろ」

「だって私、守られてばかりはイヤなんです」

真摯な瞳。カゲトは唇を噛む。


「……俺も守りたい」

「じゃあお互い守りましょ! それでおあいこ!」

ステラはくるりと回り、カゲトの腕に軽く凭れた。柔らかな体温が肘を包む。


(ちょ、ちょっと……!)

ふにゅん。

(あああああっ――!)


右肘に当たる丸み。制服越しでもわかる質量。思春期男子の理性は蒸発寸前。

「えへへ……こうしてると安心ですよね」

「う、うん……」

(冷静になれカゲト……これは友情の触れ合いだ……!)


---

####  夜の独白


その日の宿屋。

薄暗い共有部屋の窓辺で月を眺めるカゲトに、ステラが湯呑を持って現れた。


「お疲れさまでした」

「ありがと。今日は色々ありすぎて……頭パンクしそうだ」

「私もです。でも――楽しかった」

ステラはカップを両手で抱え込む。湯気が夜景と溶け合った。


「カゲトさん。もし私がもっと強くなったら……傍にいてくれますか?」

「当たり前だろ。俺こそ足を引っ張りっぱなしだけど」

「引っ張り合ってもいいんじゃないかな。一緒に迷ったり悩んだりするのが“仲間”だと思うんです」

「……そうか」

「うん!」


屈託ない笑顔。背後の星空が霞むほど眩しい。

カゲトは拳を握る。


(身長も腕力も彼女の方が上。でも――)

胸の奥に灯る小さな炎。それはきっとプライドや劣等感を超えた何か。


「じゃあ次は俺がお前を助ける番だ」

「期待してます♪」

ステラが首を傾げて目を閉じた。睫毛が長い。


(くそ……可愛すぎるだろ……!)


胸が高鳴るのを堪えつつ、カゲトは誓う。

どんな形であれ彼女を支えよう。

例え守るべき存在が逞しくなろうとも。


明日からの冒険が楽しみだった。

「ほう。ギルド未登録か?」

「はい」

「冒険者希望なら早めに手続きしな。町中で揉めても仲裁できねぇぞ」


注意勧告を受けつつ通された中庭。そこに建つのは――王国直属『白獅子冒険者ギルド』の支部だ。

大理石の階段、紋章入りの大扉。歴史と権威を纏った佇まいに思わず唾を飲む。


「い、行くぞ……!」

「はーい♪」

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