第3話 外へ
■ 村の朝
朝は、いつも通りだった。
畑の匂い。
土の感触。
何も変わらない。
昨日と同じ。
今日も。
(……ここが、全部だ)
カゲトは空を見上げる。
狭い。
いや。
ずっと、そう思っていたわけじゃない。
ただ――
知ってしまった。
外を。
■ 日常
「おい、カゲト!」
声が飛ぶ。
「そっち運べ!」
「……分かった」
荷を持つ。
重い。
腕が軋む。
だが、文句は言わない。
「遅いな」
「もっと力つけろよ」
笑い。
軽い言葉。
いつものこと。
■ 違和感
(……違う)
昨日までと。
同じはずなのに。
何かが違う。
手を動かしながら考える。
(このままでいいのか)
答えは出ない。
だが。
消えない。
■ 再会
昼。
村外れ。
ステラは、昨日と同じ場所にいた。
「来たんだ」
「……まあな」
短いやり取り。
だが、自然だった。
■ 確認
「どうするの?」
いきなりだった。
「何が」
「ここにいるのか、出るのか」
まっすぐ。
逃げ道のない問い。
カゲトは少し黙る。
「……分からない」
正直に言う。
「そっか」
ステラは頷く。
否定はしない。
■ 剣
「じゃあ、剣は?」
「剣?」
「ここで完成する?」
その言葉。
カゲトの中で、何かが引っかかる。
(……完成)
ありえない。
ここでは。
削るだけでも限界がある。
相手がいない。
環境がない。
刺激がない。
「……しないな」
自然と答えていた。
■ ステラの言葉
「じゃあ外だね」
あっさり言う。
「外には強いやついるし」
「見たことない戦いもあるし」
「あなたの剣、伸びると思うよ」
軽い。
だが。
確信があった。
■ 村の現実
「でもさ」
ステラが続ける。
「ここじゃ無理でしょ」
言い切る。
カゲトは否定できない。
「誰も理解してない」
「必要ともされてない」
「むしろ邪魔扱い」
一つ一つ。
刺さる。
全部、事実だった。
■ 決断の前
「……それでも」
カゲトは言う。
「ここが、俺の場所だ」
言葉にする。
それが当たり前だったから。
だが。
ステラは首を傾げる。
「ほんとに?」
■ 崩れ
その一言。
何も強くない。
だが。
揺れる。
(……本当に?)
答えが出ない。
■ 沈黙
風が吹く。
草が揺れる。
何も変わらない景色。
それなのに。
違って見える。
■ 決断
「……行く」
小さく呟く。
だが。
それで十分だった。
「外に出る」
言い直す。
今度は、はっきりと。
ステラが笑う。
「いいね」
■ 理由
「剣を、完成させたい」
それだけだった。
守りたい、とか。
大きな理由じゃない。
ただ。
進みたい。
それだけ。
■ 出発
夕方。
荷は少ない。
持てるものも少ない。
それでいい。
「じゃあ行こっか」
ステラが言う。
「……ああ」
村の外へ向かう。
振り返らない。
もう決めたから。
■ 終わり
道は続く。
知らない場所へ。
見たことのない世界へ。
弱いまま。
それでも進む。




