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弱き剣聖と銀星の守護者  作者: 忘れな草
第1章 邂逅編
3/19

第2話 銀の少女

■ 村外れ・続き


 夕日は、まだ沈みきっていなかった。


 橙色の光が地面を長く照らす。


 カゲトは剣を握ったまま、少女――ステラを見る。


「……もう一回やるか」


「いいよ」


 即答だった。


 迷いがない。


■ 再戦


 構える。


 さっきよりも、少しだけ意識する。


 無駄を削る。


 余計な力を抜く。


「行くよ」


 ステラが動く。


 速い。


 だが――


(見える)


 さっきよりも。


 ほんのわずか。


 遅く感じる。


 半歩。


 ずらす。


 剣を合わせる。


 受ける。


 流す。


「……あ」


 ステラが小さく声を漏らす。


 その一瞬。


 体勢が崩れる。


 踏み込む。


 最短距離。


 届く――


 寸前で止まる。


 逆に。


 喉元に剣。


「はい、終わり」


■ 差の確認


「……今の、ちょっと良かった」


 ステラが言う。


「でもまだ遅いね」


「分かってる」


 カゲトは素直に答える。


 悔しさはある。


 だが、それ以上に。


(方向は合ってる)


 確信があった。


■ ステラの剣


「次、そっちの番」


 カゲトが言う。


「本気でやってくれ」


「いいの?」


「ああ」


 ステラは少しだけ笑う。


 そして。


 構える。


 空気が変わる。


(……違う)


 さっきまでとは別物。


 踏み込み。


 一瞬で距離を詰める。


 速い。


 重い。


 正確。


 カゲトは受ける。


 だが。


 押される。


 間に合わない。


「遅い」


 短い一言。


 剣が止まる。


 首元。


 完敗。


■ 格差


「……強いな」


「普通だよ」


 あっさり。


 だが、それが事実だった。


「あなたが弱いんじゃない」


「私が強いだけ」


 迷いのない言葉。


 だが嫌味ではない。


 ただの認識。


■ 会話


「なんでここにいるんだ」


 カゲトが聞く。


「旅の途中」


「旅?」


「うん」


 ステラは空を見上げる。


「いろんな場所、見たくて」


「この村も、その一つ」


 軽い言葉。


 だが。


 どこか遠くを見る目だった。


■ カゲトの現状


「……俺は、ここしか知らない」


 ぽつりと呟く。


「村と、その外れくらいだ」


「ふーん」


 ステラは興味深そうに見る。


「じゃあさ」


 少しだけ身を乗り出す。


「外、見たくない?」


■ 選択の種


 風が吹く。


 沈みかけた太陽。


 遠くの空。


 知らない場所。


(……見たいか)


 答えは、すぐには出ない。


「……分からない」


 正直に言う。


「そっか」


 ステラは笑う。


「じゃあ、そのうち分かるよ」


 軽い言葉。


 だが、どこか確信があった。


■ 村の影


 その時。


「おーい!」


 遠くから声が飛ぶ。


 村の男たち。


「また変なことしてんのか!」


「遊んでる暇あるなら手伝え!」


 カゲトに向けられる声。


 ステラが小さく眉を動かす。


「……いつもあんな感じ?」


「まあな」


 慣れている。


 気にもしていない。


 はずだった。


■ 違和感


 ステラは少しだけ考える。


「変だね」


「何が」


「あなたの剣」


「そんな扱いされる剣じゃないよ」


 真っ直ぐ言う。


 カゲトは少しだけ黙る。


(……そうか?)


 初めてだった。


 そんな風に言われたのは。


■ 終わり


「またやる?」


 ステラが聞く。


「……ああ」


 短く答える。


 剣を握る。


 さっきよりも、わずかに軽い。


 まだ弱い。


 だが。


 変わり始めている。

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