第2話 銀の少女
■ 村外れ・続き
夕日は、まだ沈みきっていなかった。
橙色の光が地面を長く照らす。
カゲトは剣を握ったまま、少女――ステラを見る。
「……もう一回やるか」
「いいよ」
即答だった。
迷いがない。
■ 再戦
構える。
さっきよりも、少しだけ意識する。
無駄を削る。
余計な力を抜く。
「行くよ」
ステラが動く。
速い。
だが――
(見える)
さっきよりも。
ほんのわずか。
遅く感じる。
半歩。
ずらす。
剣を合わせる。
受ける。
流す。
「……あ」
ステラが小さく声を漏らす。
その一瞬。
体勢が崩れる。
踏み込む。
最短距離。
届く――
寸前で止まる。
逆に。
喉元に剣。
「はい、終わり」
■ 差の確認
「……今の、ちょっと良かった」
ステラが言う。
「でもまだ遅いね」
「分かってる」
カゲトは素直に答える。
悔しさはある。
だが、それ以上に。
(方向は合ってる)
確信があった。
■ ステラの剣
「次、そっちの番」
カゲトが言う。
「本気でやってくれ」
「いいの?」
「ああ」
ステラは少しだけ笑う。
そして。
構える。
空気が変わる。
(……違う)
さっきまでとは別物。
踏み込み。
一瞬で距離を詰める。
速い。
重い。
正確。
カゲトは受ける。
だが。
押される。
間に合わない。
「遅い」
短い一言。
剣が止まる。
首元。
完敗。
■ 格差
「……強いな」
「普通だよ」
あっさり。
だが、それが事実だった。
「あなたが弱いんじゃない」
「私が強いだけ」
迷いのない言葉。
だが嫌味ではない。
ただの認識。
■ 会話
「なんでここにいるんだ」
カゲトが聞く。
「旅の途中」
「旅?」
「うん」
ステラは空を見上げる。
「いろんな場所、見たくて」
「この村も、その一つ」
軽い言葉。
だが。
どこか遠くを見る目だった。
■ カゲトの現状
「……俺は、ここしか知らない」
ぽつりと呟く。
「村と、その外れくらいだ」
「ふーん」
ステラは興味深そうに見る。
「じゃあさ」
少しだけ身を乗り出す。
「外、見たくない?」
■ 選択の種
風が吹く。
沈みかけた太陽。
遠くの空。
知らない場所。
(……見たいか)
答えは、すぐには出ない。
「……分からない」
正直に言う。
「そっか」
ステラは笑う。
「じゃあ、そのうち分かるよ」
軽い言葉。
だが、どこか確信があった。
■ 村の影
その時。
「おーい!」
遠くから声が飛ぶ。
村の男たち。
「また変なことしてんのか!」
「遊んでる暇あるなら手伝え!」
カゲトに向けられる声。
ステラが小さく眉を動かす。
「……いつもあんな感じ?」
「まあな」
慣れている。
気にもしていない。
はずだった。
■ 違和感
ステラは少しだけ考える。
「変だね」
「何が」
「あなたの剣」
「そんな扱いされる剣じゃないよ」
真っ直ぐ言う。
カゲトは少しだけ黙る。
(……そうか?)
初めてだった。
そんな風に言われたのは。
■ 終わり
「またやる?」
ステラが聞く。
「……ああ」
短く答える。
剣を握る。
さっきよりも、わずかに軽い。
まだ弱い。
だが。
変わり始めている。




