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弱き剣聖と銀星の守護者  作者: 忘れな草
第1章 邂逅編
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第1話 弱い剣士

 剣は、軽くなければならない。


 力がないなら、なおさらだ。


 重い剣は振れない。


 遅い剣は届かない。


 だから削る。


 無駄な力を。


 余計な動きを。


 そうして残ったのは――


 ただの、一振りだった。


■ 村外れ


 土の匂いが強い。


 踏み固められた地面に、二人の足跡が向かい合う。


「始めるぞ」


 相手は大柄な青年だった。


 腕も太い。


 体格差は明らか。


「……ああ」


 カゲトは短く答える。


 握る剣は細い。


 力はない。


 分かっている。


(だから――)


 構える。


 余計な力を抜く。


 呼吸を整える。


 視線は一点。


「行くぞ!」


 踏み込み。


 速い。


 重い。


 だが。


 見える。


 半歩ずれる。


 剣を合わせる。


 弾かない。


 流す。


 力では勝てない。


 だから。


 使わない。


「ちっ……!」


 相手の体勢が崩れる。


 一瞬。


 その隙に踏み込む。


 最短距離。


 剣先が喉元で止まる。


 静止。


「……参った」


 勝負は決した。


■ 視線


「またそれかよ」


 周囲から声が上がる。


「地味すぎるだろ」


「ちゃんと戦えよ」


 笑い。


 軽い嘲り。


 カゲトは何も言わない。


 剣を下ろす。


(……遅い)


 勝った。


 だが満足はない。


 まだ削れる。


 まだ無駄がある。


■ 村の空気


「おい」


 別の声。


「またやってんのか」


 年上の男たち。


 腕を組んで見下ろしている。


「そんな剣じゃ役に立たねぇぞ」


「力もねぇくせに」


「魔法も使えないんだろ?」


 事実だった。


 体は弱い。


 魔力もない。


 できることは少ない。


 だから――


 これしかない。


 カゲトは剣を握る。


「……分かってる」


 それだけ言う。


 反論はしない。


 必要ない。


■ 一人


 夕方。


 村外れ。


 誰もいない場所。


 カゲトは剣を振る。


 一振り。


 止める。


 また一振り。


 止める。


 同じ動き。


 何度も。


(もっと削れる)


 肩の力を抜く。


 呼吸を合わせる。


 余計な動きを消す。


 ただ、それだけ。


■ 出会い


「変な剣ね」


 声がした。


 振り向く。


 そこにいたのは――


 少女だった。


 銀の髪。


 光を受けて淡く揺れる。


 整った顔立ち。


 だがそれ以上に。


 目を引くのは――


 気配。


(……強い)


 直感。


「見てたのか」


「途中から」


 少女は近づいてくる。


 足取りは軽い。


 無駄がない。


「あなたの剣」


 じっと見る。


「無駄を消そうとしてるでしょ」


 カゲトは少しだけ目を細める。


「……分かるのか」


「なんとなく」


 軽い言葉。


 だが核心だった。


■ 初めての言葉


「でも」


 少女は続ける。


「まだ多いよ」


「無駄」


 言い切る。


 カゲトは黙る。


 否定はできない。


「もっと削ればいい」


「簡単に言うな」


「簡単だよ」


 少女は笑う。


 まるで当然のように。


「やること一つじゃん」


 その目が、まっすぐ向く。


「“必要な動きだけする”」


 その言葉。


 カゲトの中で何かが繋がる。


(……そうか)


■ 名もなき出会い


「名前は?」


 少女が聞く。


「カゲト」


「私はステラ」


 短い名乗り。


 それだけ。


 だが――


 何かが始まるには、十分だった。


■ 終わり


 夕日が沈む。


 影が伸びる。


 カゲトは剣を握る。


 さっきよりも、少しだけ軽い。


 まだ弱い。


 まだ足りない。


 それでも――


 進んでいる。

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