第11話 役に立たない少年
ミザール近郊・簡易依頼
森の入口は、静かだった。
風が木々を揺らす音だけが響く。
「この辺りでいいはずだけど」
ステラが地図を確認する。
「採集対象はこの奥だな」
カゲトは周囲を見渡す。
「魔物も出るって書いてあったよね」
「ああ」
軽い依頼。
だが、安全とは限らない。
「……来てる」
リオが小さく呟いた。
二人が視線を向ける。
「気配、三つ」
「分かるの?」
ステラが驚く。
「足音と、草の揺れ」
リオは指差す。
「左右と、正面」
カゲトは一瞬で配置を読む。
(……正しいな)
「下がってろ」
「……分かった」
リオは素直に下がる。
戦闘開始
魔物が飛び出す。
三体。
「来る!」
カゲトが前に出る。
一体、処理。
最短距離。
無駄のない一撃。
ステラも動く。
速い。
だが――
わずかに大きい。
二体目に対して振る。
だが、避けられる。
「っ……!」
距離を詰められる。
「ステラ!」
カゲトが割って入る。
三体目が背後から迫る。
「――後ろ!」
リオの声。
カゲトが振り返る。
ギリギリで防ぐ。
(見えてる……!)
崩れ
だが。
戦闘の流れが乱れる。
ステラが前に出すぎる。
カゲトがカバーに回る。
位置がズレる。
「……囲まれる」
リオが呟く。
その通りだった。
三方向。
逃げ場が狭まる。
リオの判断
「右、開いてる!」
「え?」
「こっち、地面低い!」
指差す。
斜面。
わずかに下がっている。
「抜けれる!」
カゲトは一瞬だけ考える。
(……行ける)
「ステラ、右に抜ける!」
「了解!」
連携
カゲトが前を抑える。
ステラが一体を押し返す。
その隙に――
抜ける。
位置が変わる。
囲みが崩れる。
「……いける!」
再度、構え直す。
今度は整う。
一体ずつ処理。
戦闘終了。
戦闘後
静寂。
「……助かったな」
カゲトが言う。
視線はリオへ。
「……別に」
リオはそっぽを向く。
「見えてただけだ」
「それが助かった」
短い言葉。
だが、否定はしない。
ステラも頷く。
「さっきの、なかったら詰んでたかも」
「……そんな大げさな」
リオは少しだけ戸惑う。
役に立たない現実
「でもさ」
ステラが言う。
「戦うと、全然ダメだね」
「……うるせぇ」
図星だった。
「分かってる」
リオは地面を見る。
「足、止まる」
「怖いし」
正直な言葉。
カゲトは黙って聞いている。
「……でも」
リオは顔を上げる。
「見てれば、分かる」
「どう動けばいいか」
「どこが危ないか」
その目は、さっきよりも真剣だった。
カゲトの評価
「それでいい」
カゲトが言う。
「戦う必要はない」
「え?」
「見るだけでいい」
「それができるやつは少ない」
リオは少しだけ驚く。
「……そうか?」
「ああ」
短く肯定。
ステラの反応
「じゃあさ」
ステラが笑う。
「その役目、任せるよ」
「え?」
「私たち、結構突っ込むから」
「フォローお願い」
軽い口調。
だが、信頼が混じっていた。
「……分かった」
リオは小さく頷く。
余韻
再び歩き出す。
少しだけ距離が近くなる。
(戦えないが……)
カゲトはリオを見る。
(必要なやつだな)




