表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された崖っぷち女騎手、第三王子に拾われ不吉な『黒いユニコーン』と伝説の専属騎手になる  作者: 目白シキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

王者の景色はすぐそこに

数日後、ブラックヴェッセルの今後についての作戦会議が開かれた。

どう調教し、どういう計画でV1まで駒を進めるのかの計画だ。


馬主であるフレデリック殿下、騎手である私、そして調教師のセドリックの三人で行われたのだった。


ブラックヴェッセルの実力を考えると、すぐに作戦がまとまりそうだったが、意外にも可能性がありすぎて、逆に話がまとまらなかった。


「芝、一筋でいくべきではないでしょうか。」


セドリックは、年齢こそフレデリック殿下とそこまで変わらないものの、今まで調教してきた馬たちを次々とV1に進ませてきた実力者だ。彼が言うと実に説得力がある。


「…僕たちが目指すのはV1の完全制覇だ。そう考えるとV1は芝だけじゃないから、オールラウンダーに育てたい。様々なレースに出場させてどんな条件にも強いユニコーンに育てよう。」


フレデリック殿下は、セドリックに強気で食い下がる。先ほどからこの両者の主張の平行線だった。


「殿下、一つに絞らなければ。二兎を追う者は一兎をも得ず。ですよ。それに、今まで芝もダートも、障害も…と全てを勝ち取ったユニコーンなんていないのです。お気持ちは分かりますが、冷静になっていただきたいです。」


セドリックは、一貫してこの態度だ。

すると、フレデリック殿下はこちらを期待の眼差しで見て来た。


「リア騎手は、どう思う?このままだと議論は平行線のままだ。リア騎手に決めてもらおう。」


2人の争いを遠目から見ていたところに急に殿下に話を振られ、私は不意打ちを喰らったスライムのような顔をしてしまう。


ユニコーン競馬の作戦は、主に馬主と調教師が主体に決めることが多く、騎手が口を出すことはあまりないのが通例だ。

更に、その相手がフレデリック殿下と王族専属調教師であるセドリックともなれば、私のような身分の者が口を出すのは不躾というものだ。


だから、このように意見を求められるとは思ってもみなかった。


「えっ、私…ですか。」


ましてや、何かを期待するようにキラキラとした目を向けてくるフレデリック殿下と、貴方の言葉にかかっているんですよ、と言わんばかりの厳しい目つきのセドリックの目が痛い。


シルヴァーレイスの時を思い出した。

彼女は左に傾いていたものの、柔軟性と体力に富んでいて、左向きの長距離、特にダートが得意だった。


ブラックヴェッセルの事を思い返すと、彼はまだメイクデビューのダート一戦しかしておらずそういった適性や、癖みたいなものをまだ把握していないことを思い出した。


セドリックによると、瞬発力とスピードに長けているため、芝を伸ばした方が良い。

とのことだが、それは彼の見立てのみで、騎乗したのは私だけだ。

実際のところは時間をかけて、自分の目で見ていく方が良いと感じた。


「私は、まだ芝と決めつけるのは早いと感じます。私はブラックヴェッセルに騎乗した時間が短いですから。だから、フレデリック殿下のおっしゃる通り、いろんな条件のレースに出て、今後を見極めていくというのはいかがでしょうか。」


フレデリック殿下は、決まったな。と殊勝な態度で、セドリックは仕方がないですね。とおずおず引き下がった。

その様子が少年の喧嘩のようで、なにやらおかしかった。


「リア騎手なら、僕の考えを読んでくれると信じていた。そうと決まれば、次のV3を決めよう。」


私たちの作戦会議は、そこからは水の上を滑る船のように話がまとまった。


次は、V3『アンドロメダステークス』。芝1600mのレース。


華々しいデビュー戦を飾ったブラックヴェッセルはいち早くV3のレースへのチケットを手に入れていたのだった。


当日は、デビュー戦での興奮や緊張は感じられず、ブラックヴェッセルは終始落ち着いていた。

その落ち着きようから、当然オッズは一番人気。1.1倍のぶっちぎりの人気だった。


ゲートから出る際、地面を大きく蹴り上げ、身体のバネをふんだんに使う。

デビュー戦では追い込みに近い脚質で一着を取っていたが、今回は堂々と逃げを狙った。


思った通り、ブラックヴェッセルは逃げでも十分素質を発揮してくれた。

開けた視界に青々とした青空と、緑の芝が映えており、前に誰もいない、王者の景色が広がっていた。

誰の追随も許さない、とばかりに一馬身…二馬身…と、どんどん差を広げていく。


圧倒的な差をつけて大逃げ。という形で『アンドロメダステークス』は、歴代記録を塗り替えての優勝を飾った。


馬場が芝だろうが、ダートだろうが関係ない、というのも今回の戦いで確信を持った。

しかし、脚質まで逃げであろうが、追い込みだろうがやっていけそうというのが、ブラックヴェッセルの才能の怖いところであった。


私は、この子の騎手として、この才能を活かした戦いをしていこう。


『アンドロメダステークス』の後も、ブラックヴェッセルは数多の条件でレースに勝ち、まさに破竹の勢いと言わんばかりにV3からV2へと、次々とオールラウンダーとして勝利を重ねたのだった。


いつしか、ブラックヴェッセルは期待の新星として大きく取り上げられるようになり、以前は田舎の騎手を乗せられない、と言って来たような貴族や商人も、わざわざスカウトしに来るようになっていた。


フレデリック殿下が出している報酬の2倍は出す。良い血統のユニコーンがいる―。

など、誘い文句は様々であったが、断固として全て断ったのだった。


私が初のV2で勝利を挙げてフレデリック殿下の元へ戻ってくると、


「今日も誘われたのかい?」


と心配そうに聞いてくるので、全て断った旨を伝えると、


「良かった。キミを他の陣営に取られるわけにはいかないよ。報酬を二倍出すと言われたら三倍出す。家をやると言われたら僕は豪邸でもやるつもりだ。まあ、キミは受け取らないと思うけど…。」


と呟くのが聞こえた。


こうして、様々な戦果を上げる私の横で、私と共に、とある名前も『若葉杯』を皮切りに次々と戦果を挙げるのが見えた。


ヴァングロリアと、ヴィクトリア・リリィだった。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

チーム・ブラックヴェッセル本格始動ということで、ここからリアとブラックヴェッセルの快進撃が始まります。ただ、その先にはもちろん、彼女もいますよ。

ページ一番下にある【☆☆☆☆☆】の評価と、【ブックマーク】での応援を何卒よろしくお願いいたします!


次回の更新は水曜日の予定です。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ