1話 アルト・リーヴェル
目がうまく開かない。
開いたとしてもとてもボヤけている。
手を必死に伸ばす。何処だここ。
俺はどうなった。新田は?大家のババァは?
動けない。
「〜〜〜〜〜♪」
なんだか優しい音色の声が聞こえる。
ゆっくりと目を開ける。
目の前に俺好みの爆美女がいる。
銀髪で若くて美しい。
ここは何処だ?病院なのか?
病院にしてはなんか、世界観が違うというか。
あ、そういう感じのコンセプトホスピタル?もしかして
異世界系の病院かぁここは。いやー頭おかしいのカナ?
「あー!あぁー!」
必死に助けを求めようとして声を上げる。
今の自分の状態を知りたかった。
しかし出た声は赤ん坊のような声だった。
「あーーあ!!あぁー!あぁ!?」
「〜……!!ーーーー!!ーー!」
目の前の美女は何処かへ行ってしまった。
誰だ?医者を呼びに行ったのか?
それなら安心。
俺はとりあえず待つことにした。
待ってる間俺は今の現状を考えることにした。
まず俺は寝ている体勢だ。んで、ベットにいる。
体が暖かいからきっと布団が被せられている。
頼む何処にも後遺症がないといいが。
「っーーー!」
目の前の男と爆美女は俺に顔を見るなり涙を流した。
そして俺に両手を伸ばしてきた。
いやいや赤ん坊じゃあるまいし、なんでそんな高い高いの構え?
おっさんが男に高い高いとか絵面が地獄!
普通にゲボ吐く自信しかない。
俺は必死に抵抗する。しかし
俺の手足は短く小さかった。
そして男の手は俺の体を掴み持ち上げ、そっと抱きしめ
地面に座り込んだ。
「アルト、アルトォ。可愛いなぁ。」
優しい顔をした男の顔から涙が溢れる。
その男の大きな手は温かくて安心できる手だった。
けど俺は気がついた。
今の俺の体はきっと俺の体じゃない。
何を言ってるかわからないだろうけどそうなんだ。
俺が俺じゃないんだ!
………んなわけないか。
ー3ヶ月後ー
あの男は多分 カイル・リーヴェル
って呼ばれてたからそう言う名前なんだろう。多分父親なのかな。
そして俺の名前は アルト・リーヴェル
もうそろそろ皆目見当はつく。
俺はもう智昭ではなく別の人生を送っている事に。
恐らく前世の記憶が残っているか………異世界転生って奴?
まぁ?異世界転生なら俺は?ハーレムみたいな人生送って?モテモテでイケメンで?
チート能力で?勇者でぇ?
たっはー!困っちゃう困っちゃう。
いやそんなわけないか。
急に冷静になる。
俺はまだ自分の容姿を見たことがなかったので自分の容姿を見てみようと決意した。
部屋中を探索し、引き出しを開けるとなんとそこには手鏡が。
そして俺は気づいた。
俺は今世界一プリティーでキューティーな顔面をしたベイビーになってる事に。
髪は優しいクリーム色で、目はエメラルドのように綺麗。おまけに二重ときた。
これは勝ち確だなと思い意気揚々として歩こうとしたがすぐに倒れてしまう。
そうだ俺は赤ちゃんなんだ。
立てなくて当然か。
そう思って諦めようと思ったけど。
「ハイハイしてるのアルトー!!可愛いねぇアルトォ♡」
このままじゃ人類の尊厳が失われる気がした。
てか普通にイライラして来た。タバコ吸いてー。
他の動物に見下されるような感じがして歩行の練習を決意した。
俺はその日から毎日父が寝た後必死に歩行の練習をした。
まず何かに掴まりながら歩く練習。
最初は順調に進むも途中で足に力が入らなくなり転ぶ。
しかし数をこなしていくうちにドンドンとコツを掴んでいく。
そして来るtake68回目
ゴールはベットに掴まって歩き、その後何も掴まずに
何歩か歩く。
それさえ出来れば俺も人類の仲間入り。
二足歩行を習得できる。
まずはゆっくり転ばずに進む。
夜のせいだろうか少し寒気がするけど進んだ。
少し転びかけたがそれでも転ばずに前に進み
ついにベットの端まで来た
ここからは何も掴まずに歩く。
俺は深呼吸をしてから一歩踏み出した。
綱渡をするように一歩一歩慎重に歩いて。
俺は16歩以上歩く事に成功した。
(よっしゃあぁ!!!)
心の中でガッツポーズを決め赤ん坊からしたら長く感じる道のりを俺はふりかえる。
「!?!?!?!?」
「あ……………」
人生最大の驚きを俺は貰った。
なんという事だ。ベットの下に父がいる事に気がついた。
俺はびっくりしたせいで涙が溢れ出てきた。
そしてそれを爆発させるように俺は大泣きした。
そうか赤ちゃんってこんなに涙も止まらんのか
あの日鳴き声うるさいからって壁叩いてごめんよ、隣人さん。
そして父はベットの下から這いずり出てきて必死に俺をあやしてくれた。
「わあああああああぁぁぁっぁぁぁああああぁっぁ!!!!!!!!!!!」
「あーあーあー、ごめんよアルト。あーはいはい、ごめんね。ちょっとお写真撮りたかっただけなんだよ。」
子育ての経験がないのかアタフタしていた。
大丈夫父よ。俺も経験した事ねーから。
いっぱい抱っこされたりミルクの飲まされたりして俺はようやく眠たくなってきた。
そして俺は父と一緒に眠った。
とりあえず歩行することはできたからあとは言葉の習得だな。
それにしても
3ヶ月経っても俺は母親と見られる人物を見たことがない。
ーアルト1歳ー
「とーた、とーた」
まだ赤ん坊だから喋れねーのか。そりゃそうか。
とーさんって言ったらどんな反応をするだろうと言ってみたがうまく言えなかった。
でもこの親バカ野郎なら。
「きお。」
思いの外クリティカルヒットだな。
食事中の父は完全にザ・ワールドを食らったかのように静止してた。
そして口をあんぐりさせて口の中のフープが全部こぼれ出てきた
きったね。
そして10秒くらい経ったあと。
「あ……アルト。もっかい。もっかいいって」
涙を流しながら父は俺の顔面に近づいて来やがった。
おっさんが近づいてくんじゃねーよ。
ま、イケメンだからいいけど。
「とーた、とーた」
ほら言ってやったぞ。喜べとーさん。
どんな反応かなと楽しみに待っていると。
「我が生涯に悔いなし。」
涙を流し謎の光に包まれながら父親は消え去ろうとしていた。
まずい、こいつの親バカさを舐めてた!
そう思い慌てて父の方に手を伸ばすと。
はっと我に帰り
「どしたのぉ〜」
ふー。危なかった。
覚えておこう。
俺の父親は気持ち悪い。イケメンで助かったな。
それで俺みたいな容姿だったら即お縄だぞ。
「そうだアルト手を出して」
言われるがままに俺は手を伸ばすと。
驚くような発見をして。
俺の手の甲に何か模様が入ってる。
なに、何これ?勇者の証的な?それとも民族的な?
そう思ってると
「《アトリエ》」
俺の手に銀色の細く、ゴツくないブレスレットがついた。
今。魔法みたいなやつで。
え?
魔法?
「誕生日おめでとう。アルト」
この数日後俺はこの世界が異世界だと言う事に気がついた。
俺はどうやら異世界に転生してしまったらしい。
あぁはじめに言っておくよ。
この物語は俺が世界を救うまでの物語だ。




