0話 無職死亡
「この動画を最後まで見た皆さん。何やってるんですか?働いてください!」
なーんで俺ァこんな動画をつけたんだ?マジで。
職が見つからねーんだよなー。
皆んないいよな、顔面と学歴だけで職が手に入ってよ。
俺はもうオッサンだし、顔面蒼白ブスデブだし。
おまけに学歴もない。覚えも悪い。簡単なことが何故か全然できなくていつも失敗する。
つか働きたくない。
正直なところプー太郎というよりかは俺はただのクソニート。
だって働きたくないから。
俺はスマホでニュースを見た。
上から順に
通り魔殺傷事件。
受験のニュース。
政治のニュース。
いつもと変わらないラインナップに見える。少なくとも俺にとっては全部関係ない。きっと多分メイビー。
俺は台所に行って水を飲もうと蛇口を捻ったが。
水を止められてるのを忘れていた。
今ある全財産は200円。この200円は俺の宝物だ。
今は、大体春くらい。青春謳歌中の若人は受験期ってヤツだ。
受験をしてない俺にとっては勉強がどれだけ大切か当時全く理解できなかった。
どうせ勉強したって、どう頑張っても最後は等しく死ぬ。
俺はそう考えつつも今の自分に反吐が出そうだった。う◯こも出そうだった。
「智昭〜。おーい生きてっかー?」
古びた鉄製のドアを容赦なくドンドン叩きつける。
朝からうるせ〜な。なんて思いながら俺は布団に身を包んだ。
人と会いたくない。どうせ大家が金巻き上げに来たんだろ?
「んだよ鍵開いてんじゃん。智昭、生きてるー?」
「なんだ、新田かよ」
俺はてっきり大家だと思ってたものだから一安心。超クソ安心した。
新田は中学の時の友達。
陰キャクソデブ野郎の俺とは対極で新田はサッカー部副部長で一軍陽キャウェイ族の一人だ。
俺は布団から出て玄関で腰を下ろしてる新田になんの用か尋ねようとした時
「智昭、家賃6ヶ月分。払いな。」
タバコを吸って虎がらの服を着た大阪のおばさんみたいな格好をした 厳つい大家が顔を出した。
ヒュッって漫画みてーな息の吸い方をした。あまりにも焦り過ぎて。
「oh〜、ヤチン?……ah〜チンならココに」
「誰がテメーのチン見てーんだよ、このクソニート!!家賃払わないなら追い出すつったよね!!!」
俺が必死に頭を回して出したボケに突っ込んでくれて嬉しかったありがとよクソ大家。
なんて心の中で思いながら俺は荷物をまとめて家を出た。
「いやー、ごめんよお前ん家寄ろうとしたら偶然会って。………泣いてる?」
「いや…別に。」
俺はその日新田の家に泊まった。晩飯も全部新田が作ってくれた。
マジで神様みてーなやつだ。ありがとう全国の新田。
「あ、俺この後夜勤だから。ベット使ってもいいけど汚すなよ。」
「汚さねーよ。俺をなんだと思ってる」
「プー太郎」
「はい。その通りです。」
新田は超クソハイスペック野郎だからどんな仕事もすぐこなせる、本当に対極にいる存在だ。
新田はいいよな〜。他の野郎とは違って中学の時からの恋人を今でも好きらしい。
ちょっと気持ち悪いな。
うん。キモイ。ごめん新田ちょっとそれはキモイかもしれない。
ってプー太郎の俺が言えることでもねーか。
四十半ばになってプー太郎。社会不適合。クソデブス。
「あー。」
綺麗で汚れのない真っ白な天井を見つめる。
何もないのにぼーっと見る。
「つまんねーー。」
俺はその後も眠れずテレビを小音で見たりちょっと踊ってみたり赤ちゃんの真似したり
奇行を繰り返したけど眠気も来ないし通報もされなかった。
後1時間ちょいで新田が帰ってくる。
唐突に俺は何かしたくなった。
とりあえずズタズタのサンダルを履いて近くのコンビニに行ってう◯こでもしようかと思った。
新田の家で俺のケツから生まれるベイビーを放出するわけにわ行かなかった。
デカい上にチョー臭いからな。
うんこと言えば俺中学の時体育祭でピストルの音にビビってう◯こ漏らしたっけ。
……………あ。
そんとき助けてくれたのも新田だったか。
アイツ自分もう◯こ漏れたふりして笑いの場に変えてくれたっけ。
俺はポケットに入ってる200円を握りしめてコンビニでう◯こをした後新田の好きなメロンパンを買ってやった。
握りしめてた200円は汗でビチョビチョおまけにウンコの後の手でだった。
世界で一番最悪な200円玉を渡してしまった。
店を出た後「あの200円キモすぎる。漂白剤ある?消毒するから」なんて言う若い定員の声が聞こえた。
まだ少し寒い春の上旬。
智昭の目の前には塾に向かう中学生が一人。
参考書を開きながら歩いていた。
そしてそのまま赤信号に突っ込んでこうとしていた。
俺は叫んで止めようとしたが
「君赤信号だよ…!」
人と全く喋ってないせいで俺は声が小さかった。
男子中学生はそのまま気付かずに赤信号を渡ろうとしている。
しかも転生漫画あるあるのように居眠り運転のトラックが信号に突っ込んでくる。
俺は足がガクガク震えて心臓も腹の肉も震えてたけど
必死に走った。迷わずに
俺の頭の中では薄々気づいてた。
多分この子突き飛ばして助けても俺は轢かれて死ぬ。
でも別にいいと思った。だって社会に何一つ貢献してないニートが一人減るだけだから。
俺は走った、あの少年を助けるために。
その瞬間。自分の視界に右手と左手。
それから
刃物のようなものが刺さってるのが見えた。
背中に誰かの体温を感じる。それと痛み。
刃物は俺の体を抜け、もう一回刺してきやがった。
痛みと驚きで俺は倒れる。そして目の前を見る。
少年がトラックに轢かれた。
参考書が宙を舞う。
必死に生きようと呼吸をするが目の前で人が死んだショックと、
肺を刺された痛みで俺はうまく呼吸ができない。
おまけに目の前の全身真っ黒のやつは俺に馬乗りになって何度も刺してくる。
だんだん痛いって言う感覚も消えてきた。
その後男は逃走した。現場にはクソデブが一人大量出血して倒れている。
遠くで俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「おい、智昭?智昭!!死ぬなよ、今呼ぶから、救急車。」
「おい、なんかタオル持ってきな!!」
仕事のカバンも全部投げ捨てて新田は来てくれた。
大家のババァも。タバコを道端に落としてでも俺の元に来た。
喋ろうと思っても声が出ない。体も動かせない。
視界が狭窄する。
あーあ。
最後の最後まで俺は情けない奴だったな。
ついに俺は死んだ。
享年40後半くらい。
悪くない人生だった……多分
よろしくお願いします。




