私をお花畑に連れてって
ごくごく普通の女子高生、テルミ。
このお話はそんな女子高生テルミの
ささやかな恋のお話。
※お食事中の閲覧はお控えくださいませ。
私はごく普通の公立高校に通う17歳、ピッチピチ女子高生の運池 照美。みんなにはハコテルちゃんとか、テルちゃんって呼ばれてるよ。自分でも結構可愛いかな、って思ってる、あ、名前のことね。
でもねぇ、小さい頃から困ってることがひとつあって……私胃腸が弱いの。冷たいものとか、アイス大好きなんだけどね…食べるとだいたいすぐにお腹痛くなっちゃうの。家の中だとまだいいんだけどね、外で急にお腹痛くなると、なかなかツライ……。これはね、お腹弱い人にしか分からない辛さだと思うんだぁ。
「お腹出して寝てるからじゃね?」
とかね、
「温かいもの飲むか、腹巻きしときな」
とか、言われるんだけどね、そういう問題じゃないのよ。もう生まれ持った体の問題なのよ。あぁ、たとえば小学生の時とかね。お腹急に痛くなって、トイレに行こうとするんだけど、なんか小学校の時って、何故か大きい方に対しての異常な嫌悪感というか、男子とかもそうだったんだけど、女子もまぁまぁあったりしてね。
「おいっ! テルちゃんが◯んちしてるぞ〜!! みんなで見に行くぞぉ〜!」
見せもんじゃねぇっての! とまぁ……こんな感じ? 男子とかは、上から水かけられたりとか、こんなのって酷いよね。好きでお腹弱いんじゃないって。あ、でもね。こんな私にも春が来たの。ちょっと照れるんだけど……彼ピッピができたの。あ、これからデートなのよ。私のお腹! 頑張れ! 念の為に今日は使い捨てカイロ10個持ってきてるんだから。
そんなことを言ってる間に、彼ピが来た。
「テルちゃん、待った? ごめんね遅くなって」
おとなしそうだけど、爽やかな私の彼ピは、便所 郁三っていうの。カッコいい名前でしょ? 私はイッくんって呼んでる。
「ううん、さっき来たところだよ。今日すっごく楽しみ!」
今日は、まだ3回目のデートなんだけど、今日は……映画デートなのだぁ〜! わぁ恥ずかしい……暗闇の中で、手を繋いだりとかしちゃって……もう映画よりもイッくんのことばかり気にしたりしちゃって……やだ〜! あ、でね。やっぱりお腹のこともあるから、ひざ掛けも持ってきたの。もう準備万端だよ。
ごはんを食べてからの映画はきっとやばい。なので、先に映画観て。それから少し遅めのお昼ごはんにしてもらったよ。待ち合わせの場所から、少し歩いたとこにある、ショッピングモールの最上階にある映画館に行く。もちろん観る映画は「今、出しに行きます」だ。もう今めちゃくちゃ流行ってて、観た友達はみんな泣いちゃった、って言ってたよ。主題歌は確か沖縄出身のオベンキ・ベンキが歌っていたはず。
「テルちゃん、今日の服も可愛いよ」
きゃあぁぁ〜!! 嬉しい〜! そんな衝撃的なこと言われたら、お腹がやばくなっちゃう!
やばいやばい、おさめろおさめろ。
「ありがと。イッくんもカッコいいよ」
私、幸せだ。あとは映画中にお腹だけなんとか耐えてくれたら……。
◇◇◇
映画が始まって、30分後……う、少しやばいかも。たぶんポップコーンと、一緒に買ったコーラを少し飲んだせいかな。映画は1時間50分だからまだ結構あるし。
「イッくん、ごめんね。ちょ、ちょっとお花畑でダンスしてくるね。10分レッスンくらいだからね」
「ダンス?? あ、あ……うんわかったよ……気をつけてね」
なんとか上手くごまかせた。映画館の場合、出たところにすぐ備え付けのトイレがあるから、まだいい。
◇
あぁ、せっかくの映画デートなのに〜。早く戻らなきゃ。イッくんは映画に見入っていた。よかった……。私は小さな声でごめんねを言った。
◇◇
そのまた30分後。う……うぅ……まただ。なんか空調がやけに効きすぎてるのか、体が冷えるぞ。もうなんでなのよ〜。
「い、い、イッくん……ごめん。ちょっと急に…お花畑でブレイクダンスが踊りたくなってきちゃって……す、すぐ戻るね……」
「ぶ、ブレイクダンス? あ、あ……うんわかったよ……」
かろうじてセーフ。なんとかごまかせたようだ。早く早く! もう映画がラストになっちゃうよ〜。
◇
あぁ……もうせっかくのデートなのに〜……でも仕方ないよね、私のお腹が悪いんだ。あとはなんとかラスト30分! ここが正念場だぞ、私のお腹!
◇◇
映画のラストのいいところで……また来た。来てしまった。くそぉ〜、こんちくしょ〜! なんでよ〜! もうダンス踊りすぎで絶対怪しまれてしまうよ……どうしよう、どうしよう。でも……このままじゃ……
「イッ……イッくん、ごめんちょっと……少し呼吸が苦しくなっちゃって……少しだけ、お花畑の空気を……吸いにいってくるね……何度もごめんね」
「テルちゃん。なんか変だよ?
どうしたの?」
怪しまれてる……でも、もうむり……
「ちょっとごめん!」
私はイッくんにちゃんと答える間もなくスクリーンを出る。すると……イッくんが後を追ってきたのだ!
「テルちゃん! いや、照美!」
この場で呼び捨て〜! キュンと来ちゃうけど、ここでキュンはまずい……出てしまう……
「イッくん……私……」
「大丈夫だよ、照美。一緒に行こうよ、お花畑」
「えっ……」
一瞬、私のお腹はなぜかマシになった。
「わかってる。全部わかってるよ。君がお腹弱いことも。友達に聞いたんだ。そんなこと僕が知らないとでも思った?」
「イッくん……」
あぁ、私が付き合った相手が、イッくんでよかった。もう隠し事はない。この人なら、私なんでも話せる。
「あっ、早く行かないとね、お花畑。ちなみに僕は、大人用おむつしてるから、もういつでも大丈夫!」
えっ、えっ、え〜〜!!
——花びらのように散りゆく中で
——夢みたいに君に出会えた奇跡
完




