世界、そして出会い
しばらく歩いた時、シンディは気づいた。
研究所への帰り方がわからないことに。
しかし帰ったところでマスターはいないので手がかりなしで探すほかなかった。
結局シンディが辿り着いたのは、リスタ火山帯のふもとの小都市――カザレルだった。
町には活気があり、人々が忙しなく動いていた。市場では焼きトカゲの串焼きが香ばしく並び、魔法道具を売る露店の魔導師たちが客を呼び込んでいる。どれもシンディにとっては、見たこともない光景だった。
「これが……世界……」
シンディは恍惚としていた。
だが、その幻想は突如として崩れ去る。
「敵襲だッ! 土属性部隊、囲めッ!」
怒号と共に、空が赤く染まったように感じた。
建物が爆ぜ、地面が揺れる。市街の一角で、属性戦闘が始まったのだ。
世界は思っていたより残酷だった。
水を放つ魔法使いが逃げ、土を操る騎士たちがそれを包囲する。
しかし魔法使いの中にひとり手練がいたらしく、騎士たちは次々と倒されていく。
水の針とでも呼ぶべきか、細長くなった水がものすごい勢いで騎士を貫いている。
カザレルのもつ部隊はこれだけではないのだろう。加勢が来た。炎の魔法使いらしき者が大技を放った。
街全体をとんでもない爆風が襲う。
混乱の最中、爆風がシンディを襲った。吹き飛ばされ、瓦礫の下に埋もれそうになる彼女を誰かが救い出す。
「おい、大丈夫か!? 生きてるなら目を開けろ!」
――その声は、低くて太かった。
目を開けると、筋肉の鎧を纏ったような大男が手を差し伸べていた。
「お、女か……それに、見ねぇ顔だな。旅人か? こんなとこで何やってんだ?」
しかしシンディは返事をする前に気を失ってしまっていた。
シンディは大男の家のベッドの上で目覚めた。
「おう、起きたか」
そういうと大男は自己紹介を始めた。
「俺の名はカリオ=グラヴィス。土属性の拳闘士だ。年は18で好きな食べ物は――。」
何やらお見合いでもしてるのかという自己紹介だったため最初しか聞いていなかったが、助けてもらった恩があるためシンディは自己紹介することにした。
「私の名はシンディ。助けてくれてありがとう。」
カリオはなにやら嬉しそうにしている。
「シンディ、お前どこからきたんだ?」
カリオは意外と積極的に質問してくるみたいだ。
「それがわからないの。」
シンディはマスターを探してることや手がかりはないことなどのここまで来た経緯を話した。
「外に出るのは初めてなのか。そりゃ大変だったな、戦いに巻き込まれてしまったのは気の毒だな。」
初めて友達ができたような気がするとともに自分は割とちょろいのかもと思ってしまった。
「もうひとつ聞きたいことがあるのだけれど、」
「なんだ?」
この際カリオがわかりそうな疑問は全てカリオに解決してもらうことにした。
「なんで属性は4つしかないのにさっきの魔法使いは水を扱っていたの?」
「そんなことまでしらねえのか」
何故か煽られる。
「この世は4大元素で構成されてると言われている。火、氷、土、風。この4つが基本であり、この4つから全てが作られている。」
「というと?」
「さっきの水なら火と氷を混ぜ合わせることで生み出すことが可能ってわけだ。さっきの敵魔法使いは数値火5氷5ってとこだろうな」
「数値ってなに?」
「なにもわからねえんだな。要は能力の強さだ。この数値だけじゃ語りきれない部分もあるが、能力の強さの大体の指標になる。0がまったく扱えない。1、2がちょっと苦手。3で普通くらい。5で優秀。7で最強。って感じだな。10まであるがまあ今まで生きてきて7すら出会ったことないレベルだ。俺は土5、風3、その他0だ。教会行ったらみてもらえるぜ。」
「じゃあ教会行こうよ!」
私の数値はどんなだろう。期待を胸にシンディとカリオは教会へむかうのであった。