絶望の真実、アスラ古代遺跡群
アスラは、かつて属性魔導文明が栄えた地。
だが今はすでに滅び、無人の遺跡都市として封鎖されている。
そこに“第零の石”やマスターの手がかりがあると思ったシンディたちは、進むことを決意する。
シンディはアスラの遺跡に着いて1番最初に半壊した旧式アンドロイドを見つけた。
その胸には、自分と同じニトロストーンが……赤く濁って埋め込まれていた。
「識別コード:C-B01……なにこれ……わたしとそっくり……。」
その旧式アンドロイドの顔立ちは、壊れてわかりにくかったものの明らかにシンディと瓜二つであった。
【ログ断片】
……第二試作個体、失敗……感情回路崩壊……ゼロ属性制御不能……
「……必ズ“C-ND04”二……“第零の石”ヲ渡セ……」
気味が悪い。シンディには自分が何者かに模倣されアンドロイドが作られたのか、はたまた自分自身がアンドロイドであるのか。それすら見当がつかない。否、正確には焦りと不安と絶望が混ざったかのような閉鎖的感覚に陥り冷静な判断ができなくなっていたのである。
シンディは俯き続けるほかなかった。
シンディをなだめる機会を伺っていたカリオが警戒する。
「追ってきてる……“教団の連中”だ。」
「イデア……」
「ニトロストーンを“神の欠片”と信じてる狂信者集団さ。特に“第零の石”は、連中にとって“神そのもの”だ。」
遺跡に来る前に1度撃退したため、3人は存在も目的も知っていた。
さらにユイラが続ける。
「もし“第零の石”が教団の手に渡れば……この世界の属性均衡が崩れる。」
「カルミナが言っていたことが本当ならな。」
追いつかれてしまった。
「クソッ……返り討ちにしてやるぜ!!」
唸るような岩の拳が、正面から襲いかかってくる。
カリオはそれを、拳で迎え撃った。
ドンッッッ!!!
大地が割れた。
対するは、教団“イデア”の構成員――地殻信徒タロス。
「よくもまあ、土属性の魔法を正面から拳で受け止められるもんだなァ……!」
タロスの身体は、全身が岩のような皮膚で覆われている。
属性数値は――土7/風2/火0/氷0。
土魔法特化の肉体強化系。圧倒的なパワーで壁のように立ちはだかる。
カリオが狙うのは相手の魔法を殴り潰すことだ。
「土魔法の応用は重力操作と構造干渉……つまり、殴るタイミングを“地震波”に合わせれば”崩せるってことだ!」
彼は全身に微量の属性を分散させ、**“属性抵抗の反発波”**を拳に乗せる。
「喰らえ――《崩拳双震》ッ!!」
拳が二重に鳴る。
最初の一撃で外殻を砕き、次の一撃で内部に衝撃を突き刺す。
「うぐぉっっっっ……!!?」
タロスの土装甲が崩れ、地に膝をついた。戦闘不能だ。
「俺の拳は、魔法じゃねえ。魔法殺しの拳だ。」
一方――空中戦、氷の魔導士の舞い
場所は変わり、遺跡上空。
ユイラ=ノクスは、風の信徒との戦闘に入っていた。
対峙するのは――風律の異端師・セリオン。
風属性6/火3/他0。
空中制圧と、広域幻影術に特化した風魔術師。
「冷たい目だな……いいね、貴族さまの冷気が、どこまで空に届くか、試してみようか!」
彼が風を裂いた瞬間、ユイラの体が消えた。
「――!?」
次の瞬間、セリオンの背後。氷の槍が浮かんでいた。
ユイラの戦闘スタイルは氷×風による“制御遅延魔法”
「……あなた、風の速さに頼りすぎ。“速すぎる”と、予測できるのよ。」
ユイラの魔法は速度よりも操作の緻密さ。
彼女は風を“封じる”のではなく、風の流れの“先読み”で魔法を重ね置きする。
「《氷結界・三段律》」
周囲の空間に、三層の氷のフィールドが展開。
セリオンが風で突撃するたびに、身体が凍気に絡め取られ、速度が削がれていく。
「なにぃ……!? 動きが……!」
「“氷”は動きを止めるだけじゃない。
風の通路そのものを“冷やして詰まらせる”ことも、できるのよ。」
そして、ユイラの杖先が小さく閃いた。
「終わりよ――《氷槍穿・断》」
氷の槍が風の通路を貫き、セリオンを地へと叩き落とす。