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【序章:境遇】

 僕は、体裁が嫌いだ。


 どうしてこうも面倒なのか、それを考えずにはいられない。例えば、人間が一日に三度食事を取るだとか、たいてい人に会ったときは挨拶をしなければいけないだとか、夜の三時には静かでないといけないとか。


 そういった小さな体裁の積み重ねが、僕を若干だけど束縛している。


 先の決まりを守るために、テレビは消してある。ついさっき、なんとなく電波が悪くて消したんだ。それは昼から続いている雨のせいかもしれない...けど、雨と電波って関係あるんだろうか。


 いくら住んでいる場所が木に囲まれた場所だからといって、そんなに田舎なわけじゃない。目を覚ませばあるだろう、ほら、そこにキャンパスが。


 僕がわざわざ言うことでもないけれど、なかなかいいところに住んでいる。歩けば数分で大学があるのだから。最悪二十分くらい前に起きれば、朝食まで済ませて家を出れるだろう。


 それだけ恵まれた環境に置かれながら、満たされていない。


 この家を決めたのは、受験が終わってすぐのことだった。推薦で合格したおかげで早めに家を選べたのだけど、それでも他の推薦合格者と比べて走り出しは遅かった...そんな中で見つけたのがここだった。


 でも、全然悪くない。昨日階段の踊り場で大きな蜘蛛を見かけて、怖くて避けたくらいしか悪い思い出はない。小さい蜘蛛ならいい、今も洗濯機の上に巣をはって獲物を待っている。来るはずもないのに。


 親が最後に来たのは一週間くらい前。回しておいた洗濯機から洗濯物をとって、コインランドリーで乾かしてくれていた。それに、冷凍のハンバーグとペットボトルの水をいくつか置いていってくれた。


 それだけ恵まれた状態に置かれながら、まったく満たされていない。


 今本棚に並べられているのは、家から持ってくることができた数少ない作品たち。持ってきて以来全く取り出してないから、今も綺麗に整列している。


 比べて、洗濯物を綺麗に畳むのは難しい。あれは何度も取り出しては、何度も仕舞わなければいけない。


 何事も綺麗にしておくのは難しい。課題の未提出欄だって、散らかったままだし。


 ああ、何も片付かない。


 こんな面倒ごとも全部、このカフェインの匂いにかき消されてしまえばいいのに。

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