Enjoy your special day
今日はサクッと2話出して後を楽にしようかなと思います。これからは一ヶ月ごとを目安に更新していきます。(多分)
あれから1年経つ。
今日は早起きできた!メイドさんに起こされることも無かった!このことは喜ぶべきだそう思う。
いつもより軽い足取りで書斎へ向かうと汗だくで本を我武者羅に漁るものがいる。
「おや、ワンダ卿なにか調べものでも?」
本を漁っているのは不届者ではなく父の秘書であるネヴァ・ワンダ卿だ。独特な名前だとは思う、言いにくいし。彼は非常に仕事ができる努力の天才だ。書類捌きは無類のものであり剣の実力も父に勝らずとも劣らぬ男だ。父が言うには剣才はなかったが努力を積み重ねてここまでに至った恐ろしい男とのこと。
「はい、昨日の夜から私の娘が行方不明になりましてね。」
彼の娘は一度見たことがある。黒髪ショートで天真爛漫な可愛い子だった。
「?それとこれの何の関係が?」
ノータイムで返す。会話ができていないのだからこうなるのも必然というものだ。
「昨日の夜ケンカをしてしまいましてね。それで家を出ていったのです。」
「はぁ…それで?」
「それに重なって森でイレギュラーが発生しました。普段は巣穴を活動とするゴブリンが森を荒らし始めたのですよ。噂では100を超える軍勢だとか。」
「なるほどスタンピードってやつですか。」
「はい、娘を探すにもこれを対処しない限りには…それに私一人では100を超えるゴブリンの群れの対処はできません。クラウン様の兵を動かさねばならないでしょうし」
「そうですか、悪いですが俺は力になれないですよ。」
魔力がないんでね。こんなことは言わなくても伝わることだろう。
「娘さんの無事は祈っています。こんな言葉しか掛けられなくて申し訳ありませんね。」
「いえ、その言葉で少しは楽になります。」
ネヴァの目は赤く腫れ、隈ができている寝れていないのだろう。
さて魔物がいつ押し寄せてくるか分からないのなら俺が対応するしかないだろう。魔王は伊達ではない、皆殺しにしてくれるわ。明日の平穏のためにもな。ついでにあたもネヴァには世話になっているし、恩返しというのも悪くはないだろう。
これから外に出ることはメイドさんにも言わなくてはな。怒られるのは嫌だ。
ここはよく知った森の中、私を追いかけるのはこの森で一度も見たことがない化物。お父様が言うにはこの森には一度も魔物が住み着いたことがないそうだ。
(なら、今、私を追いかけてくるこの化物は何なのよ!)
半日はこの化物とその子分から逃げ隠れしている。なのにこの化物しつこいく私を探している。鼻が利くのか知らないけど物陰にいる私の場所を探し当ててくるのにはうんざりする。今昼なのに木陰で足元が見えない。
化物に魔法を放ち逃げるもそろそろ魔力切れ体力も底をつきかけているからマナを使うこともできない。
こんなことを考えていると何かに足を引っ掛ける。
(しまった!?出っ張り?木の根?こんなことしている場合じゃない。逃げなきゃ…早く…早く早く早く!!)
しかし足が動かない。痛みはないのに動かない。後ろからドスドスと足音が聞こえてくる。
近くに他の木とは違う大きな大きな木がある。そこには人ひとり入れそうな割れ目というか空間があった。体を引きずって入り込む。
目の前に豚の化物がいる。オーク、昔、本で見た。化物はこちらを見ると興奮したような荒い鼻息と鳴き声が混ざったようなブフォーというか音を出してこちらに近づく体長は3メートルほどだろう。
その巨体、醜い見た目にデップリと肥えたお腹、それだけでも嫌なのに股の辺りについた反り立つ醜い肉の棒。これから何をされるのか無知ながらに理解する。膝を抱え込む。絶望とはこのことだろう。
手が近づいてきた。捕まる、そう思った矢先眩い光に化物の手は弾かれた。これも本で見た聖樹…魔物を寄せ付けない謎の木。助かった。良かった。捕まらなくて済む。心の底から安堵した。
その時化物の後ろからドサッと何かが落ちる音がした。
「これで512匹。お前で513匹目。これで最後かな?」
私と同い年ぐらいの男の子。あの子は殺されてしまう。あんなものに勝てるわけがないと先ほどの安堵は消え去った。私一人で埋まったこの空間を入れることはできない彼が殺されるのを黙って見ていることしかできない。
「おかしいな。今までゴブリンしかいなかったのに急にオークが出てくるなんて、君たち敵同士でしょ?なんでオークがゴブリンの群れを従えているのか気になるけど何言ってるか分からないし、殺しておかないと面倒だしいいや」
少年が右手に持っている"へ"のような形をしたものはなんだろう。
(あんなのでどうやってあれを倒すっていうの?)
ドォンというか大きな音とともに化物の肩の肉が飛び散る。あの手のやつから何かが発射された!でもあの"へ"が折れてしまっている。しかし彼は左の中指で"へ"に入っていた"何か"を取り出し親指と人差指で摘んでいた"何か"と同じようなものを"へ"の中へ入れる。その後、手首を上にくいっとして折れた"へ"を元の形へ戻す。
こんな状況で言うのもおかしいけどなんだかかっこいい。不思議な武器を手慣れたように扱うあの感じ。
また武器を構え今度は頭に打ち込む。化物は脳みそをふっ飛ばされ、倒れ、その後起き上がることはなかった。
少年は一仕事を終えて一息ついた。その時だった、化物の死体が燃えその炎が文字を作る。
「Enjoy your special day!(特別な日を楽しんで!)」
人の誕生日を祝う時に使う言葉だ。少年は眉を顰めると笑顔を作りこちらに向く。彼の微笑みをみて安心した。生きているという実感が湧いてきた。
「運が良かったね。こんなところに聖樹があるなんて。」
といいこちらに手を伸ばす。
「あ…ありがとう」
「お礼はいりませんよ。アリス・ワンダ嬢」
なんで名前を知っているのだろうという疑問はあったが、それよりも聞くことがあった。
「貴方様のお名前は?」
彼は忘れていたと言わんばかりに頭を掻き、
「申し訳ありません。僕の名前はリュート。リュート・クラウンと言います。ところで僕とお友達になりませんか?」
なんだか…変な人だと思った。
その後はすごく大変だったお父様に色々なお話を聞かれたしリュート君と一緒に説教もされた。
それでもお父様の生きてて良かったという言葉はずっと胸に残った。
今年はゲームの宝庫だよ。エルデ新作、龍が如く8外伝、サイレントヒルf、リトルナイトメア3がある。
忙しい忙しい