ただいま
割と書いている段階は楽しい、自分で読んでみると途端に不安になってしまう。
目覚めて最初に目にしたのは人ではなく灰色の濃淡でぼやけた世界だ。
目は見えないが声は案外はっきりと聞こえる。脳も正常に機能する。生まれてすぐの赤ちゃんにはこんな世界が広がっているのかと少し楽しくなっている。普通の人生を歩んできてはこのような経験は得られないだろう。そんなことを考えていると
「無事生まれてきましたよ」
と女性の声がする。
「やっと生まれてきてくれた…私の子…」
喜びと疲労を感じ取れるような声も聞こえる。先ほどとは別の女性の声だ。言葉からしてこの人が僕の母なのだろうと分かる。
次に聞こえたのは扉を強く開き、
「生まれたのか!?」
と喜びを分かりやすく表現したような大きな声で言う。彼は父親だろうな。
「もう…あなた、声が大きい。赤ちゃんびっくりしちゃうでしょ?」
「すまない…ところで君、毛布を持ってきてくれ。」
もう一人の女性に言ったのか、はいと言って一人部屋から出ていく。
男は僕に近づき先ほどとは打って変わって落ち着いた声で喋る。
「ソフィア、この子は君と私の子だ。名前はもう決めているのか?」
これに対して母はほわほわしたような声で
「リュートにするわ。特に深い意味はないけれど、言葉の響きが良いなと思って…」
この話を聞いて僕はなんて適当な名付けなんだと思ったが父はそうではないらしく、急に笑い出したかと思えば、
「その君の自由奔放さに私は心を打たれたんだ。そんな君が良いと言うならその名で良いと私は思うよ。」
こんな会話を聞いて思った…僕の両親は自由奔放で能天気なバカップルならぬバカ夫婦らしいなと頭を抱える。この親はこれからもこんな感じなのかと考えると先が思いやられる。
後で知ったことだが父の名はマハト、母の名はソフィアと言うらしい。
このまま続けられるか不安に襲われてしまっている。
こんな事考えずに頑張ろう。エルデの王になってきます