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3.親友は美少女

 少しだけゆっくりするつもりが、しっかりと眠ってしまっていた。突然思い出した事実は自覚していた以上にショックだったみたい。先生の声で目覚めると、もう午前の授業は終わってしまったとのこと。

 

 ここは主に魔法に特化した、全寮制の由緒正しき学園。生徒はみんな魔法や武術の腕を磨きたい子ばかり。

 中等部の時より勉強がむずかしくなってるから、あんまり遅れたくないんだけどなぁ……。なんて思いながら先生にお礼を言って保健室をあとにする。

 

 横開きの扉を開けて廊下に出ると、すぐに「アリス!」と呼ぶ声がした。

 聞こえた方向を見れば、友人のシンシアとセレナがこっちへ走ってくる。

 

「大丈夫? 朝に一度様子を見にきたんだけど、よく眠っていたから……。心配したのよ」

 

 そう言って私を抱きしめる美少女はシンシア、通称シアちゃん。

 長いストレートの銀髪と、少しつり上がったエメラルドみたいな目。そして私より高い身長。キリッとした雰囲気の、とってもきれいな子。

 ツンとしているようで面倒見のよいシアちゃんは、同じ歳だけどお姉さんみたいだったりする。

 

「本当よ、何があったのかと思ったわ。でもよかった、顔色もよくなってる」

 

 シンシアの隣にいるのは、おっとりした口調のセレナ。ゆるふわ黒髪に、アメシストみたいな瞳。いつも冷静で、ややタレ目がちな彼女も私より背が高い。

 

 というより、あまり認めたくないのだけど私が低いこともある。正直、身長はもう少し伸びてほしい。

 ちなみにセレちゃんと呼んだら、真顔で「やめて」と言われたので、彼女のことはセレナと呼んでいる。

 二人ともきれいで可愛くて、それにすごく優しい。大好きな自慢の友達。

 

 でもこの世界の設定を思い出した今は少し複雑な気持ちもある。なぜなら、シアちゃんもセレナもリトマジの正式なヒロインだから。

 

 今朝のお姫様だっこイベントだって本当ならシアちゃんのはずなのに。どうして私になったんだろう。考えてもこればっかりはよくわからない。

 

 それにしてもカイトくん、かっこよかったな……。もしかすると女神様からのボーナスイベントなのかな。とりあえず感謝しておいたほうがいいのかも。

 こっそりと手を合わせて拝んだつもりが、しっかりとシアちゃんに見られてしまった。

 

「どうしたの、アリス。まだ気分が悪い?」

「え、ううん。ちょっとぼーっとしただけ」

 

 朝のできごとを思い出してると、シアちゃんが心配そうに顔をのぞき込んできた。まじめな彼女は少し心配症でもある。

 

「そう? もう今日は帰ったほうがいいんじゃない?」

 

 後ろからセレナもたずねてきた。

 私のおでこに手を当て、「熱はないようね」と確認する。

 

「大丈夫だよ! たくさん寝たから平気だし、授業遅れたくないもん。それにお腹も空いてきちゃった」

 

 明るく笑ってみせると二人ともホッと笑顔になった。優しくきれいな友人たちは少し過保護だったりする。

 

「そうね、私もお腹空いてきちゃった。今日の日替わりメニューはなにかしら」

 

 セレナは細いのによく食べる。メニューを想像する顔はとても楽しそうで、私もにっこりしてしまう。だって、この学園の食堂はすごくおいしいから。

 

 いつものにしようかな、それとも日替わりにしようかな。そんなことを考えていたら、シアちゃんがくすくす笑いだした。

 

「想像するより、行って決めましょう。心配しなくても午前の授業内容はちゃんと教えてあげるわ」

「ありがとう。シアちゃん、教えるの上手だもんね。美人で頭も良くて、自慢の友達だよ」

「そうそう、じつは私も教えてほしいところがあるの」

 

 私は右、セレナは左。二人してシアちゃんの左右の腕に抱きついて甘える。するとシアちゃんは「もう!」と呆れた声を出した。

 

「褒めてもなにも出ないわよ」

 

 ツンとした口調だけど、ほっぺは赤い。それを同時に確認したセレナと顔を見合わせて小さく笑う。クールに見えるシアちゃんは意外と照れ屋さんだ。

 

「シアちゃん照れてるー! 可愛い!」

「照れてないわよ。そんなこと言ってると教えてあげないんだから」


 シアちゃんがこうやって照れ隠しをするのはいつものことだった。こういうところも可愛くて大好き。

 自慢の友達というのはウソじゃない。もちろんそれはセレナも同じだ。

 

 二人のどちらかがカイトくんを好きになるのかな。もしかすると二人とも好きになっちゃうのかもしれないけど。そうなったとしてもずっと三人で仲良くいたいな。

 

 できることならシアちゃんにもセレナにも幸せになってほしい。そして、どちらにしても私の出番は来ない。

 せっかく可愛く転生させてもらったけど、この世界での私はモブだから。

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