表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたを愛する心は珠の中  作者: れもんぴーる
1/32

プロローグ

 たった一カ月。

 領地に戻っていた間に、婚約者のセドリックが彼女の手に落ちるとは思わなかった。 



 私、アリエル・ワトーはコベール国のワトー侯爵家の一人娘。

 父であるジョルジュ・ワトー侯爵は国王の懐刀とも呼ばれ、外交においてもその手腕を発揮していた。

 周辺国と次々と条約を結んで友好関係を築き、この国の平和、貿易など国政の安定に大きく寄与する人物だった。

 そして母は天候を読むのが得意で、領民への的確なアドバイス、采配で領地にめぐみをもたらしていた。夫婦は手を携えて領地の繁栄に尽力し、領民からの信頼も絶大だった。


 そんな両親に私はとても大切に育てられた。

 ただ甘やかされるばかりではなく、貴族としての知識やマナーに加え、教養、政治、領地経営なども厳しく教わった。 

 父は、他家の令嬢が婚約者探しや、ドレス宝石、パーティやお茶会ばかりに現を抜かすのを批判はしなかったが、一人の人間として自信を持って自立できる力をつけるようにとたくさんの事を教えてくれた。

 おかげで、優秀で優しい令嬢だと評判となり、早いうちから縁談の話がたくさん舞い込むようになった。その中で、小さいころから取引でワトー家と顔見知りであったルブラン侯爵家の次男セドリックと婚約がきまり、公私ともに順調で幸せな日々を送っていた。


 しかしそんな皆が憧れるような一家が壊れるのは一瞬だった。

 父が急死し、直後に母は行方不明。

 大混乱の中、侯爵家は父の弟が継いだ。

 本来なら父の死後、アリエルが婿を取るか、アリエルが貴族学院を卒業し、成人して家督を継ぐまで、叔父のダニエルがアリエルの後見人となるはずだった。

 しかし母の行方不明で混乱している間にダニエルが、「兄から万が一の時は頼むと言われて書類を預かっていた」と、すべての手続きを済ませてしまっていた。

 ダニエルが侯爵となり、後継者はその息子となって、アリエルの立場は生まれ育った我が家だというのに居候になってしまった。


 ダニエルの家族は両親を失ったアリエルを大事にはしてくれたが、両親のみならず、両親から受け継ぐはずだった大切な侯爵家まで失ったアリエルの苦しみや悲しみは大きく、虚無感に襲われた。

 しかし、婿に入る予定が無くなっても変わらず、アリエルを気遣い、支えてくれていたセドリックのおかげで少しずつ再び顔を上げられるようになったのに。 


 それなのに・・・


 なのに、一カ月ぶりに見かけた婚約者の腕には別の令嬢がいた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ