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その40「15層と大魔獣」



 ディーヴァは到達階層を、10層に更新した。



 そして11層への階段の前で、脚を止めた。



(今日はこのへんにしておくか。


 目当てのビッグレディビートルは


 11層以降に出現する魔獣だ。


 明日からが本番だな)



 ディーヴァは探索を終え、地上へと歩いた。



 大階段を上り広場に出ると、魔石を売るためにギルドへと向かった。



 ギルドに入ったディーヴァは、迷わずにコマネの所へ向かった。



「換金お願いします」



 ディーヴァはリュックに入れてあった魔石を、カウンターへと置いた。



 コマネは魔石を鑑定していった。



 魔石を調べれば、どの階層で狩りをしているのかもわかる。



 それで彼は、ディーヴァにこう言った。



「順調に階層を更新しているようですね」



「まあ、はい」



「もし15層に行かれるようでしたら、


 気をつけてくださいね。


 前に大魔獣が倒されてから


 そろそろ一ヶ月になります。


 次の大魔獣がリポップする頃ですから」



(一ヶ月か。


 アディスの大魔獣は


 ホームダンジョンよりも


 湧きの間隔が長いんだったな)



「そういえば、


 アディスの大魔獣は


 見たことないですね。俺」



「もし出会っても、


 逃げることをおすすめしますよ。


 アディスで大魔獣と戦うリスクは、


 ホームダンジョンとは


 比較になりませんから。


 それに、ディーヴァさんは


 お一人ですからね。


 大魔獣というのは、


 一人で戦うような相手ではないですよ」



「そうですね。


 ……アディスの大魔獣って、


 最初に見つけた人に


 倒す権利が有るんですよね?」



「……ディーヴァさん?」



「聞いてみただけですよ」



 換金を済ませたディーヴァは、クランハウスに戻った。



 そこでクオンたちと、三人で夕食をとった。



 その後は、ホームダンジョンで魔獣を狩った。



 そしてティエリと同じ時間に就寝した。



 翌日。



 アディスに向かう途中で、ディーヴァは図書館に寄った。



 そこでアディスに関する本を読んだ。



 それから買い物をして、アディスに潜っていった。



 ディーヴァは最短ルートで、アディスの11層まで移動した。



 そして地図を頼りに歩き回った。



 やがて体長1メートルを超えるてんとう虫と対峙した。



(こいつがビッグレディビートルか。


 まずは動きを見ていくかな……)



 ディーヴァは自分からしかけずに、相手の動きを観察することにした。



 敵の攻撃を待ち、それに対処していった。



 ディーヴァは全ての攻撃を、軽々とかわしていった。



(こんなもんか)



 特に目を見張るような攻撃も無い。



 そう判断したディーヴァは、魔獣を始末することにした。



 ディーヴァは雑に剣を振った。



 剣は軽々と、てんとう虫を切り裂いた。



 両断された魔獣は絶命し、魔石が地面に落ちた。



(今の俺なら楽勝だな。


 って、こういう油断は良くないのかな。


 けど、まったくキツいとは感じなかった。


 一週間くらい狩ってれば


 目標分の魔石は集まりそうだな)



 ディーヴァは目当ての魔獣を狩りながら、探索も続けていった。



 二日後。



 特に危機に遭遇することもなく、ディーヴァは15層にまで到達していた。



(来ちまった……な)



 ディーヴァは地図を頼りに、15層を歩いていった。



 途中でディーヴァは、多くのガーデナーたちを目にすることになった。



 14層までと比べて、明らかに人数が多い。



 ディーヴァにはそう思えた。



(人が多いな……。


 みんな大魔獣を探してるのか……。


 俺も……ひとめ見るだけなら……)



 ディーヴァがそう考えていると……。



「ディーヴァさん?」



 女の声が聞こえた。



「おまえは……」



 ディーヴァは声の方を見た。



 そこにシノーペの姿が有った。



「ユピトの所の……」



(名前なんだっけ? こいつ)



 ディーヴァはシノーペの名前を思い出せなかった。



 まあ良いかと思い、ディーヴァは視線をずらした。



 彼女の後ろには、パーティメンバーらしき連中も見えた。



 男3人、女が3人の、6人パーティのようだ。



 全員が年若く、20歳に届いていないようだった。



「どうしてあなたが


 こんな所に居るんですか?」



 シノーペがディーヴァに尋ねた。



 それに対し、ディーヴァは無愛想に答えた。



「ガーデナーが


 アディスに居たら悪いのかよ」



「今、この15層には


 大魔獣がリポップしているはずですからね。


 ディーヴァさんみたいな


 よわっちい人が混ざってたら、


 正直ジャマだと思うんですよぉ」



「だいじょうぶだろ。


 おまえみたいなザコが居ても


 許されるみたいだからな」



「…………。


 あはははははっ!」



 シノーペは大声で笑い、そして真顔になった。



「笑えないです。その冗談」



 彼女はイクサバナを構えた。



 そしてディーヴァに突きかかろうとした。



「やめろ。シノーペ」



 彼女の仲間の一人が、シノーペを抑えた。



「先輩……」



 シノーペを抑えたのは、カシオペイアだった。



「けど、あいつが……!」



 シノーペはカシオペイアに不満を見せた。



 対するカシオペイアは、冷静に後輩を諌めた。



「ユピトダンジョンクランは


 ディーヴァ=ダッタに手を出してはならない。


 六石会議で決まったことだ」



「……そうでしたね。


 命拾いしましたね。ティーヴァさん」



「はぁ。もう行って良いか?


 おまえらと違って


 俺は忙しいんだよ」



「こいつ……!」



 シノーペがディーヴァを睨んだ。



 彼女の仲間たちも、穏やかではない視線を、ディーヴァへと向けていた。



 その中で、カシオペイア一人だけが、落ち着きを保っていた。



 彼女はディーヴァにこう言った。



「好きにしろ」



「どうも。それじゃあな」



 ディーヴァはユピトクランの面々に背を向け、去っていった。



 そして探索と狩りを再開した。



 この辺りには、甲虫型の魔獣が多い。



 ディーヴァは巨大なクワガタムシ、ビッグスタグビートルを切り捨てた。



 そして魔石を拾い上げた。



 ディーヴァの本来の狙いは、ビッグレディビートルだ。



 だが、他の魔獣に遭遇することの方が多い。



 ビッグレディビートルには、なかなか出会わなかった。



(ビッグレディビートルの出現率は


 11層の方が高いみたいだな。


 大魔獣と戦わないなら


 上で狩った方が効率は良い。


 良いんだが……。


 もうちょっと、もうちょっとだけ……)



 漠然とした未練が、ディーヴァを縛り付けていた。



 ディーヴァは15層の探索を続けた。



 そして……。



「お……」



 彼は誰も居ない広間に、ひときわ大きなてんとう虫を見つけてしまった。



 その体長は、ビッグレディビートルの数倍有る。



 とても普通の魔獣には見えなかった。



(ビッグレディビートルの上位種?


 つまり……こいつが大魔獣か)



「見つけちまったじゃねえかよ……」



 ディーヴァは苦笑した。



 そして考えた。



(今の俺はレベル28。


 ここは15層。


 ソラテラスさまから貰った剣も有る。


 レベルだけを見たら、


 勝ち目は有るはずだ。


 けど、


 レベルだけで判断しちゃダメなのが大魔獣だ。


 1ミスが致命傷になる。


 目の前に居るのは、そういう相手だ。


 ……逃げよう。


 こんな所で


 命を危険にさらす必要は無い。


 それが正解のはずだ)



 家でクオンが待っている。



 生きて帰って、彼女に無事な姿を見せよう。



 ディーヴァはそう思おうとした。



 だが。



「ディーヴァさん」



 またしても、シノーペが姿を見せた。



「……よう」



 ディーヴァは悪ぶった笑みを浮かべた。



「おまえらが探してた獲物、


 俺が先に見つけちまったよ」



 ディーヴァがそう言うと、シノーペの視線が大魔獣へと向かった。



 ディーヴァはシノーペに背を向け、大魔獣につまさきを向けた。



 シノーペがディーヴァに尋ねた。



「何の冗談ですか?


 まさか一人で


 大魔獣と戦うなんて言うんじゃないですよね?」



「悪いか?」



「自殺行為は


 止めた方が良いと思いますけど」



「自殺がどうか、まあ見てろよ」



 ディーヴァは大魔獣に近付いていった。



 ディーヴァの背中に、カシオペイアが声をかけた。



「観戦していても良いのか?


 EXPを吸ってしまうことになるが」



「ケチ臭いことは言わねえよ」



「そうか。


 ならば見させてもらうとしよう」




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