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その20「レベル10と新たな魔獣」




「それでは、


 テレポートラビットの魔石が一つと


 兎の毛皮が六つ、


 魔石が2万シーズ、


 毛皮が一つ500シーズで、


 合わせて23000シーズでの買い取りになりますが、


 よろしいですか?」



(2万……。


 やっと、やっとまともな暮らしを出来るくらい、


 自力で稼げるようになったんだ)



 ディーヴァは感慨深げに目を閉じた。



 ホームダンジョンの魔獣は、大魔獣を除けば、1日に1体は狩ることができる。



 1日に2万シーズの収入が、約束されたということになる。



 これだけの収入が有れば、底辺のガーデナーとは呼べないだろう。



 一人前だと言って良い。



 ……稼ぎ方が、少々過激ではあるが。



 ディーヴァは次に、このように考えた。



(そうだ。


 またファングラビットの魔石を


 お願いしようかな?


 けど……


 ダンジョンで手に入るイシを使った方が


 コスパは良いんだよな。


 ……やめておこうか)



「ディーヴァさん?」



 何も言わないディーヴァにコマネが声をかけた。



「いえ、その、


 それでお願いします」



 ディーヴァは魔石とドロップアイテムの換金を終えた。



「ありがとうございます。


 それでは、今日はこれで」



 コマネに頭を下げて、ディーヴァは応接室を出た。



 そしてギルドを出て、クオンダンジョンヘと帰還した。



「ただいま帰りました」



 ダンジョンの1層で、ディーヴァはクオンに声をかけた。



「うん。どうだった?」



「なんと、テレポートラビットの魔石は、


 2万シーズで売れましたよ」



「そう。贅沢だねえ」



「いえ。まだまだこれからですよ。


 それじゃあ、


 ダンジョンレベルを次に進めましょうか」



「そうだね」



 前回と違い、コアルームへの転移陣は撤去してある。



 それでディーヴァは、一人でコアルームに向かうことになった。



 クオンを1層に残し、コアルームに走った。



 コアの前に立つと、ディーヴァはクオンに呼びかけた。



「行きますよー」



(うん。どうぞ)



 ディーヴァはコアに手を伸ばし、スキルを発動させた。



「『閻魔灌頂』」



 彼はスキルの選択肢から、ダンジョンレベルの上昇を選択した。



 するとコアが点滅を始めた。



(供物を捧げて……と)



 今回の供物は、5層の大魔獣の魔石だ。



 ディーヴァはイシをコアに捧げた。



 ダンジョンコアが輝いた。



 そのとき。



(ん……んぅぅぅ……)



 イクサバナを通して、クオンの呻き声が聞こえてきた。



「クオンさま!? だいじょうぶですか!?」



 ディーヴァは心配し、クオンに呼びかけた。



(特に問題は無いよ)



 クオンは平静な声音で、そう返してきた。



「それなら良かったですけど……」



 そんなやり取りをしていると、前と同様に、ダンジョンが震えた。



 コアが強く輝き、眼前から消えた。



 1度見た現象なので、ディーヴァは慌てなかった。



 彼は冷静に、室内を見回した。



 すると壁の近くに、下りの階段が見えた。



「無事にレベルアップできたみたいですね」



(そうだね)



「すぐそこに階段が有るので、


 さっそく探索してみようと思います」



(うん。


 10層までの最短ルートを


 指示すれば良いかな?


 それとも稼ぎ重視で行く?)



「んー。


 テレポートラビットの追加に


 魔石は必要ですけど……。


 大魔獣の顔を


 拝んでみたい気持ちも有るので


 まずは10層を目指してみますね」



(分かったよ)



 ディーヴァは階段を下りた。



 ディーヴァの両足が、6層の地面を踏んだ。



(ダンジョンの見た目は


 大差ないみたいだな……)



 ディーヴァの瞳に映る光景は、5層までの風景と、あまり差は無いように見えた。



 ディーヴァは歩き始めた。



 草の生えた通路を、前へと進んでいった。



 探索を進めるディーヴァに、クオンの指示が飛んだ。



(その先を右に曲がると、


 魔獣の反応が有るね。


 迂回路は無いから


 戦闘は避けられないよ)



「了解です」



(敵はアイスラビットだ。


 飛び道具に気をつけてね)



「え……? わかりました」



 ディーヴァはカドを曲がった。



 そこに一匹の兎が見えた。



(また兎……。


 けど、青いな)



 アイスラビットと呼ばれる魔獣は、青い毛皮の兎だった。



 野の兎と比べると、体は大きく、眼光は鋭い。



 だが、2層のファングラビットなどと比べても、それほど迫力は変わらないように見えた。



 弱そうだ。



 ディーヴァの心が弛んだ。



 そのとき。



 兎の足元に、魔法陣が出現した。



「っ!」



 兎から、氷の矢が放たれた。



(魔術を使うのかよ……!)



 ディーヴァは地面を蹴り、氷を回避した。



 そして素早く踏み込み、兎を切り裂いた。



 一撃で、兎は撃破された。 



「はぁ。


 呪文のスピードが


 そんなに速くなかったんで


 助かりましたね」



(そう感じたのなら、


 それはキミのレベルが


 上がっているからかもしれないね。


 ここは6層で、


 キミはレベル13だ。


 1対1の戦いなら


 そう遅れを取ることも無いんじゃないかな?)



「よーし。サクサク行きましょう」



 今の自分の実力は、6層で十分に通用する。



 そう思ったディーヴァの脚が、力強さを増した。



(あっ、そっちは……)



 クオンが何かを伝えようとした。



 だが、それより前に、ディーヴァは次のルームへと入室していた。



 すると……。



 ルーム内に、7体のアイスラビットの姿が見えた。



 7対の瞳が、ディーヴァに向けられた。



「あっ」



 7体が、同時に氷をはなってきた。



 1体を相手にするのとは、ワケが違う。



 ディーヴァは氷を避けきれず、負傷した。



「ぐあっ!」



 負傷者に手心を加えるほど、魔獣は甘くない。



 動きが鈍った所に、容赦の無い追撃が来た。



 氷は次々に、ディーヴァの体に突き刺さった。



 全身を穴だらけにされ、ディーヴァは死亡した。



「……ディーヴァ」



 ベイルアウトしたディーヴァに、クオンが声をかけた。



 その声には、呆れの色が含まれているようだった。



「はい」



「もう少し、落ち着いて行動しようか」



「はい」



 ディーヴァは反論ができなかった。



「ちなみにさっきの道は、


 直進せず、


 左の小道に入るのが正解だよ」



「……わかりました」



 慢心が消えたディーヴァは、慎重に探索を進めた。



 油断さえしなければ、ディーヴァの能力に不足は無い。



 クオンの指示のおかげもあり、サクサクと到達階層を更新していった。



 そして……。



(そのまま先に進むと、


 大魔獣が居る部屋に入るね)



 10層の通路を歩くディーヴァに、クオンがそう告げた。



「今の俺でも勝てそうな相手ですか?」



(ちょっと厳しいかもしれないね)



「そうですか。


 それじゃあ胸を借りる感じで……」



 ディーヴァはどうやら、とりあえず死ぬつもりのようだ。



(キミがやる気なら止めないけどさ)



 通路を抜けたディーヴァは、広いルームへと入った。



 そこで赤い大きな兎が、ディーヴァを待ち構えていた。



 大魔獣の背丈は、ディーヴァの身長を超えていた。



(似てるな……。


 5層の大魔獣、


 レッドファングラビットに。


 けど、あいつより毛皮が鮮やかだ。


 ギラギラしてる)



(バーニングファングラビット。


 レッドファングの上位種だね)



 クオンがそう言った。



 兎が侵入者を睨んだ。



 広間の出入り口に、マリスウォールが展開された。



 もう逃げることはできない。



「…………!」



 ディーヴァは身構えて、兎の出方を待った。



 兎は口を開いた。



「っ……!」



 兎の口から、火球が吐き出された。



 大魔獣の攻撃は、威力と迫力を兼ね備えていた。



 だが、今の距離であれば、回避できないほどでは無い。



 火球を避けたディーヴァは、兎の次の手を待った。



 すると兎は、さらに火球を吐き出してきた。



 どうやら兎の方には、自分からディーヴァに近付く気は無いようだった。



(こっちから近付かないと


 埒が明かないって感じだな……!)



 ディーヴァは地面を蹴り、兎との距離を詰めた。



 すると兎は、見慣れた姿勢を取った。



(突進か!


 この距離で……!)



 兎が前に出た。



 ディーヴァに巨体が迫った。



「舐め……てんじゃねえっ!」



 ディーヴァは横に跳び、突進を回避した。



(こっちのスピードだって


 前より上がってんだよ……!)



 突進の隙に、ディーヴァは剣を振った。



 剣が兎を裂いた。



 ディーヴァは反撃が来る前に、兎から距離を取った。



 兎はディーヴァに向き直った。



(行ける……!


 こっちは無傷のまま、


 一撃を与えられた。


 行けるぞ……!)




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